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第18話、親方!!!胸からウサミミが!!!!

 しばらくウロウロしたけれど、やっぱりここには痕跡らしいものはない。

 俺が暴れてたからあったけど消し飛ばした可能性もあるけれど。

 

「もう少し森の奥に潜ろうかな。川向こうとか」

 

 ここにきて少し経つけれど、川向こうには行ったことはない。

 行ってみる価値はあるだろう。

 

 川を遠慮無しに横切る。

 途中、結構な深さがあったけど、呼吸は必要ないから普通に川底を歩いて渡った。

 スライム最高。

 

「よっこいせ」

 

 川から上がり、森の中に入っていった。

 

「結構草が生い茂っているじゃん」

 

 眼前に広がる植物が、奥へ進ませまいというかのように行く手を阻んだ。

 人ならば、厄介なこの草を斬り進むんだろうが、スライムなので関係ない。

 進む度に体に取り込んで食べていく。

 

「えーと、さてさて?」

 

 貰った資料を見返してみる。

 ホビラットの身長はおおよそ100センチ。だいたい5歳児くらいの体格らしいから、すぐに見付かりそうなものだけど。

 

「そー簡単にはいかないかぁ」

 

 草と勝手が違う。

 なんせホビラットは動いているから。

 

「獣毛とかあれば貰ってくるんだった」

 

 それなら隠れていてもすぐに見付かるのに。

 最近分かったことだけど、俺のこの探知モードは無機物以外にも適応するらしい。

 なんて便利なのか。

 とはいっても、それは探しているものの一部が取り込めた場合。

 そうではない時は地道に探すしかない。

 俺のギャルスキルも探索系なのか怪しいし。

 

 といってもまだ全部試してないけど、ちゃんと使えるものがあれば嬉しいな。

 

 

 

 

 

 歩き回りながら、草を食べる。

 

「獣は普通に居るっぽいんだけどなぁ」

 

 木には大きな爪で引っ掻いた跡。

 爪かな?

 

「あ、そうだ」

 

 爪を登録しておいた。

 いつかの役に立つかもしれないし。

 

 

 

 

 

 

 何かの足跡を発見した。

 

「ウサギぃー?の足跡?」

 

 実際見たことがないから、本当にそうなのかは分からない。

 

「お!」

 

 木の枝先に獣毛発見。

 それを摘まんだ。

 フワフワで、綿毛のような獣毛。

 

 とりあえず取り込んで、これはホビラット!!!と念じると登録してみた。

 

[ホビラットを登録]

 

 すかさず、ホビラットを表示と念じた。

 

[ホビラットを表示]

 

 ポポポンと周囲にたくさん現れた。しかもそれらはぐるりと俺を取り囲むような配置をしていて、思わず鳥肌が立ったみたいな感覚に陥った。

 実際立ちはしないんだけど。

 結構ホラーな展開でビビった。

 

 ……あれ?これはじめから囲まれてたパターン???

 

「こっわ!!!!」

 

 すぐさまスライム化して地面へと逃亡した。

 突然消えた俺に戸惑い、ホビラット達が姿を表して探しだしたのを感知した。

 それを見上げながら、ふと、良いことを思い付いた。

 

(おっらあ!!!!)

 

 勢い良く飛び出し、真上にいたホビラットを捕縛した。

 驚きパニックになるホビラットが一斉に逃げ出した。

 さすがウサギ。

 逃げる早さだけなら俺と良い勝負じゃん。

 

 体の中で捕まえたホビラットが暴れまくっている。

 蹴りが凄すぎて体がボゴボゴ言いながら変形していて、痛くはないけど、体内が落ち着かない。

 

(どうどう、ちょっと落ち着いて!)

 

 心の中で語り掛け、いや、でも無理な話しかと思い直す。

 話しどころかこの状態だと会話も出来ないしな。

 

(呼吸も出来ないだろうなこれ。頭だけ出してやるか)

 

 ホビラットの首だけを出してギャル化した。

 これなら会話できるし呼吸も出来ると踏んだのだが、結果的にホビラットの頭が胸の真ん中から生える形となった。

 違う意味で落ち着かないが、これはもうしょうがない。

 ベストな位置がここしなかった。

 

「落ち着いて~」

「お、おちついてられるか!!はなせぇ!!」

「あれ、普通に喋ってる」

 

 てっきりウサギ語話されて苦労するものかと思っていたから拍子抜けだったけど、これはこれで別にラッキーだからいいか。

 

 地面に座って落ち着くまで待つことにした。

 

 

 

 

 

 ずっとモゴモゴしていたけど、疲れたらしい。

 大人しくなってきた。

 

「いっそころせ……」

「テンションの落差ぱねぇ」

 

 威勢の良かったホビラットは、今はぐったりと完全に俺に身を委ねている。

 委ねるもなにも首から上しか出てないんだけど。

 

 覗き込んでみると、ホビラットの目が死んでいた。

 魚の目だ。

 いや、魚の目だってもっと輝いていたから魚に失礼か。

 

 良い機会なので、まじまじとホビラットを観察しつつもう一度登録しておいた。

 どうやら体に含んでいる時点で登録できるらしい。

 大発見。

 

 見た目は5歳時がウサギのコスプレをしているみたいだ

 良く見るケモミミ人間かと思いきや、全身ちゃんと獣だった。

 

「君、ホビラットだよね?」

 

 確認の為に尋ねたら、キレられた。

 

「はあ?そんなのケナシがつけたアダナだろ?」

 

 ケナシとは何だろうか??

