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突然霊能力者になった俺に幸せを下さい  作者: まんぼう
第2章 霊能者になった俺は世界を救えるか?
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驚くべき能力

 明け方のカラスの鳴き声で目を覚ました。

ふと、横を見ると隣で寝ているはずの陽子の姿が無い。

一瞬戸惑ったが、陽子の行く先はすぐに知れた。

風呂場からシャワーの音と陽子の鼻歌が聞こえて来たからだ。

大分回復して来たんだな、と思いながら俺は隣のトイレに入る。

出て来て洗面で顔を洗っていると陽子が濡れた体にバスタオルを体に巻いて出て来た。

「おはようございます。達也さん」

「おはよう、大分調子が戻って来たみたいだな」

「はい、先ほど起きたら、体が軽いので起きてみたのです」

「それで、どうだ能力の方は?」

「それは未だです。後で試してみます」

「そうか、それは楽しみだな」

「そうです。達也さんを異世界に連れて行けると思うとワクワクします」

「そうか、でもその前に服を着た方が良いな」

俺はバスタオルしか身にまとっていない陽子にそのバスタオルを指で外しながら語りかけた。

パラリとバスタオルが外れると陽子は

「ああ、達也さんエッチです!」

そう言いながら、急いで下着と服を身にまとう。

俺達は一緒に暮らしてひと月近く経つが、体の交わりは一度だけだが、お互いの裸は散々見ている。

それこそ、陽子のホクロが何処にあるかぐらいは知っているのだ。


夏休みも、もうそれほど残っていない、8月の17日だ。

明後日の月曜からは会社も始まる。

最も俺の部署は会社が始まろうと、ほとんど関係無い部署だが、受付の陽子は会社の看板でもあるから、おいそれと休む訳には行かないのだ。


二人で朝食を作って一緒に食べる。

こんな何でも無い事でも、今はとても嬉しい。

初めて、陽子と一緒に暮らした楽しみを享受している感じだ。

「なんだか、達也さん嬉しそうですね」

「そう見えるか?ならそうかも知れないな。やっと一緒に暮らしている実感が味わえた感じだからな」

「そうですね。今まではまるで隔離されてる感じでしたからね」

「でも、俺は正直お前の両親が一度位様子を見にくると思っていたがな」

そう言うと陽子は笑って

「それは無理だと思いますよ。達也さんだって仰っていたじゃありませんか」

「え、なにを?」

「私たちの交わりが世界に影響を及ぼすといけないので、上郷と櫻井の霊が、この部屋に結界を作って影響が出ない様にしたって……」

「ああそうか、だから来たくても来れなかったのか」

「そうなんです」

でも、それほどの影響があったのかと、今更ながら思うのだった。


朝食後、一休みしている時にひいばあちゃんに訪ねてみる。

「なあ、結界って未だ結ばれているのかい?」

するとばあちゃんは

「ああ、さっき解除したぞい。もう自由に出入り出来るはずじゃ」

「そうか、それはありがたいな」

「だがな、お前さん達二人は気のコントロールをちゃんとやらんと駄目じゃぞ」

「ああ、判ってるよ」


それから、更に休んでいると、陽子が

「それじゃ能力を試してみますか?」

と俺に言って来たので、ひいばあちゃんも乗り気で、更に陽子の守護霊も楽しみにしていたと言う。


「それじゃ、私と皆さん……って守護霊のお二人ですが、私の手に触れて下さい」

俺は言われた通りに陽子の手を握る。

守護霊の二人もそれに触って来ている。

「皆、ちゃんと触ってるぞ」

俺は見えない陽子の代わりに準備が整った事を告げると陽子は目を閉じて何やら呪文の様な文言を唱え始める。

すると、俺の周りの景色が歪み始め、やがて渦を巻き始める。

「目が回るかも知れませんので、目をつぶっていた方が良いかも知れません」

そのアドバイスに従って、俺は目を瞑った……


どれぐらいの時間だろうか、あるいは極わずかな時間かも知れなかったが、陽子の「もういいですよ」と言う声で目を開けた……

目の前にはありふれた土曜日の夏の東京の風景が広がっていた。

そこは、俺達の会社の前だったはずだが、ビルは同じでも会社の名前が違っていた。

「こ、これは……」

「うふふ、ここは私も達也さんも存在しない世界です」

「そうなのか? 確かに俺達の会社はここには無い様だが……」

「あまり変わらないのでガッカリですか?」

「いや、そうじゃ無くて、あっけなく来てしまったので、拍子抜けしているのさ。もっと体に来るもかと思っていたから」


だが、違いはそれだけは無かった。

何か変な街の風景だと感じていたのだが、その理由が判った。

車が右側通行をしているのだ!

だから、道路の信号の作りも逆だし、標識も反対に立っている。

通行が逆になるだけで、これほど街の風景が変わるとは思っていなかった。

それと同時に、俺達の会社が存在しない理由が判った。

それは、俺達の会社は創設者が、元々は終戦後、一時占領軍が日本の交通を自国アメリカと同じ右側にしようとした事があったが、いち早く左側通行のままと読んで、交通関係の物品を生産し政府や自治体に納入して財をなし、基礎を作ったからだ。

だから、右側通行となれば存在さえしないのだ……


「凄いな!全く恐れいったよ……」

俺は隣にいる陽子に語りかける。

陽子は、更に驚くべき事を俺に告げたのだ。

「もうすぐ、私の状態が完全に落ち着いたら、異世界の好きな次元に飛ぶ事が出来ます」

「なんだって、それは時間を遡れるのか?」

「そうです。自分の世界では出来ませんが、異世界に飛ぶ時に、その異世界の過去に飛べるという事です」

俺は呆れて暫く物も言えなかった。

「じゃあ、俺さ、坂本龍馬に会ってみたいのだけど、それも可能な訳だ」

陽子は笑いながら

「それは、どうですかねえ? 私だって達也さんだって龍馬と特別知り合いという訳ではありませんからねえ。それに私達の世界の坂本龍馬と異世界の坂本龍馬では違うかも知れませんしね」

「そうか、そりゃそうだよな。とすると歴史的な建造物の出来た当時の姿なんかは確実に見られるという事だな」

「そうですね。その世界でも作られていたらですね」

「そうか、何だか色々聞いてると、有難みが薄れるな」

「だって、本来はもっと違う目的の為の能力ですから」

「そうだったな。それを忘れてはイケナイな」

「そうですよ」

そう言って優しく陽子は微笑み

「もう少し、この世界を楽しみましょう」

そう言って俺の手を取るのだった。


俺は更にこの異世界に驚くのだった……


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