イザナミ
どうも、狩野理穂です。
今回の話は(ヘタな)戦闘ですね。
ここで、近況です!現在「Olympus Quest ver.GAMEBOOK」を製作中です!いまのところアルファポリス様で投稿予定ですが、なろうでも検討中です。先日書いた〝第二部の後の空白”に投稿するつもりです。
それはともかく本編をどうぞ!
ああ、俺はバカだったよ。トウキョウタワーに入るまではよかったんだ。ただ、一つだけ忘れていた。
ここの言葉がわからない。
探すものがわかっても、それをなんと言うのかがわからない限り意味は無い。
「なにかお探しですか?」
突然、和装の女性に話しかけられた。
「古事記展って、どこでやってるんですか」
俺がそう訊くと、その女性は満面の笑みで答えた。
「古事記展!懐かしい響きですね!」
懐かしい?いまやっているんじゃないのか?
「ああ……本当に懐かしい。あの人との大切な約束を思い出す。──残酷な裏切りとともに」
女性は、俺のことが目に入っていないかのように話す。
「あの……古事記展は……」
「その特殊仕様の携帯電話に、身にまとう夜の匂い。貴方はニュクスの使いですね!」
女性は、眼を三日月のように細めて嗤い、帯から20センチ程の小刀を出した。鋭い刃が黒光りしている。
「復讐の機会をずっと待っていた……」
ヤバい。この眼は本気だ。
殺される前に、殺せ。本能が呼びかけてくるが、とてもそんな気になれない。
「裏切りとか復讐って、なんの事だ」
「演技がお上手ですね。全てを知っているのに、それを感じさせない」
「違う!……確かに、ニュクスに言われてここに来たけど、あなたのことは何も聞いていない!」
「その言葉が本当か……戦えばわかります」
そう言って、短刀を片手に走ってくる女性。俺は間一髪で避ける。
この速さ。間違いない。この人は、神だ。
「何をしているのですか!左のポケット中のものを出し、戦いなさい!」
俺の左ポケットには、ケラウノスの模造品が入っている。模造品とはいえ、普通の槍とは比べ物にならない強さはある。
だが、俺はこの女神を傷つけたくない。この女神からは、とても深い悲しみを感じる。
「さあ、早く!」
そう話しながらも、女神はスピードを緩めない。着物とは思えない速さだ。とても止められそうにない。
クソ!一体どうすれば……。
──急に、女性が動きを止めた。何をするつもりだ?
「ダメね。貴方と戦っても、面白くない。ニュクスのように狡猾でもなく、イザナギのように逃げもしない。こんなつまらないモノ……終わりにしましょう」
滑るように、女神が俺に近づく。これまでとは比べ物にならない速さだ。
「また……向こうで」
そう聞こえた気がした。
ケラウノスを取り出す間もなく、腹部に鋭い痛みが走る。
「ぐっ……」
患部が燃えているかのように熱い。
鮮血が飛び散り、床に紅い紋様を作りだす。
次第に意識が朦朧とし、視界が暗く──
意識が覚醒する。辺りは薄暗く、どうやら荒野のようだ。
「お目覚めですか」
背後からの声に振り返ると、あの女神がいた。
そうだ。確か、俺は腹を切られたはず──
「傷痕が……ない」
確かにシャツは切り裂かれているのだが、俺の腹部には一筋の線も見当たらなかった。
「私はイザナミ。ここは、死者の国です」
女神──イザナミが口を開いた。
「俺は、死んだのか」
「はい。私が殺しました」
「何故、殺した」
「ここに来てもらう必要があったからです」
「どうして、ここへ」
「ニュクスの件です」
!
「ご存知の通り、ニュクスやへーメラは心を読めます。それ故に、彼らに聞かれたくない話はここーー冥界でするのが最適解なのです」
「そんな話はどうでもいい。早く聖杯をくれよ」
諸悪の根源であるカオスは、刻一刻と強くなっているらしい。手遅れになる前に、聖杯をガイアまで届けないと。
「焦らないで。ここは現世とは時の流れが違います。いくら時間がかかろうと、元の場所、時代に戻れます」
それでも、納得出来ない。
イザナミにそう言うと、彼女は短刀を取り出した。
「人間界や神界で息絶えたら、この場所に辿り着けます。しかし、冥界で殺された場合──」
「……どうなるんだ」
「さあ。前例がないので、なんとも言えません」
どうやら、選択肢はひとつのようだ。
「ニュクスの過去を、聞かせてくれ」
イザナミは、にっこりと微笑んだ。
次回は冥界編です。誤字・脱字報告お願いします!
次回投稿は12/7(金)です。




