(2)小学校 17時 PART1
ミフユは17時前には家に着いた。秋に入った夕暮れ時、気温は下がってきたけど全力で自転車のペダルを漕いだので家に着いた時には汗だくだった。玄関にバッグを置いて身を翻すと家を飛び出して駆け足で小学校へと向かう坂道を下って行った。学校には10分もあれば着く。
ミアキの通う小学校はミフユにとっても母校。小学生の頃の知識で職員室に近い通用門から入った。遠足から戻った後、子どもたちはとっくに帰っていたようで閑散とした校舎で電気の付いてる部屋も限られている。職員室に行くと引き戸をノックして入った。
「こんばんは。加治先生はいらっしゃいますか?」
職員室には何人か先生方がいた。その中の一人、ミフユの知らない若い先生がミフユの方へ来た。
「加治先生は今、席を外してますけど……ひょっとして古城さんのお姉さん?」
ミフユが頷くとその先生は少しミフユの事を見つめた。
「妹さんは保健室なんだけどねえ」
「ありがとうございます。私もここの卒業生なので場所変わってないですよね?」
その先生が何か言いたげだけどミフユは慌てていたのでそのまま職員室を出ると保健室へと急ごうとした。そして職員室の隣の会議室の前を通った時、怒鳴り声が聞こえて来た。
「あの古城さんの妹なんだ。私はあの子の姉にどれだけ酷い目に合わされたか。妹だって同じ事を仕掛けようとしてああ振る舞ったに決まってる」
ミフユは驚いて足を止めた。その声に聞き覚えはあった。ある事で関わりを持った人だった。
職員室から顔を出していた先ほどの先生はその声を聞いて手遅れと悟ったらしくそっと扉を閉めた。