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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生したら神を凌駕する存在になってました。

作者: 青冬夏

 ◇

 

 〈禁断騎士(ペリオット=ルーダー)

 ──五人の騎士で成り立つ騎士団。だが彼らの能力は神をも凌駕し、時には地球を……いや宇宙をも破滅させるほどの能力を持つ。彼らは隠密な存在であったが、ある預言書により〈世界を滅ぼす〉存在として世界中に注目される。そして、ダーダス王国が彼らを拉致・監禁しようとするが、逆に彼らによって滅ぼされてしまうという運命を辿ってしまった悲劇の王国のこともその預言書に記されていた。

 

 ◇

 

 ──僕は普通の高校生だったはず。それなのに、今はなぜか異世界に転生している。

 

 目の前の光景──異形の姿をした、まるで此の世にいる人間の形をしていない魔物のようなものが、街を破壊し続けるところを遠くから目撃している。そして──

 

 「僕は…………預言書に記されている五人のうちの一人だ」

 独り言が魔物が街を破壊し続ける景色に紛れた。

 

 

 「とりあえず、街を救わないと」


 街から少し離れた麓から勢いよく落ち、その勢いを利用して一体の魔物を倒す。自分の掌からフワフワと浮かび上がっている黄色の魔力──それが僕の力。

 

 「今はこの力がある限り……救わない手立てはないッ!」

 

 僕は次々と魔物を蹴散らしていく。まるで自分が某アニメの主人公になったかのように、魔力を使いこなしていく。

 最後の一体となる魔物と対峙した時、僕は静かに降り立った。

 

 「……なぜ街を襲った?」

 

 なぜだかこの台詞を言ってしまった。なんでだろうか。

 そう思っていると、目の前にいる魔物が

 

 「あるお方の命令だ」

 「……命令?」

 「ああ。ダーダス王国って知っているか?」

 

 ダーダス王国。道行く途中の村でその名を知ったが、僕はあまり知らない。かぶりを振って、「名だけは知っているが……その王国がどうかしたんだ?」

 

 「その王国の王が云うんだよ──“ペリオット=ルーダー”の一人である……お前を呼び寄せるために、一つ街を襲え”とな──」

 「……どういうことだ」

 

 ──どうやら仕組まれていたらしい。だが、なぜ僕を呼び寄せる?

 と思っていると、

 

 「と言うわけで…………これは王の命令だ。お前を連れて帰る!」

 魔物が僕を掴もうとする。間一髪それを避けて空に浮かぶ。その反応を見て魔物をチッと大きく舌打ちをした。

 「大人しくしろよ」

 「なんで?」

 「は?」

 「なんで僕が捕まらないといけないの?」

 「王の命令だからだよ」

 「王の命令だから? それだけ?」

 「ゴチャゴチャ言ってないで早く捕まれ!!」

 

 と再度僕を掴もうとする。その攻撃を避け、魔物に攻撃の一手を加える。ドシンという地響きと共に、魔物の「グハァ」という音が低く響かせた。


 「トドメ……はいる?」

 モワモワと黄色く光り、自分の拳に纏わり付く魔力をちらつかせる。その魔力を見て魔物は表情を強ばらした。──魔物にも感情ってあるんだ。

 

 「いいいいい……いらな……」

 「えいっ!」

 

 あえて言葉を被せるようにして、僕は魔物を真っ二つに斬り裂く。周囲にその時の波動が響き、若干の建物の損壊はあった。

 その倒し──消え去ろうとしている魔物を見て、僕はこう呟いた。

 

 「……なんで、僕は魔物を倒して街を救おうとしたんだろう」

 

 ※

 

 崩壊しかけた街中。そこにある小さな診療所に僕はいた。

 戦いの最中で怪我をした覚えはない──というのも多分は自分が持つ魔力によって回復したものだと思うが──だが、地元の人たちによって僕は診療所に運び込まれ、念の為に治療を受けていた。

 

 ──心優しい。

 

 そう思って、目の前にいる医師の話を聞いていた。

 「──というわけです。まあ、問題は無さそうですね」

 「ええ……まあ」

 「ところでなんですけど」

 「なんでしょう?」

 「あなたはどこから来たんです?」

 

