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「きぃ?…きららっ!」
「っ…!ごめん、ぼーっとしてた」
「もぅ、私よりきぃこそ気をつけたほうがいいよ。きぃは1人暮らしだし」
「ううん、あと3日くらいでお母さん帰ってくるんだ。そしたらしばらくは、家にいるって」
私の家は、屋敷と言うほどではないが、そこそこ広い家だ。母と私の2人暮らしなのだが、母は仕事の関係であまり帰ってこない。母がいない間の家事や雑ごとは毎日行っているのだが、自分の生活するスペースや母の部屋の掃除だけで手一杯であとは埃だらけだったりする。
「おばさん、帰ってくるんだ?」
「うん。研究がひと段落ついたみたい。昨日の夜の連絡で言ってた」
良かったね、親子水入らずと笑う花ちゃんに私も笑った。
母の仕事は、研究所勤めで機械科工学の研究をしている。私はあまり詳しくない分野だが、母は研究馬鹿というやつで没頭すると、周りが見えなくなり、家に帰らないなどはしょっちゅうだ。今回は1ヶ月程いなかったかもしれない…最高記録だ。
そんな母だが愛情を感じなかった訳ではない。1日1回は必ず、空いた時間などに連絡をくれて、私の様子や生活を気にしてくる。帰ってくるときは、お土産を買ってきたり。家にいるときは、仕事を持ち込まないので苦手な家事に挑戦してたり、私に構ったり。
研究馬鹿で母親としての仕事は苦手だったりするが、私は母が好きだ。ここまで女手一つで育ててくれたのは母だから。
花ちゃんと喫茶店を後にしたあと、分かれ道で別れて、家に帰宅した。
母屋と離れと蔵がある、この家は母屋のみ私が生活するために、掃除されているが、あと2ヶ所は放置だったりする…。
ただ、蔵のほうは蔵自体が北側の日陰にあるので涼しく、簡単には腐らない野菜などを少し保管していたりする。
じゃがいも、豚肉、玉ねぎとあったので、肉じゃがでも作ろうかと制服から私服に着替えてエプロンをつけたところで、にんじんが蔵にあったのを思い出した。
「蔵…鍵どこだっけ?」
一応、蔵なので鍵がかけられている。古くて厳しい南京錠がかけられていて、専用の鍵を使わなければいけないのだが…鍵を探したが見当たらない。最後に使ったのは、2週間ほど前だった気がする。いつも私が置いておく固定電話の横にもない。
困った…まあ、肉じゃがは、にんじんくらい無くても…なんて思いながら台所に戻ろうとすると足元に何かが当たった。
カシャン…
鍵だ。それも、今まさに探していたもの。なぜ足元に?というか今まで落ちていただろうか?…いつの間にか落ちちゃったのかな?
いろいろと疑問は出たが、深く考えずに鍵を持って蔵に行った。
これが、この蔵の鍵が秘密の部屋の鍵だった。ほんと、何故もう少し考えなかったのだろう…。