私と高校生活1
その時は私は言葉が出なかった。
さらさらして、自然ではあり得ないほど煌めく蒼の頭髪。閉じられているまぶたを縁取るまつ毛まで蒼。白皙の美貌をもった”人形”のような男が私にのしかかってきた。
このような状態に陥ったのは、理由があるが決して故意ではなかった。
理由を語っていいなら、5時間前の私、翡翠きららの記憶を語ろう。
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「きぃ!一緒に帰ろう」
本日は、午前中授業のため授業が早々に終わった。鞄に荷物を詰めていると友人の花ちゃんが私の机まで来た。花ちゃんは、高校からの友人である。
「お疲れ様、花ちゃん」
「おつ!」
鞄をもち、花ちゃんと近所の喫茶店に行くことになった。桃のタルトが絶品らしい。
私たちの通う緋野町高校は私立の進学校である。と言っても、進学重視なのは特進クラスというA〜C組までで、後のD〜G組までは普通科クラスとなっている。
私も花ちゃんも1年のE組で学校にも、馴染んできて学校生活を楽しんでいる。ごく普通の毎日。しいて、非日常的な部分をあげるとしたら、特進クラスの先輩で特進クラス在籍なのに武勇伝を多く残す不良がいるのと、ここ最近の吸血鬼事件くらいだろう。
「そういやさ、また出たんだって吸血鬼。3人目」
「…花ちゃん、好きだねその話」
場所は新しく見つけた喫茶店、緩やかなジャズが流れる店内の窓辺の席で私と花ちゃんは、桃のタルトとアイスコーヒー、紅茶を頼んで、過ごしていた。
「えー?だって吸血鬼だよ?面白くない?で、狙われたのはまた隣町の女子高、しかもまた美人と評判の生徒」
ここ最近、騒がれている吸血鬼事件の概要は分かりやすい話である。近隣の学校などから女子生徒が血を抜かれた状態で倒れているのだ。彼女たちは命に別状はなかったものの、自分の身に何が起きたのか一切を忘れているのだ。
そして、首筋には何者かに噛まれたような傷が残っている…。
被害者の共通点は女子生徒、美人もしくは、評判の高い生徒。
倒れていた場所は放課後の教室。放課後は、帰宅する生徒や部活動の生徒が校内にいるはずなので、目撃者がないのはおかしいのだが、目撃者が誰もいないのだ。故に、気味が悪い事件である。
「警察も、行き詰まってるみたいだよー。」
タルトをつつきながら、この不気味な事件について、他人事のように花ちゃんは言うが…。
「花ちゃんも気をつけたほうがいいよ…美人さんなんだから」
「私は大丈夫!むしろ撃退して、吸血鬼とったどー!みたいな?」
「花ちゃん…」
花ちゃんは、ショートカットと小麦色の肌が眩しい快活な美人さんだ。家が空手の道場で、生まれて物心つく頃から空手を習っていて、かなり強いらしい。黒帯?というやつである。
そんな花ちゃんではあるが、私は少し心配だった。この吸血鬼事件はさっきも言っていたが、不気味だ。
目撃者がいないとか、被害者は一切を忘れてしまっているとか、首筋の傷とか…いろいろ不気味な要素はあるが、なんというか…人間味を感じないのだ。
ほんと、人間がやったとは思えないくらい…。
じゃあ、いったい何なのか。