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「おっ」
エントリー表を確認して古閑は思わず声を出してしまう。
そこに真仁田天の名前を見つけたからだ。
前回は完全に飲まれて何も考えていられれなかったが
今回は違う。
確かめなくていけない、本物なのかどうかを。
そう覚悟した古閑の頭の中では前回の天の演奏がこびりついていた。
あいつが来る
碧にとってそれは突然だった。
今日もいつもと同じ、またこいつとの争いだ。
布木ケイジ
なんといまいましいことか、
毎度毎度の事で正直うんざりしているけど
こいつさえ倒せばいいのだ
そして私が1番だという事をわからせないといけない。
そう思って挑んだコンクール。
当然今回もそうだと思っていたのに
違った。
「何なの、何なの、何なの」
急に現れた奴に負けた
別に負けたことが無かった訳じゃない
それでも今回のはそう言うのとは違う
もっと根本的な部分で負けた気がした
圧倒的な敗北感。
それが何なのか考えようにも、心が否定する
だから私は今日それを確認する為にここに来た
大丈夫。私は負けない。それだけの練習をしてきたのだから。
布木ケイジにとってコンクールなんてものは通過点にしか過ぎない。
いずれは世界的な奏者になる
その為の足掛かりだ
だからケイジにとって周りの奴らなど眼中にない。
そもそも目指している所が違うのだ。
そんな奴らと比べられる事にすらいら立ちを感じてします。
精々古部碧くらいだろうか、認めてやってもいいと思えるのは。
どうやらプロを目指しているようだし、
俺と張り合う事の出来るやつなんてそうはいない訳だし、
見た目もそこそこ可愛いから、
まぁいいだろう。
でも、1番は俺だ。
だって、これから世界的な奏者になるのだから。
そして今回もその通り1番になった。
なったはずなのに、喜べない。
みんなの脚光を浴びるのは俺のはずなのに
みんなあいつを見ていた
2位のあいつを
先生ですらあいつを見ていた
だから俺は証明するんだ。
1番は俺だと。