1話 ゆかりとベルの出会い
ここは、文芸部の部室。その部屋には、何人かの生徒がいた。
「今日も1日、終わったぁ〜!」
身長は160cm前後の女子生徒が言った。スラリとしたモデル並の体型で長髪で片目。これなら、スカウトが殺到してもおかしくない雰囲気の女子生徒だった。
「お疲れ様、ゆかり」
「お疲れ♪まさり」
「ゆかり先輩、今度のシナリオはどうするんですか?」
ゆかりと呼ばれた女子生徒は楽しそうに次のストーリーについてこう言った。
「うーん、次のシナリオはね……。私のお得意の推理小説か学園小説かだね」
「そういえば、今回執筆したシナリオ、貸してください。私、イラストを描いてくるので」
「じゃあ、お願いしようかな♪」
「ハイ! ゆかり先輩が気に入るようなイラストを考えて描いてきます!」
「無理しない程度でね」
「ハイ。お疲れ様でした! ゆかり先輩とまさり先輩! お先に失礼します。さようなら」
「バイバーイ♪」
数分後……。
「そろそろ、帰ろうか? ゆかり」
「うん。私、帰りに買い物に行かないと……」
「大変だね。1人暮らしって……」
「1人暮らしは慣れだよ! じゃ、帰ろうか」
「うん」
ゆかりとまさりは自転車置き場に向かい、2人は帰る方向が違うため、そこで別れた。
ゆかりは自転車に乗り、学校の近くのスーパーに向かった。
スーパーに到着したゆかりは
「今日の夕食、何にしようかな♪」
買い物かごには、ジャガイモとニンジン、タマネギが入っていた。カレーライスだろうか?
「そうだね。カレーライスだよ」
買い物を終えたゆかりは自宅(注・マンション。ペット同居可能。)に帰ろうとした。自転車をこぎ始めて数分経っただろうか。
とある電柱の近くに1つのダンボール。よく中身を見ると、1匹の黒い犬。ゆかりはその犬を優しく抱いた。
「君、可愛いね! よしよし。名前、どうしよっか? 鈴がついてるから……。ベルはどうかな?」
犬と戯れ始めて10分後……。
「犬は好きだけど……、連れて帰れないなぁ。ごめんね、ベル」
ゆかりは犬に別れを告げ、再び自転車をこぎ始めた。突然声をかけられた感じがした。
「待ってください」
「あなたは誰?」
「オレはベル……。あなたがつけた犬の名前と一緒です。あなたは?」
ベルと呼ばれた男性が言った。身長はゆかりと同じくらいだろう。
「私はゆかり……。ベル……。元は人間だったのね」
「そう。これからあなたと一緒に過ごす同居人となるんですよ」
それが、ゆかりとベルの出会いだった。