美少女詐欺
私の作品は、毎度毎度、思いつきでキャラを出して、キャラクターを活かし切ったことがないんですよね……。
一度出たら、そのシーンのみの登場で、再登場しないと言うか。
そもそも回想が多い。
回想のためのキャラと言うか。
あと付けで設定を生やしているせいかと思われます。
精進しますです。
一人部屋をゲットし、快適な寮生活を送っていた。
部屋に画材を持ち込み、授業が終わると籠って夕食の直前まで粘る。
ノックの音で現実に引き戻された。
この部屋に人が訪ねてくるのは初めてだ。
早く続きを描きたいので扉へ行くのも足早になる。
ちょっなんでこんなところに荷物が。早く出たいのに転けそうになるだろう。
もちろん散らかしているのは私しかいない。
無責任な文句だ。
「どうしましたか」
扉を開けて、出る。あまりに部屋が汚いので、部屋の中が見えないように後ろ手に閉めた。
相手はじっとこちらを見詰めてきた。
誰だろう。
「ミリルさん?」
当たったようで、おかっぱ頭の大人しそうな彼女は、頷くと控えめな声で言った。
「入ってもいい?」
「どうぞ」
反射で答えてしまったが、もちろん部屋は汚いままだ。
ミリルを招き入れるが、座ってもらえるような場所はない。仕方ない。用件を済ませてもらう方向に転換しよう。
「えーっと、久しぶりだねえ。今忙しくって。宿題が終わんなくってさあ。難しい問題なんだよね。ほら馬鹿だし。ええっと、何か用事?」
何か用事ってなんだ。もっとましな言い回しはないのか。直球か。気不味い。
「ううん。フィンちゃんが困ってないかと思って」
普通に様子を見に来てくれたようだ。一般的な親切な人だったか。何で来たんだとか穿ってしまわなくて良かった、セーフ。
「うーん、まだ慣れなくて」
ホルさんが言っていたことを拝借してしまった。難解な会話は陽キャの語彙に限るな。ありがてぇ。
「美術の宿題?」
そういえば出しっぱなしだった。
堂々と部屋の中央にイーゼル。そりゃ気付く。
「これは、あー、宿題というか」
「大変そうだね」
「そ、そそそそうかな」
「美術の授業まだだけど、出来るかな。心配」
「大丈夫だよ」
キャンバスに描くようなことはたぶんないし。予算上も考えづらい。たぶん粘土とかだろう。
「あのね、お母さんから連絡来てて」
「うちも」
食い気味に答えてしまった。落ち着け。
しかし、それからミリルの様子は、ホッとしたように見えた。
「それでね、」
ミリルとは夕食になるまで話し、その間にいつの間にかベッドへの道がミリルの手によって拓かれており、何がどこにあるのか謎だった室内が簡単ながら仕分けされ、まだまだ汚部屋ではあるが生活の基盤は存在していそうな空間に様変わりした。
洗濯物がひとまとめにされただけでもだいぶスッキリしたし、途中でミリルが消えたかと思うとバスケットを持って現れ、洗濯物がそこに詰め込まれた。紙類は机の上に集められた。これが定位置ってやつか。
「窓開けないでね」
「開けないよ」
残念そうなものを見る目をされた。
分かっていないのがバレている。
「風で飛ぶから。早く書類、何とかしなね」
そういうことか。
まあ、絵が乾くからやっぱりどうせ窓は開けたくないんだけど。
「元気そうでよかった。思ったより明るそうだし」
「そう? 暗めかと思ったけど」
「思ったより、ね。ホントに大丈夫? ブスって言って振られたそうだけど」
姉になってほしいと頼んで断られたことになっていた。
ミリルの訊き方は、おずおずといった感じだった。
「フィン。こんな事、訊いちゃって、あたしのこと、嫌いになったかもしれない」
「なってない。あと、ありがとう」
それはそれとして、詳しくは知りたくないと直感する。余計なことのような予感だ。
「ミリルは、伝えたほうがいいと思ったんじゃなく、聞かせないために確認に来たんじゃないの」
「そうかもしれない」
「違うの?」
「……」
「ミリルちゃんって呼ぶ?」
「ミリルでいい」
「夕飯食べよっか」
「いいね。お腹すいた」
「フィン、食堂の当番、今度する時はフィンもね」
「え゛」
「学園で一番の美少女になったら、これから、嘘じゃなくなるね」
夕飯を食べながら、ぽつりとミリルが言った。
不可能なことをおっしゃっている??
美しさなら誰にも引けを取らないと、上級生を口説いたとか。本当に私の話かな。
ミリルはブスではないし、磨けば光るタイプだろう。しかし、ブスの私は流石に。
お金の掛かる学園に入ってきた理由を訊いてもいいだろうか。今度、どちらかの部屋に行った時に訊こう。食堂では耳目があるし。
キャラが増えると、把握しづらいのでメモしようかと。
フィン
主人公。
ホル、モモ
同クラ(フィンから見ると隣のクラス)。
ミリル
同級生。フィンの母の友人の娘。五歳くらいの頃にフィンと遊んでくれていた。