第13話、価格がわからん!!!!
「こんちゃー!」
「うわまた来た…」
俺が来るなり露骨に嫌な顔をする武器屋の人。
今回はちゃんと客で来たのだから笑顔で迎えてほしい。
まずは客の証拠だとカウンターへと向かう。
「これで買えますか?」
ポケットから今日の報酬を取り出した。
どうよ。今回はウィンドウショッピングではなく、きちんとショッピングする気満々だ。
しかし、武器屋の人は俺の想像していた反応とは違う顔をした。
あれ?
「………………、お前、あれだな。ここまでバカだと同情するよ」
「え?足りなかった?」
「過剰だよお馬鹿」
過剰と言うことは払いすぎということか。
しかし客に向かってお馬鹿とは、ここの世界には「お客様は神様です」という言葉は発生しなかったみたいだ。
まぁその言葉も本来の意味とは違う使われ方をしてしまっているけれど。
「とりあえず買えるってことだよね」
「買えるよ、買える買える。よゆーで買える。要るのはこれだけだ。これらは仕舞っとけ」
武器屋の人がコインを1つだけ摘まみ、後のはこちらに寄せてきたので、返された分をポケットにしまう。
「小銭入れもないのかよ…」
武器屋が呆れ顔を向けてきた。
良いじゃんよ。
どうせ本当にポケットにいれているわけじゃ無いし。
とはいえそんなことを言えば深く追求されるので言わないけれど。
「お願いしまーす」
スマホと充電器を持っていくと、勘定してくれた。
気分ははじめてのお使いだ。
「ほれ。お返しの9ダブロンズと7ブロンズだ」
また新しいお金が出てきた。
楕円形の茶色のコインが9枚に、丸い茶色のコインが7枚。
それらを受けとって見つめ、なんとなくこれらのコインの価値が分かった。
「……これあれか。もしかして970円的な」
「は?」
とするなら1シルビアが千円くらいと仮定して見れば良いのかな。
とりあえずそう考えておこう。
そう仮定しておけば、計算が楽になる。
とりあえずスマホと充電器をポケットに仕舞った。
充電は明日試みよう。
当初の目的は達成したわけだが、どうせならもう1つくらい何か買っていこう。
そうだ。せっかくだし防具とかも見てみようかな。
お手軽で良いのがあれば、次の目標に出来る。
いつもとは反対側を見れば、そこにあるのは際どい女性防具がズラリと大量に並んでいた。
なんでこういう系の装備が豊富なんだよ!!!!
その内の1つを手に取り見てみる。
まるで水着だ。
水着の上に鎧が最小限度くっついている。
本当にこれは鎧の役割を果たせているのだろうか。
「なんだ?流石のアホでも防具が必要だと気が付いたか?」
「あはは、そっすねぇー」
武器屋の言葉を受け流し値段見ると、4なんとかと書かれてる。
読めない。なんだこの記号。
「それは4ハゴルドだ」
「また知らない価格…っ!!」
とりあえず、この記号はハゴルドと言うのは分かった。
このハゴルドというのは、ブロンズよりも高いのは分かる。
なので、一番比較がしやすいシルビア、千円仮定のコインで確認をすることにした。
「ハゴルドってのは?このシルビアがいくつ集まったらハゴルド??」
「はぁ?そんなの100枚に決まってるだろ。ガキでも知ってるぞ」
「100ぅー……」
とすると、えーと、例えでこのシルビアが千円だとして、これが100だから……、……10万円ハゴルド!!
「40万円かぁー。中古車並…」
「さっきから訳の分からない言葉話すなお前」
流石にそんなに持ってないし、途方もない。
何年草刈りをすれば貯まるのか。
きっと貯まりきる前に街の内外の草が消え失せるに違いない。
「一旦諦める」
「そうだな」
「また来るね」
「もう来なくて良いぞ」
大山当てて、お金がたくさん手に入ったら買おうそうしよう。
はじめて尽くしで頑張ったご褒美として出店で焼き鳥みたいなのを幾つか買った。
一本が約5ダブロンズ。
日本円換算(仮定)で500円だ。
スマホの値段は3ブロンズ、約30円。
モヤシよりも安くスマホが買えるとは思ってなかった。
「さーて、食べるかー! はぐっ」
勢いよくお肉に齧り付いて、首を傾けた。
ん?なんか思ってた味と違う。
確かに美味しいのだけれど、何か物足りない。
なんだろうと思いながら食べていれば、思い出した。
「そういえば味覚切ってた」
久しぶりに味覚ON。
甦る肉の旨味に広がる塩加減が口のなかいっぱいに溢れかえる。
う、美味~~~ッッ!!!!!
やっぱり人間の食べ物は人間の味覚で味わうのが一番だな!
「んーーっ!めちゃ美味じゃん!」
こうなってくると他の物も食べたくなってくる。
取り敢えず目についた興味のあるものを買っていくと、あっという間に4シルビアが消えた。
「ふう、ごちそうさん」
ペロリと平らげたが、残念ながらお腹は膨れなかった。
スライムの俺には足りない。味ではなく、量が明らかに足りなかった。
あと、水分がほしい。
人が食べるものは総じて火が通っているせいか、水分が全く無かった。
「うーん。ダメだな。一旦戻ろう」
街に出ようとすると、門番に呼び止められた。
「なんです?」
「女の子一人で日が暮れた後に出るなんて、危ないだろう」
ああ、そうか。
今俺ギャルだった。
「ちょっと忘れ物をしたので」
「忘れ物??朝ではダメなのか?」
「えーと、急ぎなので」
「分かった。なら私が付いていこう」
いや、なんで?
「いえいえいえ、大丈夫。だいじょーぶですから!いやもうほんと、へーきなので!」
それでも付いてくると言ってたが、丁重に断った。
困るからやめて本当に。
「ギャルは便利だけど、不便なところもあるなぁ」
昼間隠した草のところへと到着すると、味覚を消してスライムへと戻る。
待ちに待ったご飯だ。
そのまま草の塊を丸飲みにしていく。
あっという間に食べ終わってしまった。
まだすこし足りない。
「ふむ。やっぱこれかな」
仕方がないので半分残した岩を丸飲みにすると、ようやく満足した。
成長して体積が増すと、食べる量も増えるのは困った。
どうにかしないといけない。
でも今日はたくさんお仕事して疲れたし、明日に向けてちょっと休もうかな。
その前のステータス確認もしておこう。