どぎつい選択ゲーはお断りしたい
結局1週間経ってしまった!麦畑だよ( ; ; )
申し訳ございません!!続きをどうぞ!
「いい加減吐きな!」
外の草原が嘘のようだ。
殺風景な留置所で現代の会社員が聞きようのない暴力的な音が繰り返し響いていた。
「さあ、楽になりたきゃ吐きな!吐かなかったら殺す。吐いたら優しく殺す!!」
ソレ、昨日モ聞キマシタ。
非現実味を帯びた空間に1人の男が両手を鎖で繋がれていた。いやまあ、昔はこれが普通だったのかもしれないけど。ちなみに、鎖には意味不明な文字が刻まれている。
昔の人だって、流石に牢屋で使うような道具に古代文字的なものを刻むことはないと思う。
そう思った円居誠の目は最早、死んだ魚のよう…。
『動きが見られない。ただの屍のようだ。』
死んでないよ。身体的には。
某RPGにそっくりのスクリーンに手を伸ばそうとする。当然、拘束されているので両腕は動かないが、代わりにホログラムの手が出現した。しかも、その手は彼の思うままに移動することが出来るらしい。もう突っ込むのも無謀に思えてきた円居は虚空を見つめる他なかった。
「ほら、ホラ!吐けぇっ!!」
エルフの振るった鞭が地面を振動させる。…普通に威力がやばいだろ、アレ。
それに、今のセリフ。別の意味に聞こえるんだが。強制リバースさせる気か?まあ、例えそうだとしても最近ロクな食事を取っていなかった俺には関係のない話だ。
とにかく、これではっきりした。俺は同じ時間をループしているんだ。それも、現実とファンタジーの境目で。
…いや、どういうことだ?俺が何をしたっていうんだ??最近はお偉い様の接客をしていなかったし、仕事上のミスもしていないのに。やっぱり、過労死ー
ここで、彼は思い出した。数日前に1人パソコンに向かって残業していた時のことを。
確か…連続徹夜に身体が耐えられなくてパソコンの上で眠りそうになったんだっけ。それで、眠気と格闘してるうちにコーヒーが飲みたくなってー。
「間違えて紅茶を飲んだのか!」
「は?何を言っている?」
しまった。どうやら口に出していたらしい。拷問官が訝しげにこちらを見ている。
さて、どうやって誤魔化そうか…。
「コウチャ?なんだ、それは?名前か??」
彼女は小首を傾げた。
…ん??
もしかして、紅茶を知らないのか?
状況から鑑みるに、此処は俺の世界とは別物らしいのでたとえこの世界に紅茶が存在しなくとも不自然ではない。
しかし、ここで間違っても「知らないんですか?」と言ってはいけない。相手の機嫌を損ねる場合があるからだ。俺も新人の時はこのセリフをうっかり吐いてしまって大変だったなぁ。
「…紅茶は、私の地元の飲み物です。植物を発酵させ、お湯を淹れてお湯に色と香りを付けます。」
円居はなるべく丁寧な口調で説明を始めた。それに対し、拷問官は終始不思議そうに彼の話を聞いていた。
「お湯に色と香りを?植物から搾り出すのではないのか??」
「はい。温かいので冷えに良いんですよ。」
本来なら此処で相手の地域の特色を挙げて比較すると良いのだが、何せ彼女の国は俺の知識外…というか本当に何処だよ!?
「ほう…。」
彼女はちょっと興味を持ってくれたらしい。円居は拷問官が自分の話に興味をもってくれたことを嬉しく思った。拷問官だけど。
彼女の隣にあるピンクのメーターが少し上がった。
△△△△△
さて、話を戻そう。
連日徹夜に疲れ果てた円居はコーヒーを求めてホットドリンクサーバーに向かったわけだが、どういうわけかコーヒーと紅茶を取り間違えてしまった。
どうしてコーヒーと紅茶を取り間違えたか?
強いて言うなら、ドリンクサーバーの位置を正確に把握していなかったからだろうか。会社で飲み物を飲むときは、大体近場の自販機だったし。
しかし、どうして紅茶だと駄目なのかという疑問が残ることだろう。
結論から言うと、円居誠は紅茶を飲んだことがある。むしろ好物の部類であった。でも、彼にはトラウマが出来てしまった。
それだけだ。
要するに、紅茶を口に入れるとトラウマを思い出して幻覚に近いものが見えたり意識が飛んだりするのだ。
確かに幻覚や気絶の類なら、唐突な逮捕やゲームスクリーンの空中表示、美少女拷問官の出現にも頷ける。もしかして、今までの変な顧客も仕事の疲れからきたビジョンだったとか?
『現実ですよ?勇者マコト。』
円居は精神を現実まで引きずり戻された。
『貴方様にはミッションが残されています。進むためにはミッションを達成する必要があります。』
残念なことに、俺はこの意識はっきり系ゲームボードの言いなりにならないとループから抜けられなくなってしまったらしい。
それにしても、随分とファンシーなスクリーンだ。綺麗なフォントも、改めて見てみればテンプレ乙女ゲームのそれだ。まあ、恋愛ゲームなら大体こんな感じになるか。
『しゅいんっ』
あ。効果音は自前なんだ。
円居の目の前には、これまた洒落た横向きバーが3つ出現していた。バーにはそれぞれに行動パターンが刻まれている。
『ミッション1:エルフ拷問官の猛攻を止めよ』
《貴方に好きな人はいますか?》
《命だけは勘弁してください》
《貴方に支配されたい》
うわぁ。全部酷い。とりあえず、本当に恋愛攻略なのは分かったけれど。最後のなんかモロM野郎じゃないか…!!
選択に悩んでいる間も、拷問官は止まらない。
「どうした?吐かないと永遠に終わらないぞ!吐けぇええ!!」
彼女の鞭が円居の肩を掠めた。
「イタっ!?」
恐る恐る肩に目を寄せると、視界に映るは真っ赤な太陽。
ヤバイヤバイヤバイ!!少しでも、放置すればなんとかなると考え始めていた自分を殴りたい!これでは会社どころではない。普通に死んでしまう。
円居は渋々3つのうちの1つを選択することにした。せめて、変態よりかはまともな選択にしたいところだ。
「うーん。比較的コレがマシ、かな…?」
マジックハンドもどきは彼の思念に反応して選択肢をクリックした。
「命だけは勘弁してくださいっ!」
選択肢を選んだ瞬間、円居の口から選んだ台詞がすらすらと紡がれた。台詞に関してはただ棒読みするのではなく、勝手に感情が入るようになってるらしい。地味に最新すぎて、先程のセルフ効果音のことを忘れてしまいそうだ。
「ほう?」
拷問官は長い耳を小さく動かした。
「はぁ?だったらさっさと吐けや、ゴラァ!!」
エルフは激昂した。そして、遂にその矛先は円居を掠めるどころの騒ぎではなくて。
「グアアッ!!!」
り、理不尽すぎる…。
鞭が自身の首にクリーンヒットした円居の意識は奈落へと沈んでいった。
『ミッション失敗!
死因:頸動脈損傷による脳卒中』
サバイバル系恋愛ゲーム(タテヨミとかで見かけるね☆)の選択肢って、ロクなのないよね。