 よく分からないが、違うのならば登録を変更しないといけない。

 でも姿がまんま絵の通りなんだよな。

 聞くだけ聞いてみるかと質問をしてみた。

 

「じゃあ何て言うの?名前は?」

「なんでオマエなんかに、おしえないといけないんだよ!」

「呼ぶとき不便じゃん」

「……」

 

 答えると、ホビラットは唖然としたようだったが、すぐに色々めんどくさくなってきたのか盛大に溜め息を吐いて答えた。

 

「……ビガロ」

「ビガロ族?」

「おれのなまえだよ!ヤクジシのビガロ!」

 

 ヤクジシというが名字?いや、種族名?

 もしかして、ここでは人が呼ぶ種族名が、その種族にとってはその通りではないのかもしれない。

 イギリスが本当の国名がグレードブリテンのように。

 

 とりあえず、このビガロがホビラットと仮定して、交渉してみることにする。

 

「えー、ではビガロくん?実は君たちへの依頼が出ていてね、討伐か撃退をしろっていわれているんだよ」

 

 ビガロの耳がピンと張った。

 緊張しているのか顔が強ばり、こちらに向けて歯を剥き出して唸り始めた。

 出だしは最悪だ。

 でもこれは伝えないといけない。

 

「でもー、正直俺は乗り気じゃないわけ。ていうかぶっちゃけ君らに同情しちゃってるから、さっさとどっかに逃げて欲しいんだよね」

「どうじょう?」

 

 怒りながらも、なんで?という顔をされた。

 聞いてくれる気はあるらしい。

 

「俺は川向こうが住処なんだけど、どうも俺の日課が君たちのせいになっているらしくて…」

「にっかぁ??」

「俺、スライムだからさ、食事量が凄くて」

 

 と、近くにあった小さめの木を触って、一気に腕をスライム化して取り込んだ。

 

「!!??」

 

 街に来たての頃よりも体積はまた少し増えて柴犬くらいになっている。

 でも別に全部食べる訳じゃないから、枝分かれした方だけを削り取って食べた。

 食感が最高。ゴボウ食べているみたい。

 

 すると、ビガロの体がバイブのように震え始め、心なしか泣きそうになっていた。

 ん?どした?

 

「お…おれも…くわれる…のか??」

 

 あ、確かにそう思うよね。

 失念していた。

 

「いやいや食べないよ。収納してるだけ。だって逃げるじゃん?」

「そりゃにげるよ!だっておまえ、ケナシのすがたしてるけど、ヌマノケだろ?しかもイワをきりざむこわいやつだ!」

「うぐ…っ」

 

 ヌマノケかは知らないけれど、あとは全部合ってる。

 否定できない。

 

「だいたい、おれたちだって、こんなところにきたくなかったんだ…。ヒノコがこなかったら、へいわだったのに……」

「ヒノコ?」

 

 キノコではなさそう。火の粉?

 

「火事にでもなったの?」

「ちーがーうー!ヒノコだよ!!なんだよオマエ!ヌマノケのくせにヒノコしらねーのかよ!!」

 

 胸から生えた頭がぶんぶんと左右に激しく振られている。

 やっぱりヌマノケってスライムの事っぽいな。

 

「ふん!生まれて間もないからね!何にも知らないよ!!」

「いばっていうことじゃないだろソレ…」

 

 だんだん疲れてきたって顔をしている。

 これなら逃げないかな?いや、でも万が一というのもあるし。

 

「で?そのキノコ、じゃなかったヒノコっていう生き物なのかなんなのか分からないけど、ソレがきたから元いた場所からここに移動してきたって事で良いんだよね?」

「そうだよ……」

 

 もし生き物なら、俺がそれを食べちゃえば依頼は達成できるし、このホビラットは元の場所に帰れるってことか?一石二鳥じゃん。

 

「じゃあ、俺がそれを何とかしてやるよ。生き物だったらなんとかなりそうだし」

「ハァ!??」

 

 空を仰いでいたビガロが凄い勢いでこちらを見た。

 

「ばっかじゃねーの!???オマエはみたことナいから、そんなこといえるんだよ!!!あのキョウジンなツメ!!オソロシイあのキバをみたらすくみあがるにキまってる!!!」

 

 それは、あの時に感じた恐怖よりも上なんだろうか?

 でも生き物なのは間違いない。

 どうせ俺は斬るのも殴るのも効かないんだし、なんとかなるだろう。

 

「大丈夫だいじょーぶ!ちょっと俺に任せてみろってな!」

 

 そんなわけで無理やり説得し、群れの元へと案内してもらうことになった

 


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