文化祭実行委員への道1
「藤咲!」
呼ばれて私は振り返った。
「実行委員、よろしく頼むな。」
「何、圭一君。どうかしたの?」
私はトイレへの道を歩いていた。
群れは、しない。
行きたいとき、に、行く。
行く必要がなければ行きはしない。
シンプルなことだ。
鈴木圭一、だった。
彼は、陸上部の主将だ。
私と同じクラスだった。
「ああ、俺も、立候補、した、から。」
彼はさらり、と言った。
「じゃ、小林に呼ばれてるからさ。」
少年は、私の先を歩いて行った。
小林、は陸上部の顧問、だ。
私たちのクラスの実行委員は最後まで、決まらなかった。
男女とも、1名。
たいがい、推薦で、決着がつく。
だが、私たちの担任は何があったのか、
「立候補、」にこだわった。
自分が立つ。のは…。
私は、好き、ではない。
自ら、というのがでしゃばりなきがして気に入らない。
でも、どこか、で、担任である、
彼が私を見ていた、のを
私は知って、いた。
局面を打開する。
のを面白いと思うか、といわれれば、
はい。とは答えない。
仕方ない、と思う。
このまま、だれも立候補がいないまま、
実行委員がたたない、クラスのまま、
文化祭を迎えることはできなかった。
正直、この中学3年生のくそ忙しい中、
受験勉強をしたかった私が
生徒会役員さえ、引退している中、
文化祭実行委員なんかしたい訳がなかった。
でも…。。
私は、呼吸をひとつ、深く、し。
右手をすっと、上げた。
ついさっき、のことだ。
こうして、36HRの文化祭実行委員は決定する。
女子は、だ。
そこで、学活の時間は幕切れだった。
その数分後の出来事だった。
私は、少年の背を見送った。
立候補したいわけがないのに…。
その事情は痛いほどよくわかっていた。
私は彼と同じ塾に行っていた。
彼の志望校、への道は
きわめて厳しかったから、だ。
ぎりぎり、と言ってもよかった。
なぜ?
相変わらず、苦労性だな。
彼は職員室への道をすっすっと歩いて行った。
私はその背を見送りながら、苦笑した。