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スライムを用いたプレイ

「かぃかんっ……!」



 ここはダンジョン二階層、いくつかあるフロアの中の一つ。


 そんなフロアの中心には手甲をつけた右腕を上に突き上げ、プルプルと震えているアリアさんの姿がある。


 10体のゴブリンを二十秒ほどで沈めたアリアさん。

 その力の差は歴然としたものだった。


 ここまで圧倒的だと、それは快感だろうな……。



「あぁ……一歩間違えば、ゴブリンの汚らわしい手がこの身体に触れてしまうかもしれない。それほどの近距離で戦うわたしっ……!」



 ……。



「もし、もしもゴブリンの汚らわしい手が触れてしまったら……。もしもそのまま押し倒されてしまったら……このスリルが快感なのよね……」



 ……。



「はやく次に行きましょう」


「そうだな、さっさといくぞ雌豚」



 そうして、フロアの中心でドМの快感に浸っているアリアさんを置いて先に進む俺たち。



「え、え、ちょっと待ってよ!」


「俺、結局のところこのパーティーで一番危ないのはアリアさんだって気づきました」


「そうだな、あいつはドМの雌豚だからな」



 そうやって他愛もない会話をしながら進むこと少し。



「……お兄ちゃん、階段」



 リノが三階への階段を見つけ、指差す。



「あぁ、もう三階だな」


「……次はボクの出番」



 三階からはリノが戦闘をする。リノは優秀な魔法使いだからな、どれほどのものかすごく楽しみだ……。



 先頭を進むシェリーさんに続いて、三階へ降りていく。



「なんだか、三階も変わんないなぁ」


「まぁ、まだ三階だしね。十階からはちょっと変わってくるよ」


「ふーん、つかダッツ。ちょっとは敬語抜けてきたじゃんか」


「まぁ……」



 気をつけているしね……。



「その調子でお姉ちゃんって呼んでもいいのよ?」



 はいはい。呼ばない、呼ばない。



「……お兄ちゃん、変なのがいる」



 そう言ってリノが指差した場所には、一匹のスライムがいた。


 

「……? 変なのって、ただのスライムだけど」


「……あれがスライム、見たのは初めて」


「私も初めてだ。話には聞いていたが……」


「なんつーか、卑猥な見た目だな」


「そうねぇ。そういうプレイもちょっと興味あるわねぇ」


「そういうプレイ……アレに……」



 そこ、はぁはぁしない!


 それにしてもそっか。スライムはダンジョンにしかいないから俺以外は初めて見たことになるのか……。



「スライム。別名、ダンジョンの掃除屋だな」


「……掃除屋?」


「あぁ。スライムは複数いるのが確認されていて、ダンジョン内を廻ってモンスターの死体や人間の遺体を食っているんだ」


「なるほど。だから今まで、モンスターの残った死体を見なかったのか」


「そうです。モンスターの死体もお金になる部位以外はそのまま放置が基本ですからね……」



 モンスターを倒した後は、お金になる部位だけを切り取って、死体はスライムに食べてもらう。それがダンジョンでの基本だ。



「スライムが人間の遺体を食ってるってことは、人間の遺体も放置が基本ってことかよ」



 メイリーさんが不満そうな顔でそう呟く。



「外だと持ち帰ったり、その場で供養が基本だけどダンジョンではそうもいかないんです。浅い階層なら別だけど」


「浅い階層は別なの? どうしてよ」


「中層以降だと、持ち帰る余裕はないんです。その場で供養しようにも、ダンジョン内の壁は堅い上に再生までする。埋めようもなくて」


「……聞いてはいたけど、ほんとに再生するんだ」



 リノが興味深そうに壁を見つめて、そう言う。



「なんだかそう聞くと、とても怖いモノの中にいる気分だわ……」


「ダッツ、たしかスライムは無視でいいのだよな?」


「えぇ、生きてる存在には反応しませんから」


「ちなみに攻撃したらどうなるのだ?」


「あっさりと死にますよ。ただ、見た目通りお金になる部位もないので意味はないです」


「ふむ、では先に進むとしよう」



 スライムを横目に、通路を進む。


 そして少しすると、広めのフロアに出る。


 そのフロアでは四匹のコボルトがよだれを垂らしながら、俺たちに向かって吠えている。

 コボルトはゴブリンと図体は変わらないが、スピードはゴブリンの二倍ほどある。今は二足歩行だが四足歩行にもなり、そうなると更に速くなって捉えずらい。



「……ボクの出番」



 そう言って前に出るリノ。



「……お兄ちゃんに見せてあげる。ボクのオリジナル魔法」



 オリジナル魔法。


 俺はサブジョブが魔法使いだから、基本的で低レベルな魔法しか習得していない。それ以上は習得しても魔力量が足りず、意味がないからだ。


 メインジョブが魔法使いでその中でも更に優秀な者は、自分で新たな魔法を構築する。それがオリジナル魔法。

 

 魔法の仕組みを組み換えたりするらしいが、俺にはさっぱり……。


 そしてこのオリジナル魔法の強みはその多様性。構築した本人次第で様々な形や効果を発揮する為、あらゆる場面での対応を可能とする。


 そんなオリジナル魔法。それもリノの……。



「……火銃(かじゅう)5%」



 リノが右手の人差し指と親指を立て、そのままコボルトへと人差し指を向ける。



「……発射」



 リノの「発射」と同時に、人差し指から小さな炎が高速で放出されコボルトを貫く。コボルトの貫かれた部分からは煙が出ており、焦げ臭い匂いもただよってきた。



「……火銃(かじゅう)10%……連射」



 今度は連続で小さな炎を放出し、次々とコボルトを撃ちぬいていく。


 あっという間にコボルトを全滅させて戻ってくるリノ。



「リノ、すごいな……」


「……そうでしょ」



 ふふん、と誇らげに胸をはるリノ。しかしその胸は薄い。



「……これ、うちにあった文献から考え出したの」


「いいわよねぇ。わたくしも一度マネしてみようと思ったのだけど、ダメだったのよぉ」


「オリジナル魔法の模倣はかなり厳しいって聞きますしね」


「よし、リノのオリジナル魔法のお披露目も済んだし、はやく四階へと進もう!」



 そう言って腰にある剣を触り、ウズウズしているシェリーさん。

 どうやら自分も戦いたくなったらしい。


 なんだろう、このパーティーは戦闘に積極的な人が多いな……。


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