【学校】
こちらも修正しました。
「急げ!全力で急ぐんだ!!」
「はぁっ、はぁっ…まっ……てよーっ…」
「遅刻なんて俺は嫌だ!」
「…はっ……だ………からっ…」
さて、なぜこんな事になっているかと言うと……俺が寝過ごしたからだ。
そして、一葉がその場にいたにも関わらず、早く起こしてくれなかった…と言うのもアリなのか?
どっちにせよ、責任は俺にある様だ。
「やっと着いた……!」
校門を通った瞬間、体がかなり軽くなった気がする。
時間ギリギリってところだな。
「……はあっ………はあっ……っ……はあぁぁぁ……」
横では一葉が呼吸を何度も何度も繰り返している。
「大丈夫か?」
「…………は……あっ……」
さすがに可哀相になってきたので、背中を擦ってやった。
「…んっ……ありがと……」
「…礼はいいから、教室行くぞ」
教室へ向かう。
ちなみに俺と一葉は一緒のクラスだ。
光二も…一応。
だからと言って何かが変わるのかと言われれば、何も変わらないと思う。
むしろ変わるのは一葉の方だろう。
俺と違うクラスになったらアイツは泣く…なんて事は無いか。
なんとなく一葉の頭を見てたら、『その事』に気付いた。
「お前…その頭…」
「…あ!やっと気付いてくれた?これ、寝癖なんだよっ!可愛いでしょー?」
「寝癖…?可愛い…?それが…?」
「む…可愛くないの…?」
「こればかりはお前が上目遣いでも…可愛くない…と、俺は思う…」
「えーっ!?」
ガーン!って擬音が聞こえてきそうなくらい驚いていた。
っていうか…
「それ、寝癖じゃないだろ」
「そ、そんな…」
「………」
「?」
俺は一葉の手を取り、頭を触らせてやった。
「……これでも寝癖だと言い張れるか?」
「え……………」
やっと気付いたみたいだ。
「…なんで!?」
「なんでってそりゃあ…全速力で走ってたから乱れるに決まってるだろう」
「でもでも!キリトの髪は乱れてないよ?」
パニック状態になってるからそう言ってるのか…それとも、素で言ってるのか…。
…後者だな。
「長さを考えろ、バカ」
「とっ、とりあえず直してくる!」
ああ、行ってらっしゃい。
って言える時間じゃないんだぞ!?
「もう時間が無いからダメだ!」
「大丈夫だよ!すぐ戻ってくるから!」
「そういう問題じゃない!いいから早く行くぞ!」
「か…髪は女の子の命なんだよ!?」
俺は一葉の腕を引っ張る、が、やはり一葉も抵抗する。
「命を散らすのを覚悟して戦争に行く兵隊さん達だっているんだ!お前も見習え!」
「意味がわからないよ!」
意味がわからないのは俺でも解る。実際、俺もパニック状態に陥ってるからな。
もちろん、ここまで必死になるのには理由がある訳で…
「HRに遅れでもしたら、あの女は何をやり出すか」
「その女ってーのは私の事かなぁ〜?賽野クン?」
負ける。
振り向いたら負ける。
だから負けない。
俺は絶対に負けないぞ。
自分の力を信じ通す。
信じ通した結果
希望の壁は壊された。
俺の後ろにいる誰かさんは、俺の頭をがっしと掴み、ぐぐぐと計り知れない握力で捻った。
俺の目に映った人物は、タバコ臭かった反面、血の様な赤い髪からはとても良い香りがした。
つまり、死の匂い………。
「遅刻な♪」
この女…じゃなくてこの美しき女性は宍戸響子。
俺達の担任教師。(推定27歳)
赤色のショートヘアと、女性なら誰もが望むであろうダイナマイトなボディーから漂うオーラは……差し詰め、獲物の血を浴びたライオンと言ったところだろう。
一言で言うなれば『徒者じゃない』。
そして俺はこの人を世界で一番恐れている。
なぜかと言うと……トラウマが残ってるので話せません。
「ん〜?なんで宮原は泣いてるんだい?」
「うう……キリトが…キリトがいじめるんです…」
いや、いじめてない。
それ以前にコイツの確定事項は" 俺にいじめられた "で決まりになってるのか?いくら何でも理不尽だ。
「ちょっと待って下さいよ、これには深い訳があって…」
俺は今までの出来事を簡潔に説明した。
「へぇ、そういう事…」
いくらこの人でも理由を説明すれば適切な裁判を……
「それじゃあ賽野が悪い」
下してはくれないなんて思いもしなかった。
「そんな、たかが髪型如きで───」
ドガァッ!
