大変な変態たちのコントラスト
冒険者ギルド二階。
優秀なパーティーにのみ、使用を許される個室。
そこで俺は、これから固定パーティーの仲間になる人たちと顔を合わせているのだが……。
び、美女と美少女しかいねぇ……!
どうなってんだ、この冒険者パーティー。
シェリーさんも合わせて、五人の美女と美少女……。
俺、この場で浮きまくりなんだけど。
「お前ら、この間言っていた豚を連れてきたぞ。名前はダッツだ」
「……フン、そいつ? なんだか味気ない顔ね、ジャガイモみたい」
うっ!
たしかに顔は平凡だと自覚しているが、そこまで言わなくても……。
俺のことをジャガイモみたいと言った美女は、燃えるような赤髪に紅の瞳。シェリーさんに負けず劣らずメリハリのある身体をしている。
いまもその気の強そうな顔で、俺を睨みつけている。
「あの、そこまで言われる筋合いはないんですけど……」
「なに? なんか文句あるわけ?」
「いえ……ないです」
言い返そうとしたけど、強い目力に負けてしまった。
美人なぶん、睨まれると更に心にくるものがある……。
「アリア、言い過ぎだ。豚に謝れ」
「うきゅっ……ごめんなさい、豚さん」
シェリーさんが謝るように促すと簡単に折れてしまった……。この美女はアリアさんというのか。
というか、アリアさん。謝りながらも豚呼びじゃん。あとシェリーさんの豚呼びの方が酷いから。
「あの、ダッツです」
「あ、ごめんなさい、ダッツ。許してくれる……?」
うっ、可愛い……。
美女の涙目上目遣いは卑怯だ……。
「も、もちろん許します!」
「よかった、ありがとうダッツ」
さっきまで気の強そうだった顔が一瞬で、花が咲くように笑顔になった。くっ、可愛い……!
「だめだぞダッツ。そのアリアはドМだ、きちんと責めてやれ」
え、ドМなの……?
「シェリー! わたしはドМじゃない!」
「いいやアリア、お前はドМだ。ドМだと認めろ豚め!」
「うぅ……ドМですぅ……」
認めちゃうのかよ!
アリアさん……項垂れながらも口元がニヤニヤしてる……。
本当にドМなのかよ。
「……ドМのアリアの次はボク」
そう言って俺の前に出てきた銀髪の美少女。
なんというか、無表情で綺麗な人形でも見ている気分になる。
「……ボクはリノ、魔法使い」
「あぁ、ダッツだ。よろしく」
「……それで、今夜は誰から?」
「……なにが?」
「……今日からこのパーティーはダッツのハーレム。一番最初に夜を共にするのは誰からなのか、と」
「えぇ!?」
無表情でいきなりなにを言い出すんだ、この子は……!
いやでも確かに外から見たら、このパーティーはハーレムに見える!
「……もしかして、いきなり全員?」
「いや、しない! そんなことしないから!」
「……残念」
え、残念なの……?
逆に期待してたの?
「おいおいリノ! やめとけよ、ダッツが可哀そうだろ?」
そう言ってリノを止めにかかるのは、波打つような茶髪をなびかせた褐色肌の美女。ただでさえメリハリのある身体に、他のメンバーよりも露出の多い服装で目のやり場に困る。
「アタシはメイリーってんだ。よろしくなダッツ!」
「あ、はい。よろしくですメイリーさん」
「メイリーでいいよ! あと敬語もいらない、お互いに冒険者だろ?」
「じゃあ、メイリー……」
「おうよ!」
良かったこのメイリーさん、格好は露出高いけど中身は普通そうだ。
それにすごくフランクな女性だ。いかにも冒険者らしい。
「リノ、夜まで待たせるなんてダッツが可哀そうだろ! 屋敷に帰ったらスグ、だな。アッハッハッハ!」
やっぱこの人も駄目だわ。
残るメンバーはあと一人、あでやかな青髪に淑女のような雰囲気を纏う美女。頼む! 一人ぐらい真人間がいてくれ……!
「あら、最後はわたくしなのねぇ。……わたくし、ニーナ・カルチェと申します」
「ど、どうも。ダッツです」
なんか、すごくおっとりとしたお嬢様って感じの人だな。家名もあるし、名家の出身なんだろうか……?
「今日からよろしくね、ダッツくん」
「あ、はい。……あのどこ見てるんですか?」
「ううん、気にしないで?」
いや、気になるよ……。
ずっと視線が下だもん。目が合わないもん。
「うふふ、ダッツくん。とても立派なオトコねぇ」
「まぁ……身体は鍛えてますけど……だからどこ見てるんですか」
「ううん、気にしなくていいのよ?」
だから気になるって。
なんで俺の一部分を凝視してんだよ……。
なんだよ、結局メンバー全員が変態じゃん……!
シェリーさんがリーダーの時点でそうだよね、期待した俺が馬鹿だ!
「よし、挨拶も済んだな! それでは帰るとしよう!」
全員と挨拶が済んだのを見計らって、そう告げるシェリーさん。
もうちょっと詳しく話をするかと思ったんだけど……。
「もう解散なんですね……。ちょっと寂しいかな、なんて。あはは」
変態しかいないけど、これからは同じパーティーの仲間だからもう少し友好を深めたかったけど。仕方ない……。
それに帰る宿はいつもと同じでも、今日はいつもと違う帰り道になる。 俺もやっと固定パーティーの一員だ。それだけで明日を迎えるのがすごく楽しみだ……!
「心配するな豚よ。今日から一緒に暮らすのだ、なにも寂しいことはない!」
「……はい? 一緒に暮らす……?」
「む? さっきメイリーが屋敷に帰ったらすぐヤると言っていただろう。お前も今日から、私の屋敷で暮らせ」
「え、え、なんで?」
「なんでもなにも、もう同じパーティーの仲間だろう?」
「あ……」
そうか同じパーティーなんだ。
共同の家に住むパーティーなんて、珍しくもない。改めて俺、固定のパーティーに加わったんだな……。
「さぁ、屋敷に帰るぞお前ら! だれがダッツの貞操を奪えるか勝負だ!」
「いや、させねぇよ!?」
拝啓、両親は省略して我が可愛い妹。お兄ちゃんは必ずこの変態たちから貞操を守ってみせます。そして、清楚なお嫁さんを連れて帰るから。