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【試験─2】

あーあ……。


結局は俺もバカだったんだな…。



いいよ、もう。放っといてくれ。頼むから俺を起こそうとするな。











やっぱり、それでも私は…。


がたがたと豪快な音を立てながら、机を蹴る様にして立ち上がる。


あの時の言葉を思い出しながら。



《…宮原、お前は…やるべき事があるだろう…?》



こんな状態で?試験をやれと言うのですか?響子先生。


私はもう、耐え切れません。



私の得意な体育だったけど、


一目散に教室を飛び出した。


行く所は決まってる。


「こ、こらっ!君!戻ってきなさい!」


戻ったら絶対に損することを、私は知っています。


「だからっ……戻れません!」


言った後に少しスッキリとして、その効果が手助けとなった。


いつもより廊下を走る速度が速くなった。気がする。




呼吸が荒くなりだした所で、やっと着いた。


当然の如く、そこにいた先生は私を見て驚いた。


たぶん髪がボサボサだったからとか、そういう理由じゃなく。


「あ…あなた、何をしているの?」


対して返事をする事もなく、風に吐息を切らせながら、ベッドに駆け寄る。


「キ…リト…」



まるで期待通りの死に方が出来たかの様に。それはキレイに微笑んでいる表情だった。


瞬間的に、言葉では言い表せない悲鳴を出して私は泣いた。



「宮原、落ち着くんだ」



肩に手を置かれ、今更落ち着けなんて言われても、意味がない。


「大丈夫だ。錐斗は寝てるだけ」


背中を優しく摩られる。


その温かさはキリトみたいで、キリトじゃなかった。


彼はだれなのか。気づくのは私が泣き止んだころ。




「…試験を放棄したの?」


「放棄せざるを得なかった、としか言えません」


私とコージくんは、今、保健室で尋問を受けている。


対応してるのは、コージくん。


また、私のせいなんだ。


「…こ、コージくんは…」


言う前に

「いい」と小声で囁かれた。


だから口を閉じてしまった。


「彼女の気持ちも考えてあげて下さい。…彼女だけでいいから。俺は、ただ、気になっただけで」


コージくんの口から、私を庇う為の嘘がどんどん出てくる。


だけど私は止められなかった。なんて言えばいいのかわからなくて。



「…お前ら、何やってんだ?」


一文字も聴き逃さなかった。つい体が反応してしまって、声の方向に向かう。


「あれ、俺も何やってんだ?…ここって保健室?」


「き、キリト!大丈夫っ!?」


「うお!な、なんだ急に!?」












事情を聞いてみれば、どうやら俺は試験中に気絶したらしい。


あの女の一撃の当たり目が、それほどやばかったんだろう。


いや、それにしてもだ。


「…試験は?もう終わったのか?」


「正確に言えば、そうだな。時間的には終了している」


あちゃー…と思い、舌打ちして頭を掻いた。


…微妙に嬉しかったが。


「宮原と俺は、途中で放棄した」


「…放棄?放棄って……え!?」


驚いた。


放棄。その言葉を見れば一目瞭然。


一葉は何も言わずに俯いている。


「なっ…なんで」


悲しさが含まれてたから、疑問系で言えなかった。


「……恥ずかしながら、錐斗が気になったもので、試験中に教室を飛び出してきた。でも、体育と英語だけだ」


「…なんで」


二言目にも同じ言葉しか発せられない。


疑問と言うか、疑問じゃない。


「………試験って、特殊な事情でできなかった人は、再度挑戦できるんだよな?」


その問いには保険の先生が答えた。


「…一応。賽野君、あなたはね」


咄嗟だった。


「俺はいいから、一葉と光二に…もう一回やらせてやって下さい」


考えてもいない。咄嗟に出た言葉がそれだった。


試験がやりたくないからじゃなくて、俺の本音。


俺自身はどうでもいい。今更やったところで低い点なんだし。


それ以前に…。


「…宍戸先生には話しておきます。今は昼休みなので、皆さんは教室に向かって下さい」


そこで会話は終了した。




一時間に一教科じゃない制度の学校は面倒くさいな。なんて思い…。


昼飯はまた屋上で食べることにした。


今日は珍しくも俺・一葉・光二、三人の組み合わせだ。


一葉は

「カナちゃんに話したら『いいよ、行ってきなさい』って…」と。あの人は本当にいい人だな。一葉の保護者にでもなってほしいくらいだ。


光二は

「話したい事がある」と。



一葉と光二は既に購買のパンを食べていたので、俺も食べることにした。


「ふむ、バターロールは初めて買ったが、なかなか美味だな。舌の上で踊るように…」


場の雰囲気を必死で変えようとしているのに

「………」って。なんだ、けしからん奴らだな。


「…はあ」


仕方ないからため息をついた。そしたらバターロールが急に不味く感じた。


「…錐斗」


「ん?」


「三人で試験ができる様に、俺がなんとかして教師達に抗議してみる。失敗したら…」


なんてことを言い出しやがる。光二、お前はバカメガネか。


「あのな、俺はいいんだよ。一葉と光二が受けられれば」


本当の事だった。ちゃんとした理由もある。


「それに、保険の先生は俺だけがやれるとか言ってたけど、国語と社会と数学の解答用紙を見れば、絶対に意見が変わるはずだ」


一葉が

「どういうこと?」と口を挟む。


「相当やる気がなかったせいか、名前だけ書いて解答欄には何も書かなかったからな」


どうだ、と威張れることではないのに胸を張る。


二人はぎょっとした目で俺を見る。

「あなたはバカですか?」とでも言いたげな表情を作って。はい、バカです。バカ万歳。


「……本気か?」


「本気も何もないだろう。本当の事だ」


今となってはいい思い出。すっきりさっぱり忘れよう。と考えていた矢先の事だった。


「じゃあ…尚更だよ」


「尚更?」


「うん、尚更」


今度はこっちが

「どういうことだ?」と聞いた。


「キリトはその解答を無かった事にして、最初から最後まで全部やるの」


それは驚きざるを得なかった。


「…俺はやりたくない」


「ダメ!やるの!」


そこである疑問が頭の中で生み出される。


「その前に先生達の許可が出たら、の話だろ?」


「絶対に許可は貰える、いや、貰うよ」


な、なんて頑固な奴だ。考えを変えようとは思わないのか?


「俺もちゃんとフォローする」



微笑ましくもならん。呆れてため息をついてしまう。


…本当に頑固で、バカでどうしようもない。


ああ、バカ万々歳さ。



「賭けだってあるんだからね」



…俺は勘違いしてたのかな。


この二人に感謝すべきだ。

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