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突然霊能力者になった俺に幸せを下さい  作者: まんぼう
第1章 突然霊能力者になった俺に幸せを下さい
6/29

思いがけない作用

 あの日から俺は櫻井家の一味に加わったのだが、実はあの日からから体の調子が良くないのだ。

兎に角だるい。朝も何とか起きて会社に行くが、一日中ぼおっとしてるだけだ。

最もこの「資料室」は一向にそれで構わない部署なのだが……


余り体調がオカシいので陽子に帰る時に訊いてみると

「それは、漢方で言うところの「瞑眩」(めんげん)というものだと思います」

「瞑眩? 何だいそれは?」

「聞いたことありませんか? 漢方薬なんか飲んで一時的に状態が悪くなる事です」

「そんな状態だと言うのか?」

「そうですね。私とキスしましたよね?」

「ああ、した。それが?」

「その事で、達也さんの気に私の気が入り込み反応を起こしているのです」

「それで、体の調子が悪いのです。幾日かすると嘘の様に直ります。その後に自分の能力の向上が確認できると思います」

「俺の能力の向上ってどういう事だ?」

「それは目に見えて判る思いますので、心配は要りません

。実は私も同じ様に体がだるいのです。だから私の能力も向上すると思ってるのです」


兎に角だるくて陽子とデートもままなら無い有様で、陽子に言わせると、辛ければ辛いだけその後の能力の向上がすさまじいのだそうで、中には一月程寝込んでしまう人もいるそうだ。


