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Olympus Quest  作者: 狩野理穂
Olympus Quest 2
10/34

イザナミ

どうも、狩野理穂です。

今回の話は(ヘタな)戦闘ですね。

ここで、近況です!現在「Olympus Quest ver.GAMEBOOK」を製作中です!いまのところアルファポリス様で投稿予定ですが、なろうでも検討中です。先日書いた〝第二部の後の空白”に投稿するつもりです。

それはともかく本編をどうぞ!

 ああ、俺はバカだったよ。トウキョウタワーに入るまではよかったんだ。ただ、一つだけ忘れていた。

 ここの言葉がわからない。

 探すものがわかっても、それをなんと言うのかがわからない限り意味は無い。


「なにかお探しですか?」


 突然、和装の女性に話しかけられた。


「古事記展って、どこでやってるんですか」


 俺がそう訊くと、その女性は満面の笑みで答えた。


「古事記展!懐かしい響きですね!」


 懐かしい?いまやっているんじゃないのか?


「ああ……本当に懐かしい。あの人との大切な約束を思い出す。──残酷な裏切りとともに」


 女性は、俺のことが目に入っていないかのように話す。


「あの……古事記展は……」

「その特殊仕様の携帯電話に、身にまとう夜の匂い。貴方はニュクスの使いですね!」


 女性は、眼を三日月のように細めて嗤い、帯から20センチ程の小刀を出した。鋭い刃が黒光りしている。


「復讐の機会をずっと待っていた……」


 ヤバい。この眼は本気だ。

 殺される前に、殺せ。本能が呼びかけてくるが、とてもそんな気になれない。


「裏切りとか復讐って、なんの事だ」

「演技がお上手ですね。全てを知っているのに、それを感じさせない」

「違う!……確かに、ニュクスに言われてここに来たけど、あなたのことは何も聞いていない!」

「その言葉が本当か……戦えばわかります」


 そう言って、短刀を片手に走ってくる女性。俺は間一髪で避ける。

 この速さ。間違いない。この人は、神だ。


「何をしているのですか!左のポケット中のものを出し、戦いなさい!」


 俺の左ポケットには、ケラウノスの模造品が入っている。模造品とはいえ、普通の槍とは比べ物にならない強さはある。

 だが、俺はこの女神を傷つけたくない。この女神からは、とても深い悲しみを感じる。


「さあ、早く!」


 そう話しながらも、女神はスピードを緩めない。着物とは思えない速さだ。とても止められそうにない。

 クソ!一体どうすれば……。

 ──急に、女性が動きを止めた。何をするつもりだ?


「ダメね。貴方と戦っても、面白くない。ニュクスのように狡猾でもなく、イザナギのように逃げもしない。こんなつまらないモノ……終わりにしましょう」


 滑るように、女神が俺に近づく。これまでとは比べ物にならない速さだ。


「また……向こうで」


 そう聞こえた気がした。

 ケラウノスを取り出す間もなく、腹部に鋭い痛みが走る。


「ぐっ……」


 患部が燃えているかのように熱い。

 鮮血が飛び散り、床に紅い紋様を作りだす。

 次第に意識が朦朧とし、視界が暗く──



意識が覚醒する。辺りは薄暗く、どうやら荒野のようだ。


「お目覚めですか」


 背後からの声に振り返ると、あの女神がいた。

 そうだ。確か、俺は腹を切られたはず──


「傷痕が……ない」


 確かにシャツは切り裂かれているのだが、俺の腹部には一筋の線も見当たらなかった。


「私はイザナミ。ここは、死者の国です」


 女神──イザナミが口を開いた。


「俺は、死んだのか」

「はい。私が殺しました」

「何故、殺した」

「ここに来てもらう必要があったからです」

「どうして、ここへ」

「ニュクスの件です」


 !


「ご存知の通り、ニュクスやへーメラは心を読めます。それ故に、彼らに聞かれたくない話はここーー冥界でするのが最適解なのです」

「そんな話はどうでもいい。早く聖杯をくれよ」


 諸悪の根源であるカオスは、刻一刻と強くなっているらしい。手遅れになる前に、聖杯をガイアまで届けないと。


「焦らないで。ここは現世とは時の流れが違います。いくら時間がかかろうと、元の場所、時代に戻れます」


 それでも、納得出来ない。

 イザナミにそう言うと、彼女は短刀を取り出した。


「人間界や神界で息絶えたら、この場所に辿り着けます。しかし、冥界で殺された場合──」

「……どうなるんだ」

「さあ。前例がないので、なんとも言えません」


 どうやら、選択肢はひとつのようだ。


「ニュクスの過去を、聞かせてくれ」


 イザナミは、にっこりと微笑んだ。

次回は冥界編です。誤字・脱字報告お願いします!

次回投稿は12/7(金)です。

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