 医師は僕をじっくりと見てきた。黒髪に何も取り柄もない風貌、そして平均的な身長である僕。どこから来たかと云われても……。

 すると、医師は顔をハッとさせて、

 

 「もしかして…………あなたは預言書に記されている〈ペリオット=ルーダー〉の一人なのでは!?」

 と驚く。僕は「ええ、まあ」と何となく反応を見せる。

 「これは大変なことだ! ──おーい! ちょっとこっちに来てくれーー!!」

 

 ──え?

 

 そう思っているや否や、診察室に多くの人が流れ込み、僕はいつの間にか胴上げされていた。──意味が分からないんですけど。

 というか、この世界に()()してきてからまだ全然分からないんですけど。ペリオット=ルーダーのこととか、ダーダス王国のこととか。名前だけしか知らないんですけど。

 

 「ちょちょちょちょちょ……降ろして下さい!」

 

 と必死に胴上げをしてくる人達に懇願する。その言葉通りに僕は降ろされるが、急な降ろし方だったからか、尻餅をついた。──痛い……。

 

 お尻をさすりながら僕は立ち上がる。周囲を囲まれている中、僕はさっきまでの医師を見上げる。僕より身長は高く、百八十センチぐらいはありそうだった。

 

 「どうした?」

 「あ、あの~……」

 「ん?」

 「僕、この世界に転生してからまだあまり分かってないんですけど、〈ペリオット=ルーダー〉って何ですか?」

 

 ※

 

 〈ペリオット=ルーダー〉。それはある預言書に記された禁断の騎士団のこと。地球を、宇宙をも破滅させる能力を持つ恐ろしいと噂されている人たちのこと。

 その騎士団は五人いると云われ、そのうち一人は僕と云われている。──だが、なぜそのうちの一人は異世界転生したばかりの僕なのだろうか? 他にも適任者はいるはずである。

 

 「……ホントに知らないのか?」

 

 と目の前の医師が呟く。何だか表情がポカンとしていて、まるで金魚が息を吸う瞬間を見ているようであった。

 

 「ホントに知らないって言ったら嘘になるけど……少なくとも、僕が〈ペリオット=ルーダー〉の一人だということは知っているし、ダーダス王国の名前も知ってる」

 「名前だけ……か」

 「うん。あと……」

 「あと?」

 「僕、ホントはこの世界の住人じゃないんだ」

 「──え?」

 

 医師が驚くと、周囲の人々も驚きの声を重ねた。

 ──驚きすぎだよ!?

 

 「そそそそ……それは一体……どういうことだね?」

 「多分異世界転生って言うのかな……。ホントはもう一つの世界──そこが僕がもともとそこで暮らしていた世界なんだけどね、そこで不慮の事故に巻き込まれそうになった時、いきなりこの世界に来たんだ。で、気づいたらこの街を救っていたんだ。──この魔力を使って」

 

 と言い、掌から魔力を出現させようとする。……だが、それは上手くいかず、「なんでだ……?」と思わず力が加わり、屁をこいてしまう。

 

 「まあ……事情は分かったよ。とりあえず今日は一晩この街で過ごしていって。もう日が沈むし」

 

 と医師は窓に視線を向けた。窓から既に夕日が差し込んでいて、空の色はオレンジ色に染まっていた。

 「そうします。ありがとうございます」

 

 と礼を述べ、僕は診察室から出た。

 

 ※

 

 小さな診療所から少し歩き、街の中央に出る。広場のシンボルであった噴水を横切り、城がある方向へ歩く。そして少し歩けば、宿があった。半壊はしているらしいが、一応生活できると案内人の街の人が宋仰っていた。

 

 「ありがとうございます」

 

 と頭を下げる。案内人はそんな僕を見た後立ち去り、どこか行ってしまう。僕は宿の中に入り、小さなエントランスで受付を済ませる。

 街の人々のご厚意によってお金は取らないという。何という幸せ者だろうか。

 

