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一話目

「みなさん揃いましたね? では、頂きましょう」


 大きくて丸いテーブルの一席に、僕はいた。死んだというのに、なぜか日の光あふれる館で、のんびりお昼ご飯を食べている。一粒一粒がピシッとたったご飯に、玉ねぎとジャガイモのお味噌汁。そして醤油と大根おろしが添えられたサンマ。ザ・和食って感じだよね。


 不思議なものでね、お箸でつまんだり飲んだりすると、キラキラした光に変わっていくんだよ。びっくりしちゃうよね。でも、二回目だからかな。少し慣れた。

 見た目はともかく、食感も味も生前食べてたものと変わらないから、気にする必要もないかなって。むしろ、ここの食事の方がおいしい気がする。空気がキレイだからかな。


 でも、夜中に呪いの魔法で館が汚染されたままだから、キレイじゃないのかも。よくわかんないや。ご飯がおいしいから、死後も満喫できそう。いつか生き返ったときに、舌が肥えすぎて大変かもしれない。

 僕の右隣ではケイさん——昨日の給仕さん——が、パスタを上品に口に運んでいる。左隣ではメイドさんが、五段重ねのステーキを……そりゃもう豪快に食べている。あれで服にはソースも飛び散ってないんだから、豪快なのか繊細なのかわからない。


 僕も食べようっと。…………おいしい。このサンマなら二十匹はおかわりできそうだ。一匹まるごと調理されてるんだけど、全然臭みがない。きちんと内臓の処理もしてる証拠だよね。母さんはそれをしないから、サンマはいつも台無しになってたっけ。


「君は本当においしそうに食べますね。見てる私が嬉しくなります」


「ケイさんの作るご飯がおいしいからね。こんなにおいしいもの、初めて食べたよ」


「ありがとうございます。でも、持ち上げてもなにも出ませんよ?」


「お世辞じゃないよ。本当においしい。これなら……死んだのも、悪くないかなって」


「ミツル君……! ——晩ご飯は、腕によりをかけて作らないといけませんね」


 ケイさんの瞳が、強い光を宿す。涼しげな目元と相まって、まるでナイフみたいだ。昨日も扉を蹴破ったりしてたし、見た目に反して熱血漢なのかもしれない。こういうところ、瑞樹兄ちゃんに似てるかもしれない。……会いたいなぁ。元気かな。僕のこと、探してるのかな。


 あうっ、鼻の奥がツンとしてきた。ごまかすように、急いでご飯をかきこむ。両隣はもちろん、他の人たちにもバレてないみたいだ。どれだけ時間がかかっても、必ず二人に会いに行くよ。だから、それまで元気でいてくれると嬉しいな。

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