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文化祭実行委員への道  作者: 松波愛
3/11

文化祭実行委員への道 3

鈴木圭一と私は打ち合わせをよく行った。

帰りの会の前に、だ。


だいたい、帰りの会の係からの連絡で

挙手したくせに、

「え?何々どうだっけ?」

と係の者どうしでそこで

打ち合わせをしていることくらい

へぼいことはない。

私はそんな、かっちょ悪いことは

大嫌いだった。


「藤咲ななこ」の沽券に関わる。

と自分で思っていた。

えろエースのオギに

ぶらじゃーの紐を引っ張らせているような

あほうな女の癖に。その上、

そうとうの自意識過剰のアホである。


クラスでの、帰りの会での連絡、

アンケート集計、

募集内容に関する司会、

は私の担当にした。


委員長の圭一は、

色々各部署におろさなくてはならない

懸案や事項を西原先生から渡されて

まずは、それを取り仕切ることが

彼の仕事だったからだ。


時々、いっしょに、紙花を作った。

意外と圭一は器用で。

さっさっつと紙花を作っていった。

少年のでも、少女のそれよりは

明らかに骨ばった男っぽい手先を見ると、

ああ、彼はオトコなんだ。

と妙に感心したものだ。


できあがった青い花だの紫の花だのの

紙花は妙に毒々しく、

「これ、どこにかざるんだよ。」

とよろこんでむりむり作ったくせに、

使い道に困って、

私達はげらげら笑った。

後で様子を見に来た担当の西原先生も、だ。


相変わらずバカな私は、

自分の髪にもりもりこの毒々しい花をつけ、

周りの笑いを誘う。

今思うと、何か妙なダンスまで

踊ったような気もしないこともない…。(汗)



最後には、鼻の頭に赤い花をつけて、

「となかい~☆」

とやっているのだから、

本当におまへは、中学3年生なのか?

と人に聞かれても、どうしようもない。



が、側に1組の垣原がいた所為もあるだろう…。

奴はいかん。

ふんとに、いかん。

私のお笑いの素質を存分に生かしやがる・・・。

大変なことだった…。


とりあえず、一通り、仕事を終えて、

暗くなった教室への廊下を圭一と

一緒に帰ったことがある。


「暗いなぁ…。」

圭一がぽそり、と言った。


「藤咲、おまえ怖いもんある?」

「ないよ。」

私は即答した。


嘘だ、私は暗闇が苦手だった。

他にも怖いもんなんざ、やまもりてんこもりにある。

でも、それを言うのが恥ずかしかった。


「圭一君こそ、暗いの嫌いなんじゃないの?」

私はにやり、と笑った。


「まあな。得意、じゃない。」

鈴木圭一の方が私より数段、素直、だった。


「ねえ、統一模試どうだった?」

塾の模擬試験の話を私は切り出した。


「トップに聞かれたい、内容じゃない。」

彼は苦笑した。


「相変わらず、厳しいの?西校。」

私は言った。


「お前は、大ジョブだろ?特進科。」

私達の志望校は同じだった。

彼の志望は普通科。

私は特進科、だ。


「そうとも言えないよ。私は女だもの。枠狭いんだよ?」

私は唇の先をとがらせた。


「お互い、がんばらないとな。」

圭一は笑った。


「こんな実行委員なんかやってる場合じゃないくせに。」

私は肩をすくめて圭一を自分の肩越しに見た。


「おまえもだろ?」

「まあね。」

私達は笑った。


教室に着き、

わたしたちは自分の荷物を持った。


私を廊下に出してから、圭一は

教室の電気を消した。

消える少し前、私は彼の横顔を見た。

電気をバックに立つ彼の姿を見た。

少年の背は私よりも大きい。

骨ばった体つきは私にはないものだ。

ああ、彼は、私と違う生き物だ、と

私はぼんやりと思った。

どきり、とした訳ではない。


「じゃ、また明日。」

私達は、校門で北と南に別れた。

出身の小学校が違うのだ。


鈴木圭一は、私にとって、

一緒にいて心地いい仲間の一人だった。

それ以上でも、それ以下、でもなかった。



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