(1)県立中央高 放課後 PART2
(承前)
ミフユは周りを見回した。誰もいなかったけどすぐ廊下の端まで移動するとスマフォを左耳に押し当てた。
「行けるよ。それはいいんだけど、お父さん、ミアキに何かあったの?」
古城家ではメッセでのやりとりが多い。電話でしかも冷静な父が慌ててるだなんて何かあったに決まっている。
父の説明は次のような話だった。遠足先でミアキがクラスメイトと喧嘩になって大人も巻き込んでの騒動になったらしく両親に呼び出しの連絡が入った事。母は学校の会議があってすぐ動けない。父も仕事だったけど少し早く都合がつきそうなので父が行く事になったものの18時を回りそうで学校での話も長引くと思うのでミアキを先に連れて帰って欲しい。そういう話だった。
「分かった。小学校に行ってミアキは引き取って帰るから」
「担任の先生は加治さんって言うそうだから」
お父さんの声は冷静そうに聞こえたけどいつもより体温の低そうな声は普段の父からは想像のできないものがあった。
「加治先生ね。分かった。じゃあ、ミアキ引き取ったら連絡するから」
お父さんのミアキに対する心配性に付き合うと自分の不安が増幅されそうだったから強引に電話を切った。迎えに行けば帰れるならそこまでは心配しないでいいとは思ったし。そうやって不安な心理を押さえ込んだ。
ミアキに何があったのかと考え込んだが答えは出なかった。ミアキが通っている小学校はミフユの母校でもある。加治先生という名前はこの時点では心当たりはなかった。
ミフユは図書室の閲覧席に戻ると参考書とかバッグにさっと突っ込んだ。
カウンターの前を通りかかると図書委員長で2年生の葭田さんが入っていて声を掛けられた。
「あれ、古城先輩、今日はもうお帰りですか?」
「ちょっとね。用事が出来たから。あ、葭田さん」
気になった事があったので葭田さんに言うと察しのいい子なのですぐ確認して先生にも報告しますと言ってくれた。
図書室を一歩出るとミフユは猛然と自転車置き場へと向かった。妹を連れ帰るには自転車は邪魔だ。一度家に自転車を置いてすぐ小学校に向かわなければ。