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長い…。もう5分以上階段を降りている気がする…。
どんだけ地下に作ったのか。あまりの階段の多さに来た道を振り返ったが既に外が見えない。前も後ろも懐中電灯の明かり以外は暗闇だ。
ちょっと、怖くなってきた…広い床下収納には興味があるが引き返そうか…?
引き返そうかと、後ろの道を見た後に今まで向かっていた前を懐中電灯で照らすと、前に壁が見えた。
…扉だ。
懐中電灯に照らされた扉は、白い扉で近づいて、そっと触れてみると鉄製のようなプラスチックのような、不思議な質感だった。
床下収納の入り口にしては、白さが眩しくて、そのまま観察しているとドアノブを見つけた。銀色のドアノブは懐中電灯の光できらりと光った。
誘われるまま、ドアノブに手をかけ回すが……………回らない。
よく見ると鍵穴がある。鍵穴に沿って緑色に光る小さな石が鍵穴を縁取っている。
この石…。
はっと、手元の鍵を見た。蔵の南京錠の鍵と…用途不明の鍵。
ドアノブとは違う、銀色とはいえない錆びついた色だが、持ち手に沿った小さな石。
恐る恐ると、鍵を鍵穴に持っていく。そして、鍵が鍵穴を通って奥に入り回すと、カチッという解錠音と同時に鍵の錆が”落ちた”。
「え…?」
ぱらぱらと、落ちていく錆。そして、銀色に輝く鍵が姿を現した。この鍵は錆びてなんかいなかったのだ。錆びついたように塗装されていた。いったい、どうしてその塗装が今落ちたのかは分からないが。
銀色の鍵には、輝く緑色の石。
思い出した、これ翡翠だ。私の苗字と同じ”翡翠”。
鍵を抜き、部屋に入ると暗かった室内に急に明かりが灯った。
カッと目を焼く眩しい白い光。目が慣れた頃に室内を見渡すと、それは見たことのない景色だった。
庭園だったのである。
緑が生い茂る木々に、足元には花が咲く。小さな川からは清潔な水が流れ。小道もある。
どこか、別の外に出てしまったのかと思ったが、天井がある。天井からは人口の灯りが煌々と輝いていて。まるで太陽のようだった。
「…屋内…庭園?…え?」
なんだか、風なんか吹いてないのにそよ風を感じる。完全に混乱した頭で小道を歩き出す。
チューリップに薔薇、ヒヤシンス、ハイビスカス…季節も土地も無視した花が咲き乱れていた。
「どうなってんの…これ…」
つい漏れる独り言に、困惑を滲ませながら歩いていくと。咲き乱れる花々の上にガラスケースが置いてあった。
人が1人、入れる大きなガラスケースは見渡すと、あちこちにあって、その中に、1つだけ中に何か”入っている”ケースを見つけた。
近づいていくと、入っていたのは…
「…人?」
とても綺麗な”男の人”が入っていた。