兎に角部屋に帰って寝ているしかないと思いベッドで横になっていると、ひいばあちゃんが

「どうじゃ具合は、辛そうじゃのう……お前さん、キスでその調子じゃ、その交わったりしたらもっと大変じゃぞ」

等と俺をからかう。

「ええ!それじゃ俺は陽子を抱けないのか?」

「抱けるじゃろうて、そのときはワシも陽子の守護霊も協力して、最小限の被害にくい止めるから大丈夫じゃが、恐らく数日はお互いに寝込むじゃろうな」

「俺だけじゃなく陽子も苦しむのか?」

「そりゃそうじゃろう。それでなくては陽子の能力の向上も見られんからのう……」


これはうかつに手出しも出来ないと言う事か。

なんだかなぁ〜美人の彼女が出来てもお楽しみはお預けか。

それより、今は回復に勤めるのが先か、俺は一人でベッドの上に寝ていたのだった。


トントン。部屋のドアをノックする音がする。

会社からはまっ過ぐに帰って来ている。

今日は金曜日、なんとか1週間持たせたのだ。

明日と明後日は寝ていようと思っていた処だ。

今頃誰だろう。俺の部屋にやって来るのは悪友を除けば僅かしかいない。

「鍵は掛かっていないからどうぞ」

そう言うと、ドアが遠慮がちに開き、陽子が顔を見せた。

「あれ、良く部屋の住所知っていたね?」

「はい、母から聞きました」

そうか、あの母親には全て読まれていたのだった。

「上がっても良いですか?」

「ああ、構わ無いが、散らかっているぞ」

「構いません。来たついでにお掃除していきます」

「そりゃどうも……」

「それで、わざわざ来た要件は?」

「特別にありません。達也さんが大変だろうと思ってやって来ました」

「君は身体はもう平気なのか?」

「私は今日から治り平気になりました」

そうか、彼女の方が俺より強いから、影響を受けても軽微なんだと理解した。

と、言う事は、彼女に関してはそう能力の発展は無いと言う事か。


部屋に入って来た陽子は何やら持って来た林檎の皮を剥いている。

「さあ、剥けましたよ食べて下さいな」

そう言ってお皿に切り分けた林檎を俺に出した。

俺も寝たままでは悪いと思い起き上がって一口戴く。

中々美味しい林檎だ。

「このダルさを取るには林檎の酸味が一番良いのですよ」

そうなのか、この手の事は初めてなので俺は言いなりになるしか無いな。

身体が求めている。と言う事もあるのだろう。やたら美味しく感じたのだった。


「なあ、キスしたくらいでこの有様だから、その……深い関係になったら、お互いが大変だそうじゃ無いか……」

そう俺が聞くと、陽子は照れもせずに

「そう…ですね。私も数日は起きられないと思います」

「それと今回、私が軽くて、達也さんが重いのは、未だ能力のレベルに二人の間に差があるという事ですね」

確かにそうなのだろう。

「でも、余りに差があると片方の方が亡くなると言う事態もありますから、それから言うと良かったと思います」

「ですから、二人のレベルが同じ位になる為には頻繁に逢っていたり、手を繋いだりして、弱くでも交流していかないといけません」

さいですか……それは喜んで良いのだろうか……


兎に角、わざわざ陽子が来て来れたのだから、俺としてものんべんだらりと寝ていてはいけないと思い、起き上がる事にした。

ベッドから起き上がっただけで目眩がする酷さに本当に冗談じゃ無いと流石に思う。

すると陽子がベットに一緒に入ってきて

「達也さん。これから達也さんの症状が軽くなる事をしましょう」

なんて言い出したので俺は驚いて

「軽くなるって……何をするんだ?」

「まあ、すぐ判りますから、また横になって下さい」

言われた通りに俺は横になると、陽子は俺の隣に並んで横になった。

そして自分の左手で俺の右手を握って来た。

「大丈夫です。こうやって皮膚の接触だけなら穏やかな気の交わりしかありませんから」

「暫くこうしてれば、大分楽になるはずです」

俺は陽子に疑問に思っている事を聞いてみた

「あのさ、今回はもしかして、俺がいきなりキスをしたのがまずかったのかい?」

「ううん、そうですね。それはありますね。こうやって手を握って身体を慣らしてからなら、もっとショックは少なかったでしょうね」

「キスってそんなにヤバかったのか?」

「そうですね。だって粘膜と粘膜の接触と言う意味では生の状態で行うセックスと同じですからね。但し時間が短いですけどね」

「なんだ、そうだったのか、同じ辛さなら、そっちの方が良かったな」

「いいですよ、私は達也さんなら何時でも宜しいですよ、うふふ」

いや、全くの冗談なのだが……お嬢様は何処までが冗談か困る

「いや、今度ね」

俺はそう言って逃げるしか無かった。情けない……


それでも暫く手を繋いているうちに、身体が穏やかな感じになって来た。

横を見ると陽子はすでに寝てしまってる様だ。

起こすのも変なので、そのままにしていたのだが、何だか身体に力がみなぎって来た感じがするので、これは陽子の言う通り効いて来たのかと思う。

そうなると俺も男だ、横で安らかに寝ている陽子が気になり始める。

俺は、まじまじと陽子を見返す。

肩まで伸びた黒く美しい艶やかな髪。

抜ける様な白い肌

今はつぶられているが、黒く吸い込まれる様な瞳。

そして何とも上品な唇。

以前の麗子とは趣が正反対だと感じる。

麗子が大輪の薔薇の花だとすると、こちらは白百合かさもなければ、日本流の藤の花とでも言おうか、その様な印象だ。

それに何とも言えない良い匂いもするしな。

あまり俺が見つめていたのを感じたのか、陽子が目を覚ました。


「起きてらしたのですか達也さん?」

「ああ、先ほどね。それで良い物を見ていたのさ」

「まあ。それは何ですか?」

「それは君の寝顔さ」

「まっ!」

そう言って真っ赤になってしまった。

本当に初心なんだと感心をしてしまう。

「お陰様で大分楽になったよ。助かった」

「良かったです。手を繋いでる間に両方の気が、また混じり合いましたから、だるさは取れても何らかの身体の変化はあると思います。

「現に私は異次元の様子を短時間なら、他の人に見せるだけですが見せられる様になりました。

「本当かいそれは?」

「はい、実際にやって見ましょう」

そう陽子は言うと俺とおでこをくっつけて

「目は瞑ら無くても良いですが、頭に映像が映ると思います。それが平行世界の風景です」

「じゃあ、やってみます……」

そう言うと陽子は目を瞑った……


ややあって、俺の頭の中にある映像が映し出されて来た。

それは自分達の世界と一見変わりない感じだが、確実に違うと分かる映像だった。

行き交う人々も、物も風景も殆んど同じ感じだが、確実に違う部分がそこにはあった。

なぜなら、そこにはすでに俺達の世界では取り壊されて無くなってしまった建物があり、それだけなら過去の映像とも思えるが、そこには同時にこの前竣工したばかりの新しい建物も一緒に映っていたからだ。」

現実にはありえない風景……

「これは……」

俺は余りの驚きに声も出なかった。

「これが平行世界の映像か……」

さらに映像は続くのか、陽子は

「違う世界に行きますね」

そう言ったかと思うと別な映像が飛び込んで来た。

それは、更に驚愕の映像だった。

コンサートの会場なのだが、そのステージで歌ってるのは何とマイケルジャクソンだった。

横には何とジョンレノンも居るでは無いか。

二人共すでにこの世には居ないし、もしいても一緒に活動なんてするのだろうか?

良く見るとCharityと書かれている……納得してしまった。

その関係の二人のジョイントコンサートらしかった。

我々の世界では見たくても見られないモノが見られてしまう……あまつさえもっと能力が上がれば自分もそこに連れて行って貰えると言う……


やがて映像」が終了し、陽子が目を開けた。

「凄いじゃないか! 本当に驚いたよ」

おでこを離してからやや上気している陽子に俺は興奮して言い寄った。

「上手く見えましたか?」

陽子は俺の顔を見ると真っ先に出来具合を訊いてきた。

「ああ、凄いぞ! ちゃんと見れたよ、建物もマイケルもレノンもちゃんと見たぞ」

「そうですか、それは良かった……少し疲れました」

そう言うと陽子はベッドに又横になり気を失う様な感じで寝てしまった。

しかし、これでこの衝撃度なら人を一人でも連れていけるならこれはとんでもない事だ。

しかし、それになるには俺と陽子が交わらないとならないが、後遺症が恐ろしい。

俺は目の前で寝ている美女を眺めながら、これからの事に思いを馳せるのだった。

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