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高校3年生〜卒業

高校3年になった。


相変わらず俺は恋愛についてよく分からず、卒業した圭佑先輩と会っては「恋愛って何ですか⁉︎俺達もう受験だろ?どう付き合うんだよ⁉︎」と、どんどん周りに彼女が出来てくる環境にイライラしていた。


「アハハ、竜ちゃん。面白い。」


「面白くないです!こないだ『藤本、彼女欲しくないのおかしくない?』とか、言われたんですよ?俺こそ『おかしくない⁉︎』って言いたいっちゅ~のっ!勉強しろやっ!リア充がぁぁあっ‼︎」


圭佑先輩と一緒にやって来たカフェで叫ぶ。

正直俺は先輩や友達とこうやって一緒に遊ぶ方が楽しい。

周りを見ると「ゴメン……この日は彼女と……」とか聞いてると、空いてる時に会わずに無理に相手に合わせてるんじゃないかという束縛感を強く感じた。


………今考えりゃ……惚気だよな………


「まぁ……コーヒーでも飲んで落ち着きな。竜ちゃんこのコーヒーの味、好きでしょ?」


「………うん……美味しい…」


先輩は美容系の専門学校に進学してから益々お洒落になった。

お陰で俺もその恩恵をもらえてんだけどね。


「…あ、先輩……それ……」


耳にキラリと光る……


「うん、開けたよ。」


ピアスだ。


「良いなぁ……俺も早く開たい。」


「駄目だよ高校生。卒業したら開けてあげるから我慢しな。」


「……うん、楽しみにしてます。」


ピアスを開けるのに最初は病院を勧められたが「じゃあ、友達に開けてもらう」と言った所、先輩が「俺が開ける」と言ってくれたので甘える事にした。


先輩は合う度にドンドンお洒落になっていく。

こんなにお洒落だと周りは放っとかないよなぁ。


「先輩さ……」


「……ん?」


「……彼女…作んないですか?」


「……竜ちゃんこそ。」


「俺はさっき言ったでしょ?『おかしくない?』って言われたのっ。それに俺みたいなブッサイクに彼女なんて出来ないですよ。」


「可愛いよ。」


「可愛くないっ!」


「俺から見たら可愛いよ。」


「男の俺に可愛いもなぁ~…カッコイイが良い。」


「フフッ……それは…無いなぁ。」


先輩はコーヒーを飲みながら楽しそうに返事をした。

格好良くありたいんだけどなぁ……身体を鍛えてもどうしてもウッカリ感は抜けないんだよな……俺も同じコーヒー飲んでるのにさ。

先輩はカップを持つ手も、姿勢も……そして表情も……全てがスマートだ。

窓から入る陽の光の中にいる先輩が、雑誌の撮影も出来んじゃないかってほど画になっていた。


「良いなぁ……」


「何が?」


「俺……先輩みたいになりたい。」


「俺みたいになっちゃ…駄目。」


「何でぇっ!」


「フフッ、そのままの可愛い竜ちゃんでいてよ。俺はそっちの竜ちゃんの方が…好きだよ。」


「もう、先輩っ。はぐらかさないで下さいっっ!」


今考えたら「好き」という単語を先輩が3年の頃から俺によく言っていた気がする。

拓海先輩がよく「好き好き」言うから忘れてたかも。



「好き」かぁ……



「俺は先輩みたいな……カッコイイ男になりたいんですよ。」


「……俺は……そんな格好良くないよ。竜ちゃんは見えてないだけ。」


「そんな事無いですっ!」


高校生とはいえ、恋愛というものを知らなかった俺が先輩に申し訳ないことをしていたと自覚したのはもっと先の話となる。



_____________




卒業式の翌日、圭佑先輩にピアスを開けてもらうことにした。


「……ん……ここ?」


「う~ん……この…辺……かな?」


先輩の持ってる化粧品(眉毛描くやつ?)で開ける場所に印を付ける。

美容学校に行ってるし、男でも色々持ってんだね。

メイクの勉強もしてたんだっけ?


「竜ちゃん、耳を氷で冷やしてね。俺、あんまり人にやった事ないから…しっかり冷やして。」


先輩に氷を渡されて耳を冷やす。

部屋に初めてお邪魔して、ドキドキする間もなく初めてピアスを開けてもらった。


「じゃぁ…いくよ?」


先輩の顔が近付いて頬に息が掛かる。



___バチンッ!___



「ぁ……っ!」


「……っ…大丈夫⁉︎」


「……あっ……ゴメン、大丈夫です。音にビックリしただけだからっ!」


痛みがほんの少しで良かったけど、思った以上に音がデカくて驚いた。

オロオロする先輩に申し訳なくてこっちも思わずオロオロしてしまう。

でも、こんなオロオロする先輩……初めて見たかも。

フフッ…可愛い所あるんだなぁ。


「……良かった……痛くなかった?」


「うん、大丈夫。」


「……じゃあ…もう1つ…開けるね。」


俺はもう片方の耳に氷を当てて冷やして穴を開けてもらった。


「………良いね………似合ってる。」


「先輩、やってくれてありがと。」


「………うん………竜ちゃん…」


「……ん?」


「もう先輩じゃないよ。」


「……?」


隣に座っていた先輩がこちらにキチンと向き直して俺の顔を見詰めた。


「卒業…したでしょ………卒業……おめでとう…」


「ヘヘッ……ありがとうございます♪」


「卒業したんだから、俺の事は#先輩__・__#呼びは無しね。」


「え?じゃあ、何て呼ぶの?」


「圭佑で良いよ。」


「呼び捨て⁉︎いやっ………無理無理無理っっ!」


「フフッ……しょうがないなぁ………じゃあ…圭佑()()で許してやるよ。」


先輩は嬉しそうに微笑んだ。

4月の入学式で忙しくなる前に花見をしようと圭佑さんに誘われた。

今年の桜は早そうだし、入学式には完全に散ってしまうだろう。

俺は植物公園で圭佑さんと待ち合わせにした。

当日お弁当をそれぞれ持ち寄りたが、圭佑さんに「飲み物は酒が良い」と言ったら「20歳まで待て」と言われて渋々飲み物をジュースにした。


「圭佑さん!お待たせ!!」


待ち合わせの日は天気も良く、半袖でも十分な小春日和を飛び越えた日となった。

春休みが始まったとはいえ、平日の昼の植物公園は卒業旅行やレジャー施設に行く人の方が多いだろう。

レジャーシートを敷いて見上げる桜の木の下は格別なものだった。

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