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好きこそモノの上手なれ

「受けるなドМ雌豚っ!」


「受けなきゃ死んじゃうからっ!」



 冒険者ギルドから帰宅し、今はパーティーの屋敷。


 中庭で剣を振るうシェリーさんに、それを手甲で受けるアリアさん。

 ちなみにどちらも下着姿だ。もうお胸がブルンブルンのバインバインで大変なことになってる。


 本当は危ないんだけど、二人とも俺なんかよりも圧倒的に実力が高いのでなにも言えない。


 そしてさすがのアリアさんも、死にたくはないらしい。……なんとなく快感を優先しそうだなと勝手に思っていた。


 中庭は二人が暴れまわれるくらいには広く、その隅っこで俺はリノと一緒にぼんやりとお菓子を食べながら二人を眺めていた。



「なぁ、リノ……」


「……なに?」


「ウチのパーティーってさ、なんでこんなに変態が多いんだと思う?」


「……ボクも?」



 うーん。リノも過激な発言はするけど、面白がってる印象が強いからなぁ。それに比べて他の四人は……。



「リノは違うかなー」


「……よかった」



 さすがのリノもあの変態四人と同じ扱いは嫌らしい。



「……たぶんだけど、みんなそういったモノを規制されてたから」


「ニーナさんは公爵令嬢だし、シェリーさんも家名があるから貴族ってのは分かるけど……」


「……アリアもメイリーも、貴族じゃないけど厳しい家の出身」



 そうだったのか……。メイリーの方はあんまり納得できないけど。なんだか生粋の冒険者感がすごいんだよあの人は。



「リノは?」


「……一応はボクも、貴族じゃないけど厳しい家だった」



 なんか、本当に凄い人ばかり集まってるなぁ……。俺なんかただの田舎出身だ。可愛い妹はいるけど。



「……だけどたぶん、ボクはまだ楽な方」


「なんで?」


「……兄とボクは比べられて、兄ばかり怒られてた」



 リノのお兄さんも嫌だったろうが、リノもそれはそれでキツイものがあるな……。



「……シェリーが冒険者になろうって言って、連れ出してくれた日のことは今でもよく覚えてる。きっと他のみんなも」


「そっか……」



 シェリーさんがこのメンバーを連れ出したのか……。

 もしかしたら俺の時も、シェリーさんのなにかに引っかかるものがあったのかもしれない。それがドМだからじゃないことを祈ろう。



「おいおーい、なにしんみりしてんだよ!」



 そんな台詞と同時に、中庭にメイリーとニーナさんが姿を表す。



「機嫌良いね、メイリー」


「うふふ。おつまみ持ってきましたよ」


「アタシは酒だ! 呑もうぜ!」



 そう言って、俺にグラスを押し付けるメイリー。その手には高そうなワインが握られている。



「まだ夕方なのに……」


「いいんだよ! 今日は初経験の日だ! 無礼講だ!」



 うん、ダンジョンに初挑戦ね。初経験じゃないから。



「……メイリー、ちょっとお酒くさい」


「あら? バレちまったか。あはは」


「既に呑んでるとは……」


「ほら、ダッツくんもどうぞ。リノちゃんは紅茶ね」


「……ちっ」



 あれ、リノいま舌打ちした?



「お前ら、私より先に呑もうとするとは何事か!」


「ニーナー、わたしはジュースー!」



 暴れまわっていた二人が、そう言いながらこっちへ歩いてくる。

 アリアさん、お酒呑めないのね……。



「あっ! メイリー、お前もう呑んでるな!」


「怒るなよシェリー、ほら」



 メイリーはシェリーさんへとグラスを手渡す。



「入れてやるぜ、リーダー」


「む、すまない」



 シェリーさんのグラスへとお酒を注ぐメイリー。それを羨ましそうに見ているリノ。



「ほら、ダッツ。グラスだしな」


「あ、すいません」



 俺のグラスにも注いでくれる。そしてそれを見ているリノ。



「ニーナも、ほら」


「あら。ありがとうね、メイリー」


「……お兄ちゃん、ちょっとだけ。先っちょだけ」


「ダメだ」



 酒に先っちょもナニもない……!



「くぁ~、うまい! そして熱い! アタシも脱ごう!」



 そう言っておもむろに服を脱ぎだすメイリー。



「そうねぇ。どうせ後から脱ぐのだし、わたくしも」



 ニーナさんもそれに続いて服を脱ぎだす。


 大丈夫、もうシェリーさんとアリアさんの下着姿を見てるから、今は耐性がついてる。動じない。動じないぞ……。



「……ボクもぬ――」


「リノはお酒呑んでないでしょ! 脱いじゃいけません!」


「……じゃあ、お酒ちょうだい」


「だめ!」


「……むぅ」



 不機嫌になるリノ。

 それはそれで可愛いが、ほっといてもダメだな。なにか、なにか興味を引く話はないものか……。そうだ!



「リノ、ダンジョンで見せてくれたオリジナル魔法について教えてほしいんだけど……」


「……どうしても?」



 どうしようかなー、という顔で俺をチラチラ見るリノ。



「どうしても……」


「……仕方ない」



 よし、チョロいぞリノ!



「……それじゃ。アレの発想はまず、ボクの実家にあった文献。その文献はダンジョン下層から発見されたモノで文字と絵が記載されたモノだった。文字の方は有名なあの古代文字でまったく解読できなかったんだけど、絵の方はなんとか理解することができた。その絵はおそらく武器の設計図……ううん、考案図みたいなものだった。なんとなくだけど、文献を記した本人は形やその効果だけを知っていて、仕組みを知らない。そんな風にボクには見えた。文字が解読できないから、あくまで絵だけからの想像でしかないけど。そして、その仕組みが詳しく分からないからこのままの再現は無理だなってボクは思ったの。だから、魔法に置き換えてみたんだ。それでも最初は全然うまくいかなくて、何度も構築しなおして。それで、一番近い理論は低級魔法の炎球なんじゃないかって気づいたの。そこから炎球の仕組みを一から見直して、何度も考察と改良を重ねたの。具体的には炎球を発生させるときの魔力量を――」



「もういい! もう充分に分かった!」


「……まだまだこれからだけど?」



 なんで止めるの、という顔で首をかしげるリノ。その動きは可愛いけどこれ以上は俺の頭がおかしくなるから……。



「いや、リノの魔法に対する熱意はすごく伝わったから……」



 俺なんて、低レベルの魔法を少し覚えて満足したってのに。


 まだまだ語り足りないって顔のリノが怖いので、別の誰かに話を振ってなんとか誤魔化そう。



「あ、シェリーさん」


「ん? なんだぁ~、ダッツぅ~?」



 もう酔ってるよこの人!

 なんかこれはこれで、話を振るのが不安だなぁ……。


 しかしリノの魔法談義から逃げるためだ、仕方ない。



「あの、ダンジョンで見せてくれた剣技についてなんですけど」


「んぅ? それがどうかしたのか~?」



 真っ赤な顔で眠たそうにしている表情。正直、少し……。いやいや!



「えぇ、詳しく教えてほしいなぁ~って」


「よし、いいだろう。一度しか教えてやらないからな、よく聞け」



 あれ、素面に戻ったぞ……。



「まず、神斬り・魅理貫流・五織の発祥なのだが。とおい昔、神に――」


「ごめんなさい! もういいですぅ!」


「……これからなんだが?」



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