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逃げ切りますわ!物語の強制力

作者: 猫の靴下

女神セレサのおふざけで転生してしまったリリア。

このまま物語の強制力に引きずられてたまるもんですか。


知らない天井だ・・・・。

と、天蓋付きのベッドと天井を見る。


ん?あれ?


なんか見たことある。

あるに決まってる。

私の部屋だわ。



私はリリア・アルトロという侯爵令嬢だ。

シックな髪色に紫の瞳が美しい。

転生していたことを、熱を出したことで思い出したのだ。


前世はいい歳こいた喪女のおばちゃんだ。

そしてどうやら前世遊んだゲームに似ている世界らしい。

めんどうなことに一応主人公を邪魔する立場の令嬢だ。

題名すら覚えてないが、プレイヤーは王子か王女になってプレイする。


この国は女神セレサを信仰しており、国が荒れると聖女が異世界から降臨する。

自分の側近や聖女を味方に付けつつ王を目指す話だった気がする。

王子と王女どちらが王位につくのかって争うんだよね。



とりあえず私7歳。

母は病気がちな妹と一緒に療養所へ入っている。

会ったことあったかな?

覚えてない。

父も忙しいのかめったに会えない。


「リリアよ。王子様と結婚はどうだい?」

「嫌です」

「え?王子様と会ったこともないよね?」

「嫌です」


父親からしつこく聞かれたが、「お父様と結婚する」で通した。

7歳なら許されるだろう。



その後王子側からお茶会に招待される。

側近候補や婚約者を見つけるためだ。

どうやら我がアルトロ家は王子側に付くようだ。


王妃様と一緒にいるのが王子だ。

髪は王家らしくキラッキラの金髪だが、

背はちっこいし、少しぽっちゃりぎみだ。

きっといいもの食べてるんだろうな。


うちは侯爵家だけど粗食だと思う。

毎回お肉が一口くらいしか出てこない。

それでも贅沢なんだろけど。


「王国の光である王妃様と王子様にご挨拶申し上げます」

「あら、リリア侯爵令嬢ね。お母様は元気かしら?」


ここで普通は「いつも王妃様のことを綺麗だとお話しされています」などとおべっかを言うのが当たり前だが、

「はい、元気です。後ろがつかえてますので失礼します」


王子に一言も話させず、さっと立ち去る。


さらに用意されたテーブル席(侯爵家は一番前)には座らず、

自由席となっている伯爵以下の令嬢が集まってるとこにいってお菓子を食べまくる。

伯爵家のルルーシュ様もお菓子が大好きなのでその話で盛り上がった。



だが、こうして逃げまわったにもかかわらず、婚約者候補になっていた。

これは・・・物語の強制力ってやつだろうか?




この国の聖女の位は高い。

私がこのまま婚約者になると聖女が現れた時に捨てられる。

聖女は女神セレサ様によって選ばれてくるので、女神信仰してるのはまずいのではないか。


とうとつに閃いたのは女神タシュだ。

セレサ様とタシュ様は姉妹であるが、タシュ様への信仰はセレサ様のおまけくらいの存在だ。


タシュ様を主神としてる神殿を探したが、なかなか見つからない。

それでも古い本には姿絵として残っているのでそれを部屋に飾って毎日祈ることにする。




やがて洗礼を受ける年齢になると神殿へいかねばいけない。

どうしよう。セレサ様の神殿で洗礼は受けたくない。

私は父の執務室に押しかけて直談判する。


「お父様。女神様はお二人姉妹だと聞いております。

 出来たらお二人が揃ってる場所で洗礼を受けたいと思います」


「リリアよ。セレサ様に願えばタシュ様もきっと一緒だ」

「いいえ!そうは思いません。姉だけいる神殿なんて嫌です」

「うーむ。なら一応調べてはみるか」


こうして王都から少し離れてはいるけど女神像が二人並んでいる神殿が見つかった。


タシュ様だけの神殿はなかったからギリギリここでいいか。

女神姉妹が並んでいるのはここの神殿だけらしく、珍しさで観光客が良く訪れるそうだ。


(どうかゲームのような展開になりませんように)


