4話 フレンドリー
sideツムギ
人里の中を歩くこと数分、とある大きな通りへと出た。私の行きつけの店が立ち並ぶ、明るい商店街だ。私のような幼い子供が一人で、かなり特殊と言えるような店をやっているということもあり、顔を覚え、色々と恵んでくれる優しい人も多い。そのおかげで私は生活できているといえるだろう。
米、果物、大好物の野菜などを買い込み、お菓子や飲み物を分けてもらい、そろそろ帰ろうか……と思っていた矢先。後ろから、声をかけられた。
「ツムギか。」
照りつける太陽で、顔がうまく見えなかったが、この声の持ち主は決まっていた。
「慧音さん。こんにちは。」
「あぁ、こんにちは。」
人里の管理、そして寺子屋の教師をしているこの人、上白沢慧音さんは、私の店にもよく来てくれるお客さんでもあり……色々と生活を助けてもらっている恩人でもある。しかし、私はこの人が少し苦手だ。なぜなら……
「それで?寺子屋には来る気になったか?」
「なりませんってば。」
そう。この人は、私のことをしつこく寺子屋に来るように誘ってくるのだ。まぁ確かに私みたいな幼子は、寺子屋で勉強するのが普通だと思うのだが……
「お金も払えないですし、なにより私の店なら特に知識もなくやっていけますから。」
「お金のことならどうでもいい。一般的な教養くらいもっていたほうがいいだろう?」
「……そうですが……。」
そう言われると言い返せないところがある。
「お嫁に行けんぞ。」
「!?そ、それは……っ!」
思わず動揺してしまったが、考えてみると確かにそうだ……大分先の話とはいえ、何も知らない人と一生を過ごしたいと思う男の人は少ないだろう。そう考えるとやはり行っておいた方がいいのか……
むむ……と、顔を難しくして考え込む私を、笑いながら眺める慧音さん。狙ったように、
「なら、一日だけ来てみるといい。楽しいものだぞ。」
と。そこまで言われてしまうと行かないわけにはいかなくなってきてしまう。それに、行くと言わないとこの問答は終わらないだろう。そう判断した私は、分かりましたよ!と軽く投げやりに返事をした。
どうやら、忙しくなりそうだ。でもそれも、悪く無いかも。