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【今宵の果てに─2】

目に毒だな、うん。


本当にアレは毒。



…少し小さかっ…



俺は変態かっ!



でも、たかが一葉なのに…。


アイツも女になったというのか…。


認めたくないものだ。



ま、忘れよう。


全部無かったことにしよう。


…忘れっぽい性格で良かった。


…………。




そんなすぐに忘れられるか!!


仮にも、下着だぞ!



くそう…なんで一葉の下着なんか…。



「はわっ………み、み、み……見た、の…?」



どきっ!


今まで生きてきた中で一番でかい飛び跳ね方だ。


何が飛び跳ねるかって?心臓に決まってるだろ。


これで確実に寿命がごっそりとすり減らされた。


はは、は………。




部屋に入ってきた人物は、顔が凄い真っ赤な口をぱくぱくさせてる少女。よく見ると耳まで真っ赤だ。


美味そうな程にリンゴ顔…この際だから食べてみようか、と場違いな事を考えてしまった。



一葉は俺の返事を待ってる様なので、返してやった。


「見たか・見てないか、はどうでもいい。肝心なのはお前が美味いか・美味くないか、だ」


言ってから気がついた。



俺、動揺してるな、と。


「い、意味がわからないよっ」


「というか、お前はいきなり何を言い出すんだ。『見たの?』って、前フリも無く…俺が何を見たと言うんだ?ふう、これだからバカは…」


「だっ…て…キリトが……わ、私の…えっと…」



汗が止まらないのはなんでだろうか。


嫌な予感がする。



「…ブラ…ジャー……あう…小さかった…な…って……言ってたから……」




声に出してた様だ。




「改めて言うが…すまなかった…」



俺は素直に、見た事と、小さかったと言った事に対して謝った。


「…………き……気にしてないよ……」


その言葉を聞いた瞬間、心の中が罪悪感で埋まった。


「………スマン」


「…あ…そ、そうだ、コレ…」


自分の衣服を指さす一葉。


薄蒼色でシマシマの衣服。どこかで見覚えが…って俺の寝間着か。


「ん?ああ、忘れてたけど、寝間着のサイズ合ってたか?」


「うーん、ちょっとピッチリした感じかな…」


「つまり苦しい、と?」


「そこまで苦しくはないから大丈夫。…あとね…」


「?」


「…う………」


ゴニョゴニョと喋っているが、聞こえない。


しかも頬がなぜか赤い。よく赤くなる奴だな。


「ちゃんと言ってくれ。聞こえんぞ」


「い、い、…今もね、その…下着、付けてるんだけど…いつも寝る時には外してるから…どこにやればいいのかな……って思ったんだけど」


ああー…なるほどな。



それはどうしようも出来ない相談事です、一葉さん。


「…『仮にも』だ!俺は男であって女では無い!そんな事を男の俺にさらっと言うお前は無防備すぎる!よってそのまま付けておけ!」


「なっ…本当は恥ずかしいけど、勇気がいるんだよっ、こういうこと言うのは!…それに、相手が……」


後半の辺りは聞き取れなかったが、俺の意見は変わらない。


「ああもう戯言はよせ、醜いぞ。さて、俺は風呂に入って…」


「…じゃあいいよ…。そこら辺に置いておくから…」



ぴたり


俺はドアノブを回そうとした手を止めた。



今のは聞き捨てならん、" そこら辺 "だと!?



男の部屋に一つだけ、何やら色々と桃色なシロモノが…。


…か、考えただけで背筋が冷たくなる。


とにかく、そんなことはあってはならない!断固拒否だ!



