表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

第16話、やばいのと遭遇した!!!!

「えっ!ちょっ、まっ!?」


 相手は手加減なしの猛攻を始める。

 こっちは素人だぞ!?アホなのか!!??

 慣れない剣を使ってギリギリ打ち返していたけど、正直、草刈りにしか振ってない自分が対応できるわけもなかった。

 当たり前だよ。


「ひっ…!」


 剣が肩を切り裂いた。

 かなり深く斬り込まれた。


 ぎゃああああああ!!!!!やられ……てない?


 物質が体の中を通過した感覚はあったけど、不思議と痛みが全く無かった。

 血も出ないことに疑問を抱いていると、思い出した。


 あ、斬撃無効。


 というか、俺はスライムだから血は無いし、痛覚も無かった。


 攻撃が当たったのに血も出ず、むしろ不思議そうな顔をしている俺を見て、相手も同じく「あれ?」という顔をしていた。

 周りの取り巻きも「あれ?」と首を傾げてる。


 もう一度切られた。確認切りだ。


「…………」

「…………」


 時間が止まったような気がした。


 ニヤリと笑ってやる。

 なーんだ余裕じゃん。一撃いれれば良いんだよね?

 攻撃に構わずにどんどん進んでいくと、相手の顔がどんどん恐怖に染まっていった。


 小さく悲鳴を上げ始める男。

 まるで幽霊でも見たような顔だ。

 他の人達も恐ろしいものを見る目をしている。


 ふふふふふふ、スライムなめるなよぉー!


 執拗に追いかけ回し、壁際に追い詰めてしまった。

 男は怯えながらブンブンと闇雲に剣を振り回していて、まるで子供がプラスチックの剣を振り回しているようだった。

 さっきまでの威勢はどこ行ったのか。


 取り敢えずさっさとこの意味の分からないイベントを終わらせよう。

 正直、飽きた。


 結局大して使うこと無かった剣を振り上げる。


「よいしょー」


 一線。

 防御に使った男の剣が真っ二つになった。


「は?」


 あまりの切れ味に内心ビビっていると、男は失神しており、ついでに失禁していた。

 おいおい、最初に切ってきたのはそっちだろうに、いざ切られる側になると当ててもないのに気絶ってどーよ。


「うわ、雑魚じゃんこいつ。ザーコ」


 一応ムカついたので煽っておいた。

 もう二度と絡んでくるなよ。


「もう帰っていい??」


 取り巻きは壊れた玩具のように首を縦に振っていたので、俺は戻ることにした。







 俺の剣はいつの間にか斬鉄剣になっていたらしい。

 こんな凄い剣を俺は草刈りに使用してたのか。

 道理で切れ味が良いわけだよ。


「重宝しよう」


 それにしてもスライムの特性だけでも、今回のを見る限りは弱くはないと思う。

 だって打撃無効に斬撃無効だ。

 考えてもみろ。

 床を溶かす生きたゼリーを退治しようと思ったら、叩いても刺しても構わずに溶かし続けるなんて最悪の部類だ

 ゲームだったら雑魚に苦戦なんてクレームの嵐だろう。


 そういえば、俺はあの代理人にスライムは矮小生物、粘体生物とは言われたが、“最弱生物”とは言われてない。


 この世界では俺の知ってるスライムとは別物なのか??


 自分のこのとなのに自分が分からないとか逆に笑えてくる。





「ねぇ、君」

「!!??」





 突然横から話し掛けられた。


 視線で声の主を確認する。

 背の高い、フルアーマーの男性。


 その人間を認識した瞬間、ドッと、汗のようなものが吹き出した。

 本能が告げる。

 今すぐ逃げろ、と。



「君ってさ、 スライム だよね?」



 俺は逃げた。


 早すぎるって?

 スライムの十八番は逃げることだろ??

 まさに【スライム は にげだした。】だ。




 ◼️◼️◼️



「あーあ。逃げちゃった」


 フルアーマーの男が、ピンクの髪の女の子が走り去っていった通路を眺めていた。


「でも、もう覚えたから、その内またあえるね」





 ◼️◼️◼️



 ていうかなんだあいつ!?

 なんでばれた?もしかして、アイツが勇者ってやつ??


「退治されちゃう…っ!まだ死んでたまるかっ」


 今まさに街を出ようとしている馬車を発見し、すかさずスライムに戻って転がり接近。即座に馬車の底に張り付いた。

 できるだけ体を平らに、気配を消す。


(俺は空気、俺は空気、俺は空気、俺は空気)


 お願いだから見付かりませんようにと全力で祈りながら、動き出した馬車に身を委ねる。

 心臓も無いのにバクバクと早鐘を打っている錯覚を感じながらも馬車が街を出たのを確認し、ある程度離れた場所で道に転がり落ちて森へとダッシュ。

 そして行き着いた川へと華麗に飛び込み、海底をガンガン掘って隠れた。






 三日後。


 川底から出てきた。


 さすがにもう諦めただろう。

 諦めてて欲しい。


 でも警戒しながら戻ると、お祭りムードはすっかり消えていた。

 勇者は去ったらしい。

 本当にあれが勇者なのかは分からないけれど、ホッとしながら街に戻ると、いつもの門番の人がこちらを見るなり驚いていた。


「いつ出てたんですか!?」


 そういえば、手続きも無く脱出していたんだった。

 戻る時も馬車に張り付いていれば良かった。


「三日前でーす。ちょっと用があって実家に帰ってましたー」

「そうなのかい? あちゃー、見逃していたのか……」


 ごまかしは成功したらしい。

 門番の仕事での見落としで反省しているみたいだけど、そもそも不法脱出したのはこちらなのでそちらは全然悪くない。

 言わないけど。


 出店もすっかり消え失せた。

 これで一安心。


 でもやっぱり恐いから、警戒しながら依頼をこなす。

 草や石を採掘する依頼。

 馬の世話や下水の清掃などを淡々とこなしていく。

 得意な依頼はもっぱら薬草集めと魚取りだ。

 状態が良いと、報酬はいつも満額。

 それに、だんだんと草リストが増えてきたので、その内レアな草を薬屋に直接売り付けるのも良いかなと思い始めている。


「ラムスさん。そろそろ貢献度も良い感じなので、階級を上げても良いかもしれないですよ」

「え、そうなんですか?」


 突然、ギルド職員の人からそんなことを言われた。

 まさか向こうから提案されるとは思ってなかった。


「はい。そうすれば依頼の幅も広がりますし、何より報酬も上がります」

「あー、たしかに」


 今でも十分だけど、稼げるのなら稼いでおくのは得かもしれない。

 なんなら、食べ物リストが更に厚みが増すからな。


「じゃあ、やります!」


 そんな感じで俺は晴れて素銅級クプルムへと昇級した。

 胸元で揺れる銅のプレートが眩しい。


「ここで本来ならパーティーを組んだりするんだろうけど……」


 俺はスライムだ。

 ソロで良い。


「さぁーて、今日もお仕事頑張りますか!」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