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Olympus Quest  作者: 狩野理穂
Olympus Quest 2
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イザナミとニュクスとイザナギと

どうも、狩野理穂です。

今回はイザナミの過去編になります。

twitterでは「シリアス展開だとブクマ外される~」とおっしゃっている方をよく見かけますが、自分はブクマ0件なのでそんな心配は杞憂なんですよ(偏屈だと自覚はしています)

それでは、多少のシリアスを含む過去編、どうぞ!

 私が現役だった頃、私の仕事は日本を創造することでした。当時は全てが混沌としていましたが、既に「空間」「大地」「昼」「夜」の要素は存在していました。

 それが遠い欧州の神々による行為とも知らず、私とイザナギは日本を創りました。その時には、もう、日本にガイアの親子が入っていたのです。

 それからしばらく経ち、私は死にました。ええ。神は、寿命で死ぬことも、外部からの攻撃で死ぬこともありません。しかし、私は内側から燃えていったのです。さすがの私も、死にましたね。

 基本的に、冥界に出入りできる神は限られているんです。私のように死んだ神の他には、冥界で生まれた者と、使命を与えられた者だけです。自分の力だけで来るのは、殆ど不可能でしょう。それでも、我が夫は私を迎えに来てくれたのです。

 それなのに、酷いです。彼は、私の姿を見て逃げ出したんですよ!まあ、当時の私の格好は酷いものでした。それでも、姿を問わずに愛し合うのが夫婦というものでしょう!

 ……失礼。少々取り乱しました。イザナギが逃げた後、私は独り、絶望の真っ只中にいました。自分に自信が持てず、死後の世界でも存在価値がないと思っていたのです。そんな時に声をかけてきたのがニュクスです。彼は、元の姿でイザナギに会いたくないか、と誘ってきたのです。

 自分に自信が持てなかった私は、彼の誘いを断りました。それでも、ニュクスは何度も私の所へ来ました。夜の神ともあれば、冥界に来るのなんて簡単なものなのでしょう。大丈夫、自信を持て……幾つもの誉め言葉に、私の心はいつしか陥落していました。そして、彼の誘いに乗ってしまったのです。「一日だけ、東京タワーで行われている古事記展でイザナギと会える」と……

 しかし、それは失敗に終わりました。古事記展に来た彼は私に「つまらない悪戯はやめろ。愛する妻は死んだのだ」と言い放ったのです。泣き崩れた私に、ニュクスは言いました。


「イザナギは変わった。貴方は何も変わっていない。ならば、貴方も変わってしまえばいい」


 冷静な判断ができなかった私は、再びニュクスの誘いに乗りました。私は、現世の東京タワーに拘束されたのです。

 最初は、喜びました。「私は生き返り、またイザナギと一緒になれる」と。

 私が間違いに気づいたのは、生き返ってから10年ほど経った時でした。死者の国に戻ることもなく、誰とも話せずに一人ぼっち。時の流れはゆっくり進み、私は孤独でした。ニュクスに恨みを抱き始めた時、とある人物が話しかけてきたのです。それは、イザナギでした。


「もう見ていられない。君が変わろうと、僕の想いは何も変わらない。君は、僕の前から去ったんだ。自分の国に帰ってくれ」


 私は悟りました。ニュクスは、私を騙していたのです。

 イザナギは言いました。


「君を騙すような人がいれば、それは何かの利を求めた者だ。心当たりはないか?」


 心当たり。死者の国には、幾つかの道具がありました。それらは全て、死を操るものでした。


「でも、イザナギ。道具は全部、宝物庫で護られているわ」

「考えてみたまえ、イザナミ。王である君がいなければ、死者の守りは紙にも劣る」


 死者は、所詮エネルギー体。いくらエネルギーがあっても、それを使う人がいなければ意味が無いのです。


「イザナミ。よく聞いてくれ。一つだけ方法がある」


 イザナギが言いました。


「僕が死者の国に行こう」

「そんなこと、貴方にさせられない!」

「落ち着け、イザナミ。君はニュクスとの契約により、そこへ行くことが出来ない。更に、僕は一度行ったことがある。僕以上の適任者は居ないだろう?」

「でも……!」

「待っていてくれ。僕は、もう一度ここに来よう」


 私が止める暇もなく、彼は行ってしまいました。

 そして、数日後。私の所にニュクスが来ました。


「可哀想なご婦人よ。貴女の希望は消え去った」


 ニュクスは、大怪我をしていました。イザナギと争ったのでしょう。そして、ニュクスがここに居る。示される事実は、一つしかありません。

 私は、泣きました。何日も、何ヶ月も、何年も泣き続けました。


「奴は忌々しかったよ。国を作った程度の神で、俺を追い払いやがった。──自分の命と引き換えにな」


 神は、初期に戻るほど強くなる。そんな神達に勝つには、よっぽど強い念が必要。それを踏まえて、イザナギは適任者と言ったのです。

 愛は何物にも勝ると言いますが、そんなものはまやかしでした。イザナギは、ニュクスに敗けたのです。


「そこで指を齧って見ていろ」


 ニュクスは、そう言い残して私の前からいなくなりました。

 それからしばらくして、死者の使者が来ました。案の定ニュクスは宝物庫に入り、様々な神器を盗みました。残っていたのは、イザナギが命を賭して護り抜いた聖杯のみ──

 それを嘆いていたときに、貴方が来たんです。

次から佳境に入るはずです。

次回投稿は12/11(火) ダースの日の前日です!

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