醒めない悪夢(笑)
本当は真面目な作品を書こうと思っていたんです。文学フリマだかに出したいなと。
なのに一体どうしてこうなった。
たぶん間違いなくコメディーもの。
しかもかなり特殊。
一体どうしてこうなった。
ガンガンと頭に響く重い音を立てて、僕らの部屋のドアが叩かれる。
起床の時刻だ。正しくは朝食の時間である。
「ぅう~~~っ」
「もう朝ぁ~?………ぅぐう」
「…起こすか」
「朝食?もうそんな時間なんだ」
二人は既に起きて着替えている。僕はベッドに別れを告げて体を起こした。一人はそのままベッドに倒れ込む。再突入である。れっつごー。
「馬鹿やってないでさっさと飯行くぞ」
「ぎゃん!」
「いやん」
既に再突入していた三鷹と、しようとしていた僕まで殴られた。だけど三鷹はついでに布団まで剥かれていた。いい気味だ。
「葉嶋のえっち」
「全裸にして海に放り出したろか」
「きゃーへんたーい」
三鷹が気を引いている内に僕は布団に潜って着替える。
このセーラー服にはスカートが1番だとか言うのは東名軍曹と羽柴曹長の口癖なのだが、幸いなことに僕らは履かされていない。すり替えられたことはあるが。
しかも奴らは僕をよく見てくる。怖い。
なんであんなのが上司なんだろう。
「……こ、のっ」
「はいちょっと待ってー落ち着け-?」
プルプル震える葉嶋を後ろから羽交い締めにしてるらしい久賀。
マッチョに細マッチョが後ろから抱きついてる絵面になっているだろう。うわ、吐きそう。
「久賀クンすてきーほれるわー」
「「死ねっ」」
三鷹は人から注目される天才だ。自然体で人の関心を買う。
彼曰く
「あいつら根が素直で可愛すぎだわー。いやほんと、白を見ると灰も黒も一緒に見えるわー。ね、古﨑クン」
とのことで。
自然体でお偉いさんと話した時との反応の差が癖になるそう。
癖になるってなんだ。
まぁいい。今のうちに僕は寝るとしよう。
ズボンを履いてっと───
唐突に視界が明るくなる。
見上げると剥かれた布団を掴むゴツい腕とゴツい奴が見えた。
葉嶋だ。
「おい!古﨑お前も寝てんな───。な、なんかエロいぞお前?」
「縞パンかんわいいねー」
可愛いってなんでだ男のパンツだぞ。
「……そろそろ飯行かないとやばいよ」
「死ねっ、三鷹!」
「僕ぅ!?」
「もう行くぞ」
「おう」
「…よし、履けた。行こっか」
「あ、待って!まだ着替えてない!」
「裸で来れば?」
「飯抜きでいいだろ」
「寝てていいよ」
ガコンと扉を閉める。中で何か叫んでいるが気のせいだろう。
「今日は確か……金曜だからカレーか」
「お、やった」
「えぇー……、食べきれるかなぁ」
「大丈夫だ。お前が残したら軍曹が食ってくれる」
「食べきれないくらいの大盛りにしてくるの止めて欲しいんだけど……」
「まぁ、東名さんも羽柴さんも古﨑のこと好きだからな」
「これセクハラで訴えられないかな」
「パワハラじゃないと厳しいな……」
「もぉやだ、家に帰る」
「あはは、一線は越えて来ないんだから、もうちょっと頑張ってみない、古﨑?無理にとは言わないけどさ」
*****
犯人達
( 東名)<古﨑かわいいな、スカート似合うだろ
( 羽柴)<虐めたくなる、涙目で食べるの可愛い過ぎ
( 東名)<あ、残したの貰いますね
*****
泣きながらカレーを食べる。
「………もぉやら」
「な、なぁ、一口だけ貰ってもいいか?あ、一口交換でもいいからな!いっそのことこっちの明らかに普通のカレーと交換するか?」
「大盛りでないけど………赤すぎだろこれ。古﨑、お前無理して食う必要ないんだぞ?」
「古﨑クン、ユーの上司の面にご馳走してあげなよこれ。泣いて喜ぶよきっと」
仲間の思いやりに涙が出る。
いや、もう、これどうやって作ったのってレベルなんだけど。中国料理で出てきそうなラー油っぽい赤が埋め尽くして地獄の窯みたいになってる。
とりあえず葉嶋のカレーを貰って三鷹に自分のを渡す。
自分のスプーンで葉嶋のから一口食べてみた。
飲み込んでから一言。
「あいひない、ひみるあえ」(味しない、しみるだけ)
「うん、訴えても勝てるんじゃないかなと思うけどどうする?」
「お前ちょっと舌出して」
「ちょっとお冷やおかわり貰ってくるねー」
顎を掴まれ舌を葉嶋に見せながら、横目で上司どもを探す。
羽柴がいた。
ぎろっと睨んでいたらこっちを向いた。
うわ、あいつほっぺ赤く染めやがった。耳も赤い。
キメェ!!!
