(2)小学校 17時 PART2
(承前)
ミフユは気取られないように会議室前を足早で通り過ぎると廊下の端にある保健室へと急いだ。あんな様子じゃ私を見たらどんな反応をするか見当がつかない。そういう恐れは感じた。別に自分がやり合うのはいい。恐れてはいない。でも今はミアキを連れ帰ることが大事だから。そう自分に言い聞かせた。
保健室の引き戸をノックした。中から先生らしき大人の声が聞こえた。
「どうぞ」
うれしい事に聞き覚えがある声だった。
「失礼します。古城ミアキの姉なんですが、妹を引き取りにきました」
メガネをかけた40歳ぐらい、中肉中背の白衣姿の女性がいてミフユに中へ入るように手招きした。引き戸をそっと閉めると先生が座られている机の方へ近づいた。
「古城ミフユさん、久しぶりね。私の事は覚えてる?」
「はい。山田先生。小学生の時はお世話になりました」
山田先生はクスクスと笑った。
「お世話なんかしてなかったな。妹さんもそうだけどあなたは元気でしっかり者で怪我もしなかったし。高校の生徒自治会長さんやっていたって妹さんに教えてもらいました。頑張っているのね」
ミフユはすっかり小学生の気分に引き戻された。ミアキがこういう先生に様子を見てもらえていてちょっとホッとした。
「そんなのはたまたまですから。……ひょっとして妹は寝てます?」
先生は頷いた。
「疲れちゃったみたい。家族の人が迎えに来るまで起きて待ってますって言って頑張ってたんだけど」
そういうとベッドがある一角のカーテンをそっと開けてくれた。そこには体を丸めて寝ている子がいた。
「ぐっすりね」
そういうと山田先生は微笑んだ。
「向こうで仕事してるから帰る時に声だけ掛けてくれる?しばらくお休みしてからでもいいし、いつでも連れて帰ってもらって大丈夫だから」
「はい」