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突然霊能力者になった俺に幸せを下さい  作者: まんぼう
第2章 霊能者になった俺は世界を救えるか?
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異世界探訪 1

陽子に手を掴まれて歩いて行く。

何故そんな事をしないと上手く歩けないのか、と言うと、人とぶつかるからだ。

何故ぶつかるか?

それは、我々日本人は、海外へ行くと良く判るのだが、特に右側通行の国で運転をすると、注意していないと、いつの間にか左側通行になってしまうのだ。

よほど、車は左側通行人は右側通行と言う感覚が染み付いているらしく、時には危ない目に合う事もある。


この異世界での俺がまさにそれで、この世界では人は左側、車は右側であるから、歩道を歩いても向こうから来た人とぶつかってしまうのだ。

それは日本人がきちんと法律を守っていることの証なのだが、この世界に来ても日本人の勤勉さは変わりない様だった。


「恥ずかしいかもしれませんが、我慢して下さいね」

そう陽子に云われたのでは従うしか無い。

「君はこの世界には何回も来ているのかい?」

俺の疑問に陽子は

「そうですねえ、一番来てるかも知れませんね」

「そうなのか? じゃあ特別驚く事等無かったろう?」

「う〜ん、でもそれで無いと達也さんが不安ですから」

「ああ、そうか、君も知らない世界じゃ案内出来ないから困る訳か」

「そうなんです。それに、この世界は交通が逆なだけで、後はそう変わりが無い世界だと思いますからね」

要するに、安心して案内出来るという事なんだと理解した。


ここで、守護霊の二人は俺らに付いて来るのが飽きた様で

「あのな、ワシらはこの世界をあちこち見物してくるぞい」

俺は、やはりな、と思いながらも

「見物は構わないが、呼んだら直ぐ帰って来てくれないと、困るぞ」

「ああ、それは判っておるよ。帰れ無くなるからの。それにお主が心で思えば直ぐこちらには通じるから、瞬時に帰って来れる」

そう言うと二人は何処かへ消えて行った。

まあ、俺にはその行き先も判るのだがな。


陽子に案内されて歩いていると、どうも見覚えのある街の様な感じがするので

「なあ、ここはなんと言う街だい?」

と訊いてみると、陽子は軽く笑って

「嫌ですわ、ここは丸の内ですよ」

そう言って澄ましている。

「丸の内? つまり俺らの世界の丸の内と言う意味で同じ役割を果たす街という事か?」

「もう……これを見て下さい」

そう言って、横のビルの壁に貼られている町名案内を指さすと、そこには「丸の内1丁目」と書かれていたのだった。

「え!じゃあ……」

「そうです。世界が変わっても、ここでは丸の内は丸の内なんです」

そうなのだ、著しく歴史が変わってる世界なら兎も角、この世界は陽子に云わせると、俺らの世界に一番近いという。

だから、そう変わりはしないのだと俺は思った。


大分、陽子に連れられて、街を見物していたが、流石に疲れて来た。

「何処かで休みましょう」

陽子の提案で、適当な所で休憩を取る事にした。

目に付いた喫茶店に入る事にする。

入り口を開けると冷房の効いた空気が身体を包む。

「随分、冷房が効いてるな」

「そうですね……ここは、東北の大震災が未だ無い世界ですから、電力を節約しようなんて考えは薄いのです」

「そうか、今でこそ、省エネなんて言ってるが、ここは電力の不足とは無縁の世界か」

「そうですね。ですからこの世界に私達の省エネ技術を持ち込んだら、たちまち大金持ちになるでしょうね」

「でもそれは駄目なんだろう?」

「そうですね。後でしっぺ返しが怖いですね」

「しっぺ返し?」

「そうです。バランスを取る為に、必ず反動が来ます。それが怖いです」

「なるほどね。じゃあこの世界の人にやがて東北に大地震が来ると教えてもいけないのかい?」

「それですが、この世界の我々と同じ様な組織がありまして。その組織を通じて知らせてはいます。わたしの役目はそれなのです」

「そうだったのか……でもそれは、その先程の規定に当てはめると、どのようになるんだい?」

「そうですね、この場合は告げた目的と、その先が天下万民の為ですから、当てはまらないと思います。それに、必ず来るという訳ではありませんから」

「そりゃそうか、地震が来ない世界という事もある訳か……」

俺は、このような事は意外と難しい問題なんだと理解しながらも、飲んでいるコーヒーや食べているケーキが元の世界と同じだと思い安堵した。

それはコーヒーに塩を入れて飲む様な世界はまっぴら御免だからだ。


一休みしてから、また街を歩いて行く。

何とか、この世界の交通ルールも身に付いた様で、もう陽子が手を引いてくれ無くても人と

ぶつかる事は無くなっていた。


良く知っている街に近いから、会社も同じ名かと思うとこれが若干違うのである。

現に「三菱」」だがこの世界では「岩崎」となっている。

創業者の名がそのままなのだ。

それに「三井」は「越後屋」のままなのだ。

分り易いと言えばそうだが、比較すると面白い。

そんな事を考えながら歩いていたら、街中を漂っていた霊から声を掛けられた。

「あのう……あなた、霊能者ですよね?」

肩越しに訪ねられて、その方を見てみると、二十歳ぐらいの女の子の霊が俺に声を掛けたのだった。

「はい? 確かに俺は霊能者ですが……何か?」

街中で霊に声を掛けられたのは初めてだったので、俺は多少面喰らったのだが……

「頼みがあるんです」

女の子の霊は酷く真剣そうに俺に訴えたのだった……


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