人間離れした美しい石像側ではなく、少しタレ目の優しそうな石像側に祈る。


洗礼でタシュ様から<タシュ神の祝福>をいただいた。

ほんのり光っただけで詳細はわからないが、悪いものではないだろう。

鑑定眼をもってないので何とも言えない。


父に話したら「セレサ様の祝福じゃなかったのか」とがっかりしてる。

タシュ様の祝福はかなり地味なものらしい。

これで一歩婚約破棄から離れたはず。




15歳になると貴族は全員学園に入学する。

そこで王子、王女の派閥争いが本格化する。

危険なので他の学園を目指したい。


メイン舞台は『王立魔法学園』。

私が目指すのは『王都学園』。


受験申請をお願いしたら、内容を見ずサインしてくれた。

ラッキー。

どうやって説得しようか悩んでいたのだ。


受験当日。

馬車で走り出したのはいいが、向かっているのは『王立魔法学園』。

あわてて、御者に場所が違うと教える。

ふぅ。地図を確認しておいてよかったよ。


「お嬢様、こちらの学園は違うのでは?」

「いえ、受験日が違うのだから両方受けておくのよ」

「ははあ~滑り止めってやつですね」

「恥ずかしいから誰にも言わないでよ?」

「もちろんですとも」



無事合格したので、寮に入る書類や教科書など手続きで忙しい。

なるべくばれないように手続きは全部自分でやってみる。

入学金どうするかな?


父の書斎に「寄付金募集『王立魔法学園』」の書類があり、どっきりした。

あの学園は入らないのに寄付金募集するのか。

丁度いいから必要な金額を書いてサインをもらう。

むろん寄付ではなく私の『王都学園』費用だ。


前世の図々しさに助けられた。

15歳の小娘にはできない芸当よね。




『王都学園』で入学式も終わって、勉学に励む日々。

寮から外に出た途端、足元に魔法陣が現れて私は飛ばされた。


ここどこ?(2回目)

どう見ても山っぽい。

そして見知らぬ学校の学生が大勢歩いている。

あの制服は『王立魔法学園』の学生。

もしかして今日はオリエンテーリングの日なのか。

そういえばここでリリアがらみの事件あったような?


やばいやばい、思い出せ私。


「あれ?リリアさんまだこんなとこにいらっしゃる?」

「はぇ?」


いやこいつ確か王子の側近1だな。

「はやく行ってください。チームで行動しないと減点ですよ」


もしかして、私が『王立魔法学園』に通ってる前提なんだろうか?

服をいそいで見回すがちゃんと『王都学園』の制服だ。


「あ、あの。私は『王都学園』の学生です。

 変な魔法陣を踏んでしまってここに飛ばされました」

「え?何言ってるんです?

 あなたは、同じ学園で・・・あれ?制服が違う?」

「帰りたいので道を教えていただけますか?」


「ええ?似ている。親戚なのか?」


周りにいた学生たちも驚いていた。

本物のリリア様ならこんな丁寧に話さないよな。

もっと偉そうだもんな。


などとヒソヒソされる。

ゲームのリリアって偉そうなんだ。


というかここにもリリアが通ってることになってたんだ。

さすが強制力。



一人の引率っぽい先生に道案内されてやっと辻馬車のある通りに出た。

何度もお礼を言って帰る。

この強制力すごい迷惑ね?

偽物がいるのなら私を飛ばすことないじゃない!




伯爵令嬢ルルーシュ様に手紙を書く。

彼女は『王立魔法学園』に通っているので学園行事を聞いておきたい。


「あと、変な話なんだけどそちらにもリリアが存在してるのかしら?」


頭のおかしい子だと思われないだろうか?


待ちに待った返信には学園行事の予定表とリリアについて書かれていた。


「私も変だなと思ってるのだけど、目の前にいるときはなんの違和感も感じないのよね。

 あの人は誰なのかしら?」


誰って…誰なんだろう?

よくわからないが私の偽物がいることは確実らしい。


それから私は『王立魔法学園』の傍にある小屋を借り、服とお金を用意しておく。

また飛ばされたときに逃げる用だ。




その後何度も突然現れる魔法陣に飛ばされた。

通ってない学園に行って何になるのだろう?


