【学校―2】
(憂鬱、って言うんだろうな、この気持ちは)
授業には出ているが、正直やる事がない。
ほとんどの教材を忘れてしまったからだ。
どうでもいい、どうでもいいと思っていたが結構ヤバい事に気づいた。
試験前の授業だからその範囲が出るはずだ、と。
でもよく考えたら全部光二に教えてもらえばいいじゃないか、と気づいた。
…なんかダメ人間だな、俺って。
一葉はさっき無視したから怒ってるし…バカな話さえできない。
暇だな……。
そうこうしてる内に、二時間目、三時間目、四時間目、と過ぎていった。
そして今の時間は昼食の時間だ。
俺はいつもなら購買で買ったパンを屋上で食べるのだ。いつも『なら』…。
だが今日に限って、なぜか一葉と食べたくなった。
そして一葉に声をかける。
「おーい、一葉。一緒に昼飯食べないか?」
「えっ」
一瞬、一葉は驚いていたが、こほんと咳払いをして返事を返してきた。
「む、無視するんじゃないの?無視するなら私と食べる意味は無いでしょ?」
むう、なんて頑固な奴だろうか。
しょうがない、ここは…。
「そうか、それは残念だ。 お前をこんなに好きで好きで堪らないのに断られるなんてな。 ああ、気にしなくていいぞ。お前を想い続けて一人虚しく食べてるから」
からかってるとは言え結構恥ずかしいな、このセリフ。
そして思った通り、一葉の顔はリンゴになった。
「も、もうっ!バカバカバカバカっ!どっちにしろカナちゃんと食べるから無理なのっ!」
と言い残し、教室から出て行った。たぶん食堂へ向かったんだろう。
ちなみにカナちゃんなる人物は、一葉の友達だ。当たり前だが一葉には俺以外にも友達はいる。
(逃げられたか、仕方がない。 さて、俺もさっさと食べるか…)
教材は忘れようとも、財布は必ずポケットに入っている。財布だけは絶対に忘れてはいけないからな。
俺は購買で焼きそばパン、コロッケパンを買って屋上へ向かった。
ここは一番落ち着ける場所だ。
人もあまり来ないし、何より空が良く見える。
「良い天気だな…晴れ晴れとしてる」
その時、ガチャリとドアが開いた。
「ん?錐斗、お前がなぜここに居る?」
その声の主は光二、俺の友達だ。
それよりも、言ってる意味がわからない。なぜここにいるって……。
「すまん、質問の意味が理解できん。詳しく言ってくれ」
俺と光二は床に座った。
俺は焼きそばパンを頬張る、なかなか美味い。
「朝から居なかっただろう、なのになぜここに」
「おい待て。たしかに俺は一時間目は居なかったが、二時間目からは居たぞ。 気づいてくれなかったのか?」
光二も自分の焼きそばパンを食べている。顔に似合わず食べる物が貧相だ。まあ家では豪華なんだろうな。
「本当に居たのか。まったく気づかなかった」
「ひどいな、一番の友達を忘れる奴がいるか、まったく……そういえばお前は何でここに?」
光二はパンを食べながら、手で空を振り仰いだ。
「今日はいい空を見れそうな気がしたから、だ」
ふむ、珍しい。 いつもならこんな事は言わないのに。
「いつになくロマンチックなセリフじゃないか。 熱でも」
「ない」
…つまらん奴。
俺は焼きそばパンを食べ終え、次はコロッケパンを頬張る。
そして光二に指差しながらこう言った。
「時に光二。今日勉強会をしないか?俺の家で」
光二は少し悩んではいたが
「いいぞ」
と答えてくれた。
「そうか、ありがとう。じゃあ学校から帰ったらすぐ来てくれ」
持つべき物は親友だな、と強く思った。
そういえば勉強会か、いつもは図書室で教えてもらってたが、自分の家だと新鮮な感じがする。
うむ、友と一緒に食べるパンは美味い。
「……」
だがどうしたものか、さっきから光二は黙ったままだ。
「…?どうしたんだよ、光二」
「え、ああいや、何でもない」
一葉に続いて…変な奴だ。
その後、俺達は色んな話をして、教室へ向かった。
昼休みも暇だな、どう過ごせば良いかまったくわからない。
いつもなら一葉をからかって暇を潰してるものの、今教室には居ない。
