4.見守りカメラ
仕事が忙しい僕に代わって、田舎の母が「何かあったら心配だから」と、ネットワークカメラを誕生日に送ってきた。
防犯にもなるし、スマホでいつでも部屋の様子が見れるという。正直、一人暮らしの男の部屋なんて見ても面白くないだろうが、親心だと思ってリビングの棚に設置した。
ある夜、残業中にふとアプリを開いてみた。
画面越しに見る自分の部屋は、静まり返っている。
「……あ、電気消し忘れたかな」
リビングの照明がうっすら点いている。でも、出勤前に消したはずだ。
よく見ると、画面の端に映るキッチンのゴミ箱が、朝出したときよりパンパンに膨らんでいる気がする。
「泥棒か?」
血の気が引いた僕は、すぐにアプリの『録画履歴』を遡った。
15時。誰もいない。
17時。誰もいない。
18時。急に照明がパッと点いた。心臓が跳ねる。
だが、画面には誰も映らない。ただ、部屋の空気が少し動いたような違和感があるだけだ。
怖くなった僕は、カメラの首振り機能を操作して、死角になっている場所をくまなくチェックした。
ソファの下、カーテンの裏、クローゼットの隙間。
誰もいない。
「なんだ、気のせいか……」
安堵してスマホを閉じようとした時、画面の中の「ある一点」を見て、僕は絶叫した。
すぐに警察へ電話しながら、僕は全速力で自宅とは逆方向の駅へ走った。
解説
この話の「ポイント」は、カメラが「どこを向いていたか」。
主人公は、カメラを「リビングの棚」に設置しました。通常、カメラは部屋の中(ソファやドアの方)を向いています。
しかし、途中で「照明が点いた」のに「誰も映っていない」という描写があります。
主人公は、死角を確認するために「カメラを操作して首を振らせた」はずです。
最後、主人公は何を見たのか?
それは、カメラのレンズのすぐ目の前に貼り付けられた、「部屋の中を写した写真」です。
犯人は、主人公がアプリを開いた時に「部屋に誰もいない」と思い込ませるため、あらかじめ撮っておいた「無人の部屋の写真」をレンズの前に固定していました。
しかし、主人公がカメラを「操作(首振り)」してしまったため、レンズが写真の端から外れ、写真の裏側に隠れてカメラを覗き込んでいた「誰か」の目が画面いっぱいに映し出されたのです。
「ゴミ箱が膨らんでいた」のは、犯人が部屋でくつろいでいた証拠。
そして「照明が点いた」のは、センサーライトではなく、犯人が背後で本物の電気を点けたからです。