「貴様!また聖女をいじめたなっ。

 噴水に突き飛ばすとは何事なんだ」


どうやら偽リリアは聖女を噴水に突き飛ばしたらしい。

びしょ濡れの聖女は寒いのか震えている。


「風邪をひきますからまずは着替えたほうがいいわ」

とっさに言ってしまう。

「うぐっ。そ、それもそうだな。

 あとでみっちり話を聞くぞ」


そういって聖女を抱きしめながら去っていく王子。


私は急いで校門を出て、小屋に飛び込んで小銭を持って辻馬車に乗る。

ああーまた授業に遅れてしまう。


その後文化祭など行事ごとに飛ばされるので、「良く遅刻する女」として有名になってしまう。

私のせいじゃないのに。


『王都学園』の先生にも相談したら、魔法陣が出た日時と場所を記録しておくようにと言われる。

先生も首をかしげていた。

こういったイタズラは普通魔力の痕跡が残るはずだが、何ものこってないそうだ。

目撃者もさがすがそのときの記憶が皆あいまいになってる。


『王都学園』ではなく他国に行くべきだったのかもとそのとき始めて気が付いた。

でも他国でも魔法陣を使われたら戻るのが大変だ。

これはちょっと試しておくべきか?


短期留学を執事に相談し、これまたこっそり父の書斎に書類を紛れ込ませる。

『王立魔法学園』の文化祭に焦点をあわせて留学してみる。

『王都学園』の先生も協力してくれた。




隣国アルカディア王国。

この国も王制だけれど空気が軽く感じる。

知り合いが誰もいないって不安だけど素敵。


語学はほぼ一緒で訛りのように少し違った表現もある。


異世界の庶民感覚を生かしてパン屋のバイトをする。

侯爵令嬢がバイトだなんて普通はしないよね。

お金が足りなくなったのも事実なのでがんばる。


また魔法陣で飛ばされたら戻ってくるのにお金と時間が必要だもの。



なんといってもこの国は神殿ごとにちゃんとタシュ様の像があるのだ。

農業国なのでタシュ様はその辺の加護があるのだろう。


いよいよ『王立魔法学園』文化祭当日は旅装をしてカバンを持って待機する。

さあ!こい!


・・・・。


なんと!転送陣が現れなかったのだ!


私は長期留学に速攻切り替えた。

こちらで卒業する予定だ。

王子主人公なら学園卒業で断罪され、王子と聖女がくっつく。

王女主人公のときも政敵扱いで断罪される。


どちらにしても断罪されるので、学園卒業後もこの国で生活基盤を作らなくてはならない。

異世界知識よ、がんばれ!

もう偽リリアにかまっていられない。




『王立魔法学園』の卒業パーティはいろいろ不可思議だったようだ。

王子が断罪する予定のリリアに出てくるようにと言っても存在しない。


「あいつ逃げたのか?すぐにここへ連れてくるように」


従者が探し回るも痕跡もない。

寮に問い合わせても住んでいないのだからやはり痕跡もない。

いたはずのクラス名簿にも載ってない。


「なあ、本当にリリア様っていたのか?」

「あれ最初は王子の妄想だって言われてたよな」

「でも聖女様も意地悪されてるって言ってたし」




アルトロ家も困っていた。

『王立魔法学園』に通っていたはずの娘がいないのだ。

執事が不思議そうに言う。


「何をおっしゃられているのでしょうか?

 お嬢様は留学して隣国アルカディア国にて卒業なされましたよ」


「いつ留学を許可した!」

「旦那様がサインされてましたよね?」

「わしは知らんぞ。

 そ、それに留学したのならこちらに卒業証明が届いてもよかろう」

「届いてますが?

 こちらの国の『王都学園』から推薦を受けてますので正式なものです」

「は?『王都学園』?」

「さようでございます。

 お嬢様は『王都学園』に入学して、そのご留学されました」


つまり『王立魔法学園』に通った実績もないのだ。



王城でそのことが明らかにされると王子は妄想癖があるとして幽閉される。

これで王女が次期王だと決まった。

王子側だったアルトロ家も侯爵なのに僻地に飛ばされた。




こちらは神界の女神セレサ。

かなりおかんむりだ。


「ちょっと何よこの子!

 物語がおかしくなっちゃったじゃない!

 リリアの影を使って居るように見せたけど、詰んだわ。

 タシュを隣国に追い出したというのに悪役も隣国に逃げてどうすんのよ!

 この国に戻ってきたら罰を与えないと!」


リリアは母国に戻る気がないので、女神セレサの願いは叶わない。





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