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天下無双の男(参)

 見ず知らずの子供にスマホを与えるなんて普通じゃない……よね。でも、普通だなんて通用しない世界でこの人は生きているんだろうなって、そう思った。それだけ特殊なんだ、魔術師というものは。


「んじゃ、遠慮なくいつでも連絡しておいで~。あ、俺からも連絡するから無視だけはしないでねえ? こう見えて意外とさみしがり屋なのぉ、俺」

「は、はい」

「了解っす」

「あ、それと君……香菜恵ちゃん」  

「はい」

「ポケットに入ってるそれ、何かな?」


 私のズボンのポケットを指差す鬼鞍さんにドクンッと心臓が弾んだ。この人、何でも察知できるの? 私は小刻みに震える手でポケットからそれを取り出した。すると、それを見たお母さんたちが驚いている。


「「そ、それは……!!」」

「へぇ~随分と古そうな代物だ。それ、君の魔導具?」

「香菜恵、何であなたがそれを持っているの!?」

「ご、ごめんなさい!」

「いや、香菜恵。父さんと母さんは怒っているわけじゃないんだ。ただ驚いているだけだよ、ごめんな」

「うーん、それってどこで手に入れたんです?」


 鬼鞍さんにそう聞かれ、お父さんは顔をしかめながら語りだした。


 お父さん曰く、私が持っているこの腕輪は五十嵐家が代々受け継いできた大切な物らしい。けれどこの腕輪がなんなのか、それを知る者は誰一人いなかったんだとか。ただひとつ分かっていたことは『“導かれる者に託せ”』という言い伝えだけ。この言い伝えの意図も分からぬまま、現代まで五十嵐家が保有しつづけたのがこの腕輪だ。


 そして私が物心つく前から、この腕輪をどこへ隠しても私が必ず見つけ出して手に持っていたらしい。それを不気味に思い、危険視したお母さんたちは外にある蔵にこの腕輪を厳重に保管した。


 定期的に腕輪の確認をしていたお父さんが、この腕輪がなくなっていることに気づいて、それはもう大騒ぎだったんだとか。私たちにはそのことを秘密にしていたみたいで、今日の今日まで言い伝えのことやこの腕輪のこと、何も知らなかった。


 そんな無知な私がこの腕輪を持っていた理由は、ある日突然、枕元にこの腕輪が置いてあったから。『これだけは絶対に手放したくない。だって私のものだから』という妙な気持ちに駆られて、今の今まで秘密裏に持ちつづけていた……という経緯。


「あの言い伝えは本当だったのね、信じられないわ」

「ああ、それがうちの子だったとは驚いたな」

「へぇ~。ところで香菜恵ちゃん、それ扱える~?」


 この腕輪の正体が魔導具だなんて知らなかった私がいきなり扱えるわけがない。けれど、なんとなく直感で『扱える、私なら』という謎の自信がある。


「使ったことがないので明言はできませんけど……」

「ハハッ、だよねえ! そっかそっか~! まあ、なるようになるでしょ~。これからが楽しみだね~!」


 なんとかなる……か、なればいいんだけど。私がこの腕輪に選ばれた者ならいいなって、願うばかりだ。

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