僕のお爺ちゃんがぶっ飛んでる件
僕のお爺ちゃんはとにかく激しい。中学の時から酒を飲み始め、野球部の試合では内野フライだと思ってボーッとしていたら外野で守っている自分の頭に降ってきたとか言うし、公務員になろうとする僕の親父を”公務員なんかつまらん”とフリーターを推奨したり(もちろん親父は反対した)、せっかく孫である僕が泊まりに行っているのに競馬や競輪に行くからと留守番をさせたり、ハチャメチャなのです。
そんなお爺ちゃんも80を超えて体も弱くなり、つい数年前も心臓病を患いました。手術のために緊急入院が必要だからとおばあちゃんがせっせといろいろ準備している最中、ベッドで寝転びながらラジオから流れる競馬にしか聞き耳を持たないお爺ちゃん。手術当日も家族で見舞いに行って心配したけど、麻酔から覚めた途端に行った一言は“もう終わりか。スリルがないのぅ、スリルが”。こんなだからおばあちゃんも呆れてものが言えません。ほんとに心臓が悪いのかねぇと諦め笑いするしかありません。
しかしこんなとき、事件がおきます。
お爺ちゃんが病院を脱走したそうです。
看護婦さんが慌てて親父のところに電話してきて、親父もびっくり。そんな親父に僕も僕の家族も全員びっくり。親父は慌てておばあちゃんに電話しました。するとおばあちゃんも電話が繋がりません。こんなときに何してるんだ、親父はそう吠えて落ち着かない様子。
しかししばらくすると、一本の電話が親父のもとに届きました。電話をしてきたのはなんとお爺ちゃん。そのお爺ちゃんに何をしていたのか聞くと、興奮した様子でこう応えたそうです。
「ゴーカートに乗っとったんじゃ!」
なんとお爺ちゃん、心臓の手術の次の日に、スリルを味わいたくておばあちゃんとゴーカートに乗りに行っていたそうです。いや、おばあちゃんもおばあちゃんだよ!
結局、その日は親父が車で二人を病院まで連れて帰り、若い看護婦さんにお爺ちゃんおばあちゃんとともに怒られたんだとさ。
翌日、そんなお爺ちゃんのもとに家族みんなでお見舞いに。というか脱走しないかどうか見張りに。
そこでおじいちゃんが言ってくれたことがこちら。
「あののぅ、人生はのぅ、ごーいんぐ・まいうえいなんじゃ。ごーいんぐ・まいうえい。のぅ」
いやぁ、実にお爺ちゃんらしい。
そんなお爺ちゃん、明日もまた競馬にボートに忙しいようです。
いつまでも激しく我が道を行ってほしいものです。怒られない程度に。