 そう思いながら、僕は宿主に導かれて今夜宿泊するであろう部屋に案内される。僕はその部屋の前に立ち、古びた扉を開ける。軋む音が狭い廊下を響かせた。

 

 「ではごゆっくり」

 

 と宿主はそそくさと去って行く。

 僕はそのまま部屋に入り、すぐ近くを曲がって洗面所で自分の姿を見た。

 

 「黄色い髪色……長髪……切り長な目……シュッとした鼻筋から分かる端麗な顔つき……そして」

 僕は上裸姿になる。

 「割れた腹筋……」

 

 「……ホントに()()()()()してるじゃん」

 

 ※

 

 翌朝。ひび割れた天井から差し込む朝日で、僕はベッドから上半身を起き上がらせる。鉛のように重くなった身体はそう簡単に起き上がることは時間が掛かった。

 

 ──疲労のせいだろう。

 

 そう思いながら、僕はベッドから降りて洗面所に向かう。流れてきている水──井戸水らしい──を掌で掬い、顔につける。それを何度か繰り返し、やがて顔を上げる。鏡にはびしょ濡れの自分の顔があった。

 

 「……本当に異世界転生してるんだ、僕。それに、預言書に記されている五人のうちの一人に転生だなんて……」

 

 ──思いも知らなかった。ただ、一つだけ思えることはある。

 

 「救えた。現実世界で為し得なかったことを、僕は成し遂げたんだ」

 鏡の中の自分が笑う。その自分がまるで誇らしく感じた。

 

 洗面所から出て、再びベッドに腰を下ろす。傍にあった洋服を身に包んで、僕は部屋を出る。階段を降りてエントランスに出ると、そのまま受付のもとに向かった。

 

 「おはようございます」

 と宿主が軽快な声で挨拶を交わしてくる。僕も「おはようございます」と挨拶を交わす。

 「こちらにサインを……」

 と宿主が差し出してきた紙に同時に渡されたペン──羽ペンだったから持ちにくかった──を持って、僕は自分の名前を…………ん? 自分の名前?

 

 「あ……えと…………」

 「どうなされました?」

 

 ──やばい。ここで自分の名前が分からなければ、立場が危うくなる。どうしよう。……どうしよう、あ、あの手があったか。

 

 「ここに預言書ってあります?」

 「──はい?」

 

 ──あ、やばい。これ唐突すぎて終わったわ。

 

 と思っていると、宿主が「預言書か……あるかな……」と受付の後ろへ姿を消した。

 ……どうやら、上手くバレなかったみたい。

 

 暫く時間が経過すると、宿主が元の場所に戻ってくる。──分厚い本(恐らく預言書)を抱えて。しかも数冊。

 「こちらが預言書です」

 ──いやありすぎじゃない?

 

 カウンターテーブルに置かれた数冊の分厚い本を見ながら、僕は思わず顔を引きつる。だが、自分の名前を知らなければなくなった以上、捲るしかない。そう思って、僕は本を手に取ろうとする。

 その時だった。

 

 「…………レオンブルド」

 

 ──はい?

 

 急に話しかけられ、しかも自分の名前を呼ばれたような感覚になったので、思わず僕は宿主の方へ顔を向ける。そこには髭面の男性が立っていた。

 

 「レオンブルド。それが君の名前だよ」

 

 ◇

 

 ──〈ペリオット=ルーダー〉のうちの一人が姿を現しました。その人物は──

 

 何者かによる報告の声が洞窟の中を響かせる。暗く、そして狭い洞窟の中、玉座に深々と座る男性。まるで某アニメの黒幕みたいな服装を身に包んで、静かに部下の報告を聞く。後、部下の報告が終わると、

 

 「なるほどな。一人が現れたってことか……」

 

 ニヤリと表情を浮かべ、舌を出して唇を舐める。玉座から降りると、

 「もういいよ」

 「では」

 部下がその場を立ち去っていく。

 

 「遂に現れたな──。〈ペリオット=ルーダー〉。今度こそこの俺が…………」

 ──救ってやるよ。

 

 ◇

 

