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褪せない香り

作者: 友利りた

私は、田舎でも都会でもない街に生まれて、幸せでも不幸せでもない人生を送ってきました。物に不自由することも死ぬような思いもすることなく、ただただ普通をなぞる毎日です。

両親が離婚したということも、当時はセンセーショナルだと思ったけれど、片親というのもよく聞く普通の事です。母親との思い出が少しコンプレックスを刺激するのも、よくある普通のことでしょう。

母親を正常に思い出せる出来事といえば、実家の近所にあった大きな公園に行った時のことです。当時小さかった弟の為に、私と母は砂場遊びセットやウルトラマンのソフビ人形等を携えて、弟を真ん中にして3人で手を繋いで公園まで歩いたのを覚えています。公園に着くと弟が、砂場をリングにしてウルトラマンの大プロレス大会を開催し、私と母は途中までその相手をしていましたが、だんだん飽きてきて、ふたりでベンチに座ってぼーっとし始めました。

長い沈黙があった後、母が突然、金木犀の香りがするね、と言いました。私は金木犀という花の名前を初めてそこで聞いて、家に花を飾るような趣味のなかった母が知っている"金木犀"という花がとても特別な花のように思い、静かに香っていたその時の香り、教えてもらった香りを、今でも強く覚えているのです。あの甘い香りがしてくると、記憶の中でいつも怒っている母が、私に優しく微笑んでくれるような、そんな気がします。

今住んでいる街には金木犀がありません。香りの強いあの花は、苦情だらけのこの街には根付く事を許されないんだろうと思います。無香料のこの街には排気ガスの匂いが充満しているだけです。またいつか優しい記憶に出会えるように、遠出した時には香りを探して寄り道をしています。またいつか優しい記憶に出会えるといいなぁと、心の奥で願ってやみません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 静謐な空気の中の、甘やかな金木犀の薫り、 秋の感じ、過ぎし日の思い出、何だか懐かしくて、 とてもいいと思いました。 [一言] 僕の小説も感想くださいね。(^^♪
2019/12/11 07:08 退会済み
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