(4)7年前の回想 ミフユ PART3
(承前)
中央の席に座っていたミフユは思い切って手を挙げた。少し周りがざわめいた。
「私も立候補したいんですけど」
近江先生はミフユを睨むと口を挟んだ。
「古城さんだったかな。5年生はダメだから」
そういって立候補を却下した。先生の想像もできない態度に教室は静まりかえった。
近江先生は竹田くんを通じて思いのままに事を運んだ。
「テーマだけどJR南武線の歴史を調べたいという案を考えてますが意見はありますか?」
教壇から会長の竹田くんが言った。後ろの方に座っていた5年生の男子が手を挙げた。吉川裕くんだったかな。2組の子だ。
「向ケ丘にある城址なんかダメですか?」
竹田くんは答えに困って近江先生の方を見た。近江先生はそれを受けてその男子を見た。
「あまり古いと図書館で調べて紙に書いて終わりになっちゃうだろ。南武線は大正ぐらいからのものだから調べやすい。人に話を聞く機会とかあるかもしれない」
吉川くんはあっさり手を下ろすと「わかりました、先生」と言って意見を引っ込めた。ミフユが吉川くんの方を見ているとミフユの方を見つめ返して一瞬肩をすくめて座った。
こうしてJR南武線の歴史を調べてまとめるというテーマが決定された。もはや誰も異論を言う気にはなれなかった。