鳩尾に衝撃を喰らった、と思った瞬間、俺の身体は見事に吹き飛んで、壁に打ちつけられた。
何とか目を開けて状況を確認する。
あの女、もとい響子先生は足を上げた状態、つまり足を構えた状態になっていた。
そうか、俺、蹴られたのか…。
「髪は女の命なんだよ、馬鹿に出来ない程に、ね。 賽野、お前は一時間廊下に立ってなさい。 宮原は私と一緒に髪を直してから教室に行くぞ」
そして、裏切り者と暴力教師は女子トイレに入って行った……。
今、教室内ではHRをやっている事だろう。
俺はと言うと、腹を抱えて廊下に座っている。
鳩尾蹴られると腹にも痛みが伝わるのはなぜだろう。
「まだいてぇ…畜生、あの女…」
前にも一回廊下に立たされた記憶があるが、その時はこんなに苦しくなかったはずだ。
さて、暇だ。
廊下でやる事なんて何も無い。
という訳で、教室内を観察する事にした。
戸にはガラスが張ってあるので、中が見える仕組みだ。
教卓を見てみると、やはりそこにはグースカ寝てる女がいた。 いつもとまったく変わらないが。
黒板には大きく【自習!】と書かれている。
だが素直に自習する生徒は全然いない。
友達と楽しく話してる奴、机に突っ伏して寝てる奴、その中でも真面目に勉強する奴(光二)…。
一葉は何をしているのだろう、と思い、目をやった。
せっせと紙に何かを書いてる様子だ。
そして俺の視線に気づいた途端、慌てて紙に何かを書いて、その紙を俺に見せつけてきた。
大きい文字でこう書かれていた。
【さっきはゴメン!】
一応許すけど、何らかのお仕置きはしないとな。
……本当にやる事が無くなった。
つまらん。
当たり前か。
………。
寝るか?
ああ、寝てみよう。
目を…閉じる────。
妙な感覚。
ふわり、ふわり。
浮いてる感覚がする。
俺は、目を開けた。
(また…この世界か…)
何もかもが濁った世界。
これは紛れもなく" 夢 "。
だけど、この感覚がどこかリアルで嫌いだ。
こんな夢ならユメクイに食われても良い。
いや、果たして食ってくれるのか?
(今度は何だよ…)
──シュパッ!
まただ。
またあの時の様な映像が映し出された。
でも、今回は病室じゃない。
桜の木と、木の根っこ辺りに、ボーっと立っている人物が見える。
ただその人物は、桜吹雪が舞っているので容姿がよく見えなかった。
(誰だ?)
凝視するものの、やはり見えない。
諦めずに、凝視する。
けど……
(この桜…散りすぎじゃないか?)
誰が見てもおかしい光景だった。
木からどんどん桜が散っているのにも関わらず、減ってない。
奇妙ではあるが、逆に美しくも感じた。
そして
(ん………─────っ!!)
一瞬。
ほんの一瞬。
この一瞬を見てなかったら、永遠に見る事が出来なかっただろう。
一瞬見えたその人物は、
偶然なのか、
偶然じゃないのか、
どっちにしろ信じ難い人物、
宮原一葉だった。
栗色のセミロングに、今までずっと見てきた、忘れたくても忘れられないあの顔。
(間違いなく、一葉だ!)
その一葉は『泣いていた』。
『泣く』と言っても、一つの意味の『泣く』だ。
違う。
俺にからかわれて泣くアイツじゃない。
まるで子供みたいに泣くアイツじゃない。
泣いても泣いてもすぐに忘れるアイツじゃない。
間違いなくこの人物は一葉。
だけど、この一葉は一葉じゃない。
暗く、哀しげに泣いている一葉がそこにいた。
一葉は、言った。
「……ありがとう─────」
《ちっぽけな存在なんだ……》
ゴツッ!
「痛っ!!」
頭に響く衝撃。
『目から火花が出る』とはこの事か。
それにしても痛い。
「このまま永久に眠らせてやってもいいんだぞ?」
目の前には赤髪の女教師…響子先生がいた。
周りもザワザワとしてる。
もう一時間目は終わったのか。
そして気になる事が一つ。
響子先生の手にはハンマーらしき物がある。
つまりそれで……。
考えたくはないな。
「…すみません」
「反省の色が感じられないが…まぁいい。 ほら、とっとと入った入った」
あの一葉は一体…?
桜の木も…どこかで見たような…。
「ありがとう」って言葉も最近聞いた覚えが……。
それに最後の[ちっぽけな存在]って…?
そもそも、あの夢自体が何なのか…。
…所詮、夢だよな。
「か、鞄なら机に置いといてあげたから…」
ん?この声は。
「あの…その………本当に…ゴメン……」
「…はぁ…」
俺は呆れ気味にため息をつき、席に座った。
「キリト…?」
「許す、が、今からお前の言うことは全部無視する。喚きたきゃ勝手に喚け。はいスタート」
「ええっ!ヒドいよ!」
横で騒いでる奴がいるけど、無視。
(さあ、やっと授業だ…これで暇を持てあま…………)
朝、急いでたから教材を忘れた。