「…寝間着を着る前に着てた服はどこに」


「?お風呂場にあるカゴの中に畳んで入れておいたけど…」


「ちょっと来い」


「ふわっ!?」


一葉の手を引っ張り、部屋を出た。




「ほら、後ろ向いてるからさっさとお前の服と下着を洗濯機の中に放り込め」


「え?えっ?」


口は半開き。瞼をぱちくりとさせる。…戸惑ってる様子だ。


「洗わないとダメだろ?」


「そんな…いいよ」


「……何度も同じ様な事を言ってるかもしれないけどな、お前の思う俺のイメージほど、俺は変態じゃないぞ?警戒するな」


「ちち、違うよ!ただ…迷惑かけるといけないから…」


つくづく思う。


ほんと、頑固だな。



手段を変えよう。


「そうか…まぁ信じられないのは無理も無い…俺の事が嫌いみたいだからな…」


「…はうう……」


いつもの事だが、一葉の顔がみるみる内に赤くなっていく。


いい加減、耐性付けろよ…。


「……わかったよ。脱げばいいんでしょ!?」


すると一葉はいきなり自分の服を掴んで………脱ぐつもりだ!


ほぼヤケクソ状態の一葉。恥ずかしがってて、怒ってる、そんな表情をしていた。


ってか…


「え、ちょっ…」


視界には、何の汚れも受け付けないと言わんばかりの純白の肌が見え、その上部には桃色の何かが…



シャットアウト。



俺はすぐさま180°後ろを向いた。


パサパサと服を脱いでる様な音が聞こえるが、気にしない。


ぷつっ


そんな音も聞こえた気がするが、気にしない。







「これでいいんでしょっ!」


振り向くと、頬をぷくーっと膨らませてこちらを睨み、洗濯機を指さす小さい少女が見えた。


何気なく、いつもよりほんの少しだけ迫力がある。


「お?おお……」



「もう!本当に信じらんないよっ!バカっ!」



そう言い放つと、ドタドタと俺の部屋の方へと走り去っていった。



いつもと変わらずにからかったはずなんだけど…さすがに怒るとは思わなかったな。


そんなことを思いながら、洗濯機の中を見た。



一葉の服+αが入ってる。


どうせ一葉なんだし、もう気にしないことにした。



……いやいや待て待て。明らかに今のはおかしい。


「どうせ一葉なんだし」って。気にしない分には正解なんだが、何か…この言葉に違和感がある。


このモヤモヤは……。




…ん?


…服+αは一葉の服だから見たところでもう気にしない。つまりは一葉の服じゃなかったら、他の誰かの服だったら、気にする…?



…そういうことか?そういう理屈なのか!?



自問するものの、自答出来ない。


「………」


バカな自分に呆れつつ、ため息をつきながら服を脱ぐ。


「俺も、バカだよな…」













そっちは楽しんでるかもしれないけど、こっちはこっちで恥ずかしいんだよ?


リンゴ病にでもなってたら、絶対キリトのせいだ。




十分ほど心の中でキリトに文句を言ってると、やっと疲れてきた。


「暇、だなぁ……」


普段自分の家では………何をしてるんだっけ。


学校から帰ってきて…着替えて…勉強して…夜になったらご飯食べて…お風呂入って…ほんのちょっとだけ、テレビ視て…本とか読んだり色々やって…パジャマに着替えて寝る…。


普通の人とまったく変わらない、シンプルすぎる日常。


案外、この日常がつまらないと感じてしまったりする時もある。


でも…キリトと一緒にいる時間が一番楽しいんだ、って気づいたのは、ずっと前から。


からかわれて、泣いたり怒ったりするけれど、最後には笑顔のままでいられる、そんな日常は…むしろ楽しい。



「楽しい日常………」


涙が込み上げてきそうな感覚。


それに気づき、きゅっと目を閉じる。




しかし引いてはくれなかった。


つつ…と涙が目から顎の辺りまで流れる。


「…泣き虫だね」



最近泣いてばっかりだなあ、なんて思い、ごろんと横になった。



なぜかこの部屋の床は、柔らかいような気がした。


こんなこと言うのは恥ずかしいから口に出して言いたくないけど、…それでも、言ってしまった。




「キリトの匂い………」



ほら、恥ずかしい。


本人の部屋だし、そう思ってしまうのは当たり前です。って、誰でもいいから言ってほしい。ウソでも、いいから…。


この熱を、どうにかして冷ましたいから……。




…やっぱり、キリトのせいだよ?

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