うわ、急に笑顔になった!
こわっ、えっちょっ怖すぎっ!
「はいこれお冷や。ちょっとこれ羽柴に届けてくるね、速達で」
コトンと僕の前にお冷やを置いて、赤くて普通の3倍以上の辛さのカレーをスタンバイする三鷹。
感動した。
こいつこんな良い奴だったんだ。
知らなかった。知ったところで何もないけど。
まあ、お礼は言っとこう。
「あいあぉう」(ありがとう)
「あ、じゃあ部屋にスカートあるからそっちは東名に届けといてくれる?」
「さて、俺は帰ったら古﨑の報告書と三鷹の始末書でも書くか」
「おっけーおっけー任せとけー」
いつもより行動力あるのは気のせいだろうか。
目の錯覚かもしれない。すっと目を閉じてみる。
自己の内面世界を見るのだ。
視覚を閉ざすことで他の五感はより鋭敏となる。
辛い。
痛い。
辛い辛い痛い辛いぃぃぃいいぃいいいいっ!!!
現実だ。紛れもない悪夢だ。ふざけんな。
何とも馬鹿なことに自爆した。
「ど、どうした?急に涙目になって」
「古﨑?……ああ、別に何もしないぞ?負い目があるってんなら、そうだな。貸し1つだ」
久賀、それは深読みだ。僕は何の負い目も感じちゃいない。お礼くらいは言うつもりだが。強いて言うなら違和感を感じている。
あと勝手に貸しにすんな。
あ、なんか負けた主人公っぽいぞ今の。
うん。カレーに負けたけど、何か?
うわっ……雑魚ッ、自分で言っといてなんだけど、雑魚過ぎる。
なんか嫌になった。
「もうやら、おうぃはえる」(もうやだ、お家帰る)
「そ、そうか………すまなかったな」
「どうしてもって言うなら………俺たちに止める権利はないな。でもさ、俺らが帰ってきたときにでも、どっかで遊びに行かない?」
葉嶋、なぜ謝る。
そして久賀、お前はどこのプレイボーイだ?
そうやって学生の時とか誑かしてたんだろ畜生!
僕もやれば良かった!
「俺さ、お前に我慢させ過ぎたけど、友達でいたいからさ」
「ほも、らひ?」(とも、だち?)
舌がひりひりするせいで変な発音になった。ほもらひってなんだよホモ達かよ最悪。
「ん?友達じゃないと思ってたのか?ったく水臭い奴だなお前は!俺とお前はもう友人だ、いいな?」
「ぅん?」
なんか葉嶋が急に馴れ馴れしくなった。
僕は確信した。
これは夢だと。
『ガンガン』
………。
パチリと目を開け体を起こしてみる。
「もう朝ぁ~?………ぅぐう」
「……起こすか」
「朝食?もうそんな時間なんだ」
再突入。
「起きろ!」
ゴン!
「やだぁ!!」
「「「えっ」」」
───続く。
こんな作品を最後まで読むなんて……。
ありがとうございます!
ありがとうございます!!
でも気が触れない限り続きは書かないです。
真面目な作品書ける人って凄いですよね。
これ、1回だけ恋愛ジャンルに投稿しようとしたんですよ。
出来心って怖い。
葉嶋が変態になってたので一部修正しました。
投稿してから誤字を見つけるとか……。