 僕は宿から出た後、なぜか城にいた。案内人──と言っても街を統治している主に仕える騎士だったけど──に城の(恐らく最上階)である大広間に通され、今街を統治している王と謁見をしている。

 

 王の前で跪く僕。何だかファンタジーもありつつ、異世界らしさもあるよなぁ……と感じていると、王が「顔を上げろ」と低い声で言う。僕はその指示通りに顔を上げた。そこには髭面の男が玉座に深々と座っていた様子が僕の網膜に映し出された。

 

 「君は一体──何者だ?」

 「……“レオンブルド”……と言う者」

 

 ──本当は「らしいです」って言いたかったけど!? そんなこと王の前で言える訳ないじゃん!?

 

 内心自分に対してツッコミを入れていると、王は「ふむ」と顎をなで始めた。

 「お主は……聞いた話によれば、この街を襲っている魔物──ヴァルドを倒してくれたじゃないか」

 「……そうです」

 

 ──ヴァルド? あの魔物の名前?

 

 と少々不思議に思いながらも、僕は少し間を置いて頷く。王は「それで……君が預言書に記された〈ペリオット=ルーダー〉とも聞いたが……」とも訊いてくる。それに対しても僕は同じように少し間を置いてから頷いた。

 

 「そうか…………」

 

 ──何がしたいんだろうか。

 と思っていると、王は玉座から降りて僕に近づいてきた。やがて僕の横に来る。

 

 「実は私の息子にその預言書に記されたうちの一人なんだが──」

 「──ええ」

 

 ──これ、もしかして冒険するパターンか? 異世界転生して冒険って? え?

 

 「その一人を連れて、冒険してくれないか? ──ダーダス王国を滅ぼすことを目的にして」

 

 ──やっぱりそうだったよ!!

 

 内心驚きの声をあげながら、後ろから軋む音が聞こえて顔だけを振り返る。そこには屈強な男──ではなく、可愛らしい見た目をしている女性がそこに仁王立ちをしていた。だが、露出度の高い服装から一瞥すれば、割れた腹筋や脚の長さなどスタイルの良さが窺えた。

 

 「紹介しよう。──彼女が私の娘であり、〈ペリオット=ルーダー〉の一人。ササンだ」

 と王は自分の娘を紹介する。僕は彼女の男っぽいような顔つきを見上げた後、

 

 「──よろしくな」

 

 とぶっきらぼうに言われる。

 

 「あ、あ……よろしくです」

 と言った後、彼女は僕に掌を指しだしてきた。その小さく色白な掌を僕は優しく掴むと、いきなり強く掴まれる。その後、なぜか僕は背中に強い衝撃が加えられ、床にたたき付けられる。──どうやら、背負い投げを受けたらしい。

 

 「痛た…………」

 

 背中を摩りながら立ち上がると、僕よりも背の高いササンは(なぜか)睨め上げてきた。──怖いんですけど。

 

 「君が預言書に記されたうちの一人……か」

 「え、ええ……まあ……」

 

 ──え? え? なに? 怖いんですけど??

 

 「よろしくなっ!!」

 

 ──予想外の反応ッ!! んもうっ何?! 怖いんですけど!!

 

 ※

 

 かくして、僕はこの街をササンと出て冒険に出ることになったとさ。

 

 異世界転生で神を凌駕する存在となり──しかもそれが宇宙をも滅ぼす存在になっているとはさすがに思えないし、そうしたらなぜか今冒険の旅に出ているし……。何でこうなってるんだろ、僕ったら。

 

 内心独り言でぼやいていると、隣で歩いていたササンが話しかけてくる。

 「あのさ」

 「ん?」

 「君の持つ──魔力ってなに?」

 「魔力?」

 「うん」

 

 正直のところ……魔力とは何も分かっていない。転生する前はよくファンタジー小説やら漫画やらを読んでいたからイメージはつきやすいけど、実際に持つと──いや持つと言ってもなかなかそう言う機会はないかもしれない──、一体どうしたら使えるのか分からない。

 

 「ごめんだけど──分からないんだ」

 「え?」

 「実を言うと……僕は異世界転生してきた身だから、この世界のことはあまり知らないんだ」

 「──ふーん」

 

