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{ある少女の追跡}

【変動─2】の別視点Ver(番外編?)です。このお話は本編の物語に影響しません。






見てはいけない光景を見てしまった様な気がする…。と、冷や汗をだらだらと流しながら、私は思った。




「な、な、な、なんでーっ!?」




たまたまシャーペンの芯を買いに外に出かけただけなのに!


一葉と光二くんがデート(?)してる所を見てしまうなんて!


これは友達として、見届けないと!と、電柱の陰で二人に熱い視線を送りながら、堯野可奈子(たかの かなこ)は思った。



「カナちゃん、カナちゃん」って…私にばかり構ってたあの一葉が…ううっ。と、一粒の涙を流し二人をストーキングしながら、私は思った。


おっと、いけないいけない。二人を追わなくちゃ。



二人が着いた先は…


「…ここって…」


ハンバーガーショップよね?と、首を傾げて頭にハテナマークを浮かべながら、私は自問した。


うーん…本当にデートなのかしら?




「うわっ…あんなに頼んじゃって…光二くんも呆れてるじゃない…」


ついつい思った事を口に出してしまった。小声で。



少し経つと、二人は頼んだバーガーを運んで二階へと行ってしまった。


あ、私も注文しないと…。




とりあえず、私は二人より少し遠い席に座った。


一葉は一つ、ハンバーガーを口にする。


なっ…よくも男子の前でそんな風に食べれるわね…。と、ブツブツとおばさん臭く、私は思った。


すると光二くんが何か喋った。



やっぱり聞こえづらい…。なんて言ってるんだろ?


見ると、二人はどこか落ち込んでる様子だった。


…うう〜…話が見えない…どーゆー事…?




でも十秒くらい経ったら、すでに一葉は二つ目のハンバーガーに突入していた。ガツガツと。


はあ…。と、私は呆れ気味にため息をついた。



その瞬間だった。


あることを思い出した。


来週…明後日は試験!


こんな時にあの二人は何を…。言葉を紡ぐ前に、もう一つ思い出した。






『ねえ…カナちゃんって…好きな人いる…?』


なんとなく寂しげに見えたけど、あくまでも笑顔で、一葉は言った。


『んー?急にどうしたのー?』


話をはぐらかした訳ではないが、質問を返さざるを得なかった


『……ちょっと…気になって…』


いつも錐斗くんの話ばかりだったから……って。


…そういう事か。少しからかってやろう。


『…錐斗くん…だったらどうする?』


『…えっ!!!』


一葉は本気で驚いていた。


『顔は…まあ中の上ってカンジだけど。彼、優しいじゃない?』


『ほ…本当に?本当に!?』


一葉はぐぐっと顔を近づけてきて、じーっと私の瞳を見る。


『うん。本当』


私がそう言うと、一葉はよろよろと弱った動きで離れていった。


『そっ…か………』



しゅんとおとなしくなってしまった一葉を見てると、なんだかいじらしくなって…


『…一葉は?』


意地悪く、質問を返した。



『……い……』


『い?』


『………いない…よ…』


…本当に嘘をつくのがヘタ。一葉はそんな子だって、私と錐斗くんがよく知っている。


『ウソ。錐斗くんが好きなんでしょう?』


『っ!!』


図星だった。


びくっと体を震わせたのが何よりの証拠。



動揺を隠しきれずに───


『………』


一葉は───


『……………』


───泣いた。


『…う…くっ……うえぇぇ…』


『ちょ、ちょっと、なんで泣くのよ!?』


予想の範囲外だった。私の頭の中の脚本では、一葉は泣かないはずだった。


『カナちゃ…カナちゃんの…ひっ…ぐ……す…好きな人が……きっ…キリトで……っうぐ……ショックで……ウソ…つ……ついちゃった…から…』


『………』


声をつまらせて尚も一葉は喋り続ける。


『…私…も……キリト…す……す…き……だ…から……』


『……一葉…』


何とも言えない罪悪感が私を包み込む。


『…そうだね』


『……ひ…く…』


『そうだよね…』


一葉の想いは本当なんだから、謝らなくちゃいけない。


『ごめんね、一葉…。私もウソついちゃったの』


『…?』


『…その…別に嫌いじゃないんだけど…錐斗くんのこと、異性として好きって、さっき私が言ったでしょう?あれ、ウソなの』


『………』


『からかおうと思って言ってみたら、一葉の心を傷つかせちゃったみたいで…本当に、ごめんなさい』


私は深深と頭を下げた。色々な感情を込めて。


普通の人なら幻滅する。さすがに一葉だって…簡単には許してくれないだろう。


『………か…カナちゃん』


『…え?』


『…カナちゃんの…本当に好きな人を…教えてくれたら……』


許す。


たしかにそう言った。



一葉は優しすぎた。優しすぎて素直すぎた。



『……好きな人?』


『う…うん』


『…一葉に決まってるじゃないっ!』


『わ、わわっ!?』






今思うと、あの答えはせこかったなあ…。なんて、過去に浸ってる場合じゃない。


これでやっと…今更理解した事がある。



あの二人は…たぶん…いや、絶対…デートしてる訳じゃない。


何かの都合で一緒に出かける事になっただけ。そう決めつける。


少しでも疑った私がバカだったな…学校で一葉にまた…謝らないと。と、堯野可奈子は自粛した。

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