神界→ユピテリア→王都
こんにちは、狩野理穂です。
今回の話は、移動します。いや、本当に移動するんです。まあ読んでもらったらわかりますが……
余談ではありますが、オリンポスクエストは自分が学校の部誌に載せるために書いた作品なんですよ。予想以上に長くなったせいでネットにも挙げられるようになったのですが……
それでも当時書きたかったものよりはかなり短くなっているものをほぼそのまま挙げているので違和感や説明不足があると思います。どうしても表現にしっくりこない場所がありましたら感想やtwitter(@PR92382847)のDMに書き込んでくだされば迅速な加筆を行います。
それでは、ルーシュの大移動、どうぞ!
~神界~
突然、目の前が明るくなった。
「ここが神界か──」
目の前に大きな神殿がある。ってことは、ここがオリンポスか。
ついこの間まで神とかを信じていなかった身としては、なんだか笑えてくる。一気に色んなことが起こりすぎだ。
その時、神殿から誰かが出てきた。片手には、地球儀のようなものを持っている。
全身が痺れるような感覚に襲われる。この感覚は──
「おい。お前がゼウスか?」
俺は声をかけてみる。
「近頃の人間は神にまで無礼な口をきくのか。"掃除"を強化してやろうか」
ヤバい。質問には答えてもらってないけど分かる。コイツがゼウスだ。コイツが一言話す度に髪が逆立ちそうになる。
「ああ。お前か、無礼者。お前の信仰心をあげるために助けたら、調子に乗りやがって。あの村も、もう終わりだな」
そう言って、指を鳴らすゼウス。糸でもついてるかのように、ケラウノスがゼウスの手に渡る。
一瞬、地球儀が光った。
ユピテリアの辺りが黒く焦げている。
「残念だったな。あの村一帯は今、滅んだ」
それが脅しや挑発でないことはすぐわかった。そんなことをしても、ゼウスの利益は少ないだろう。
俺は、村や母さんがいなくなるのをただ見ているしかなかったのだ。
「人間。この神界にお前は不必要だ。身の程にあった場所に返してやる」
床が消えた。遠くに黒く焦げた地面が見える。神界は天空に──俺の村の真上にあったのだ。
当然のごとく、俺は落ちる。残念なことに俺は空を飛べない。それなのになぜか俺は落ち着いていた。
「ケラウノス!」
ケラウノスはゼウスに取られた。だが、それはゼウスの意思だ。村長が言うには、俺はケラウノスにも選ばれている。ケラウノスは来てくれるはずだ!
……来ないよなぁ。
今までも、切羽詰まった時に来なかったなぁ。
タルタロスでは終わりがなかったからよかったけど、もうすぐ地面だよ。
もう、家の燃えカスまで見えてきた。
──死ぬ!
そう思った時だった。落下が止まった。
恐る恐る目を開けると2人の、ユピテリアの人が陣を作って念じていた。
「ラズさん!メイさん!」
彼女たちがゆっくりおろしてくれる。
「なんで2人は生きてるんですか?」
メイさんがほほえみ、俺の後ろを指さす。
俺が振り返ると──
「母……さん」
そこには、俺の母さんの姿があった。それだけではない。村長も──他のみんなもいる。
「なんで……どうして……」
村長が口を開く。
「お前の母さんのおかげだ。あの人は異界と交信できる。お前の神界での話を聞いていたのだ。そこからは簡単。空間移動の能力を使える人で全員を村の外に出せばいい」
なるほど。そうだったのか。
ケラウノスは無くなったけど、皆が無事で本当に良かった。
「よし。俺も復興を手伝うよ。早く元の村に戻そう」
村長が首を横に振る。
「ルーシュ。他にもまだ、やることがあるのではないか?」
その言葉を聞いて思い出した。王に確認することがある。
「俺、王都に行かなきゃなんないんだ。飛ばしてくれないか」
「そういう時はおいらの出番だろ。まだ力は残ってるぜ」
大工のリンダさんがでてきた。後で聞いたことだが、リンダさんは自分以外のものを瞬間移動させることができるらしい。
「玉座の間にお願いしたいんですが、大丈夫ですか?」
「おいらを誰だと思ってやがる。一瞬でスカした王サマの前に送ってやる」
そう言って指を鳴らすラルズさん。
俺の身体が浮き、景色が流れる。草原を通り、森を抜け、壁を通り抜ける。
気がつくと、俺は玉座の前にいた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
次回投稿は11/16(金)です。
第一部終了まであと二話!