やはりさっきの事が原因なのだろうか。
とりあえず一葉は気にしない事にして、適当に過ごした。
そして五時間目、六時間目と過ぎていった。
今日、俺は一体何をする為にここに来たのか…自分でも理解出来なかった。
帰りの準備も終わり、俺は一葉に声をかけた。
「一葉、一緒に帰ろうぜ」
いつも一緒に帰ってるから言う必要は無いはずなのだが、声をかけないとコイツはこのまま一人で帰ってしまう様な気がしたからだ。
「……うん」
どうやら機嫌を治してくれた様だ。
俺達は下駄箱へ行き、靴を履き替えて外に出た。
「そういや一葉、今日は暇か?」
「うん、暇だけど…どうして?」
「今日俺の家で勉強会をしようかと…光二も居るぞ」
「えっ、コージくん?」
なぜか、光二が居ると言った瞬間、一葉はビクッとしていた。
そして悩んでいた結果
「うん…行くよ」
と答えてくれた。
「よし、これで俺は二人に勉強を教えてもらい、相当頭が良くなる訳だ」
だが疑問に思った事がある。
「で、一葉、気になる事があるんだが聞いていいか?」
いきなりのシリアス(?)なムードに一葉は少し驚いていた。
「う、うんいいよ」
「さっき光二の名を出した瞬間、お前はビクッとなっていたが、何故だ?」
聞く必要も無いが、とりあえず聞いてみたくなった。
「えっ!?」
やはり図星。今も少しビクッとなったのが証拠だ。
「もしかして、俺が居ない所で光二と何らかの行為をしているんじゃないだろうな?」
更に追い討ちをかけた。
「そっ、そんな事ないよ」
確証はないが、嘘をついているのが良くわかる。
「まさか…お前ら付き合ってるのか!?」
そしてまた追い討ちをかけた。
一葉は顔を赤くしながら必死に否定している。
「そそそそんな事ないってばー!!」
「じゃあいったい光二と何があった?」
「な…何もないよ…」
うむわかった。
コイツは絶対に嘘をついている。
そう確信してしまったからには後に引けない、本当の事を聞かなければ!…どうでもいいのだが。
「本当に何もないんだな?」
「うん……」
「本っっっ当だな?」
「う…ん…」
「光二とどんな話をした?」
「えっと、キリトの話…あ」
釣られやすい奴だ。
口が柔らかいと言うのか…。
「そうかそうか、俺の話をしてたか。とりあえず最後まで聞いてやろうじゃないか」
「むむ…」
さっさと話せばいいのに。
でも俺の話をしてたのなら、隠す必要はないだろう…が、絶対に隠さなければいけない理由があったはずだ。
ま、やっと話す気になったみたいだから、気にしない様に…
「あの…コージ君にキリトの誕生日はいつだって聞かれたの」
しようと思ったが、やめた。
なぜならば、こいつは嘘をついているからだ!
…いや、やっぱり追求するのもめんどくさいので、そこで受け入れる事にした。
「気に入らないが、それでいいだろう」
「それでって…ホントなのに…」
「着替えてすぐに行くね」
「ああ」
一葉は自分の家に入って行ったので俺も家に入る。
なんか…やる事ないな。
着替えるのもめんどくさいし…。
あ、俺の部屋にやましい本があったな…一葉が来る前に早く片付けなきゃ…。
ってやましい本なんてあるか!
…と、なんとも馬鹿らしい一人ボケツッコミをやってた所で、ピンポーンとベルが鳴る。
今帰ってきたばっかりだから…一葉はないな。光二か。
「はいはい、今出ますよ」
ドアを開けるとそこには…
「まだ制服姿なのか。不謹慎だな」
予想通り、クール&クールこと光二がいた。
上は長袖の黒服。下は普通のジーパン。
服のセンスは俺並み…いや、俺以下という事にしておこう。
手にぶら下げてる物は鞄。 恐らく、というか確実に中身は勉強道具一式だろう。
「帰ってきたばっかだから仕方がないんだよ。とりあえず入れ」
俺と光二は、俺の部屋へ向かう。
「────で、今日は?」
「ん……数学を教えて欲しい」
正方形のテーブルを取り囲み、勉強開始。
投稿がかなり遅れてしまって、すみませんでした。