 と意味深な表情を浮かべるササン。何を企んでいるの。

 「折角だからさ、私と戦ってみない? 魔力の説明ついでに」

 

 そう言って、彼女は僕の手首を引っ張って街の郊外にある野原へと走った。

 

 ※

 

 「まずは魔力の説明をするね──」

 と言い、ササンは魔力の説明をし始めた。

 

 彼女曰く、魔力は五種類に分けられるらしい。

 

 ・「回復」

 ・「忍」

 ・「光」

 ・「剣」

 ・「勇者」

 

 「回復」の魔力は名の通りであり、彼女はあまり説明をしなかった。「忍」の魔力は古来日本という国で多くの人が使っていたという魔力であり、今ではあまり見掛けなくなったらしい。見掛けなくなっただからこそ、その魔力の強さは未知数であり、誰が再現しても不可能だという。

 

 「光」の魔力は妖精族と呼ばれる種族が使う特有の魔力であり、これが最初に作られた魔力とのことだった。今ではすっかりと人間でも使えるような代物となってしまった為に、妖精族特有の魔力ではなくなってしまったとのことだった。──だが、ある魔法を除いては、と含みのある言葉で彼女は説明を終えた。

 

 「剣」の魔力は人類が最も使っているであろう魔力。「光」の魔力は魔力を多く消費するという難点があったものの、「剣」の魔力はその難点を克服した魔力だそう。そして人類が作り出した最初の魔法とのことであり、魔法を最初に使う人のいわば入門と言ったところであると彼女は言った。

 

 最後に「勇者」の魔力だが──この魔力は基本誰にも使えない代物だが、ある人達を除いては使うことが出来るという。その人達とは言わずもがな僕やササンを含めた、〈ペリオット=ルーダー〉であり、この魔力を秘めていることが一番重要だという。

 

 「私たちが持つこの魔力には色々な型があってね──私だったら、『(ほむら)』が使えるんだ」

 

 と言うと、ササンは掌から真っ赤に燃えた小さな火を出す。その魔法に魅了されていると、唐突に彼女から攻撃を受ける。咄嗟にその攻撃を避けた僕は、いつの間にか魔力を掌に出現させていた。

 

 「……君の魔力は、『黄金(こがね)』と呼ばれる型だね」

 「黄金?」

 「ええ。君の魔力は一番扱いづらいものとされてはいるけど、同時に使いこなしたら“本物の勇者”になれるとも言われているものなの。まあ、要するに全ての魔力を詰め込んだものが君の魔力ってことかな」

 

 と言われ、僕は自分の掌を見た。モワモワと広がる黄色の魔力。これが自分の魔力なのか──

 

 「ちなみに、私の『炎』は自由自在に火を操れることができる。──見ててね」

 と言い、彼女はその場に円を描くように掌を操り始めた。その直後、彼女の目の前には竜巻のように伸びる炎が現れ、熱風が周辺の風に乗って僕に浴びせてくる。

 

 「あちち!! あちち!!」

 「あ、ごめんごめん」

 と言って、ササンはその場で炎を操るのを止めた。

 

 「やり過ぎた。──ところでなんだけど」

 「ん?」

 「その傷、大丈夫なの?」

 

 と言って、ササンは僕の右腕を指差してきた。右腕には大きく刺し傷があり、恐らく魔物──ヴァルドと戦った際に出来た傷だろう。

 

 「折角だし、自分の魔力を使ってみようよ。傷に合わせて魔力を当ててみて」

 言われた通りにする。すると、みるみると傷が塞がっていき、いつの間にか元の状態にまで治っていた。

 

 ──これが…………自分の持つ魔力。

 

 「これが魔力。分かって貰えた?」

 と和やかにササンが笑う。その反応を見て僕は頷いた。

 

 「よし──冒険の旅に出かけようか!」

 

 その合図と共に、僕はササンと旅をすることになった。

最後まで呼んで下さりありがとうございます。私からのささやかな願いではありますが、下の欄にある星で評価して頂けると幸いでございます。

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