王都地下
こんばんは、狩野理穂です。
先に言っておきますと、今回は少し中だるみ回になっています。
しかしこの章の根幹となりますので、読んでいただければと思います。
~???~
暗闇の中を落ちていく。
風の感覚も薄れ、落ちているのか、浮いているのかも分からない。
まるで、自分がこの世界に溶け込んでいるかのようだ。
「もう……いいか」
口に出すと、急に気が楽になった。
そもそもこの旅自体、出たくて出たわけじゃない。よく分からないまま出ただけだ。
諸悪の根源とか言ってたけど、ここに来るまで怪物の影すら見ていない。ケラウノスすらしばらく手にしてない。
……ケラウノス?
あれを最初に持った時、体が浮いた。もしかしたら、あの力でここから出られるかもしれない。
──ケラウノス!
……来ない。
やっぱり、あんな都合のいいものは無いのか。
しかし、ここはどこなんだろう。
クソ……!こんなことなら、しっかり本を読んでおくんだった。今更ながら、自分の頭の悪さに腹が立つ!
頭を働かせろ、ルーシュ!
そうだ……。王都エリュシオンは、たしか理想郷のはず。そんな場所の真下にこんな空間があるはずない。
まだおかしいところはある。俺はどのくらい落ちている?測ってはいないが、1分や2分ではない。明らかにおかしいだろ!
理想郷の下にこんな場所があるなんてな。反吐が出そうだ。
……理想郷?俺は17年しか生きていないが、この世界にプラスだけってことがないのは知っている。どこかにはマイナスがあるはずだ。
そのマイナスがここなんだろうが、それはここの話。
王が言っていたが、エリュシオンは冥府の世界だ。つまり、そっちにもマイナスの面があるはず。それはたしか──タルタロス。そうよばれていたはずだ。そこは人類の苦痛で満ち溢れていると言われていたはず。
人類にとって最大の苦痛は何か。永久に痛みつけられることか?いや、違う。
人間は常にものを考え、刺激を受け、真理を追求しようとする存在。そんな生物への苦痛は「退屈」。
でも、人間にそんなものが作れるはずがない。出来ても、「それ」と空間を繋げるくらいだろう。
つまり、ここは本物のタルタロスで、玉座の間と繋がっていることになる。
他にもまだ、王に確認しなければならないことがある。
ここまで考えた時、上空にきらりと光るものが見えた。
それが何かは見えなかったが、数秒後にはそれは俺にも姿がわかるほど近くなっていた。
「ケラウノスか!」
そう。それは、紛れもなく雷槍ケラウノスの姿だった。時間はかかっても、主である俺のところに来てくれたのだ。
少しずつスピードを緩めたケラウノスを俺は掴む。今度は、全身が痺れるような感覚はない。
「よし、行くぞ!」
そういった途端、雷槍は稲妻のようなスピードで天空へ昇りはじめた。
このまま戻ってやる!──だが、その余裕は数分後には無くなっていた。
出口がないのだ。入ってきたはずの穴がない。
まだ何か足りないのか?考え方はあっているはずなのに……。
そうか。考え方があっているなら、ここは死後の世界。現世と繋がる時間が長かったら、大変なことになる。
それなら、どうやって出れば……。
ここは来世。そして、俺が行きたいのは現世。そこの境目は、神界。
そんなもの、到底あるとは思えないが、タルタロスだってあるんだ。神界もあるかもしれない。
「ケラウノス、神界に行けるか?」
ケラウノスが頷いた気がした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
次回投稿は13日の火曜日です。(13日の~と打って、金曜日と書きたくなってしまいました)
もうすぐ第一部が終了します。ぜひ最後までよろしくお願いします。