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美少女詐欺で今日も生きる  作者: 原竜胆
第一章・美少女だから楽勝!!!!のはずが
2/4

お姉様がいない生活

ホル、モモと付けてから気づきましたが、もろ特定の作家様の作品に登場するキャラクターでした。

深い意味はないです。

 本当は、カネで買わないかと入学前に言われていたのである。

 学園の卒業生である母がすすめてくれた。

 だが断った。姉妹の儀式は伝統だが成績や卒業には(さわ)りがないと言う。卒業後にも影響しない。

 人によっては生涯の友となると言うだけだ。

 仕事の交際にも影響はあるだろう。

 しかし気が乗らなかった。


 姉になってくれそうな人に目星をつけて、教員に伝えれば、なぜかその人に金銭が渡る。

 受け取っても姉になることは強制ではない。

 本来、上級生からのお願いであるものを、新入生の方から相手を指し示すというに過ぎない。

 大っぴらにはされないが、秘密ではないし、禁止されてはいない。

 相互に同意があって上級生から改めて下級生を名指しする場合もあるくらいで、そもそも上級生からしか頼めないという決まりはないのだ。

 なんなら姉妹自体、校則ではなく、生徒が自主的に(おこな)っている習慣なだけ。


 子供の頃から、母や父の紹介で交友関係を広げてきた。

 生まれがお貴族様なので、仕事のようなものだ。ひたすら退屈だった。今でも続いている友人など一人もいない。

 やたらに他人のプライベートに詳しくなっただけである。正直、知りたくもないし、他人の事情が分かってしまって、座りが悪いだけだ。不倫とか……。


 母から姉妹の儀式のことは聞いていた。お金を出してもいいことも。

 しかし、また無理矢理知り合いを作って何になる。

 私はすっかり人間関係を軽視していたのだった。


 単独行動は浮く。

 少なくともこの学園では。

 気にはならなかったが、将来に何の関係もないと分かっていても、可笑(おか)しなことをしているような気がしてくる。

 姉を持っておくんだったか。


 化学の授業で同級生に声を掛けられた。

 相手のクラスは、こちらのクラスと合同授業をやるのは初めてのクラスで、知らない顔だった。

 上級生を紹介しようかとコソコソ話をするような声音で言ってくる。

「なんで」

 と私が聞き返すと、逆に、何でってと、お茶らけられる。

 私に向けて特別にとは思えないので、おそらく紹介することを何人かに行うつもりなのだろう。

 既に紹介して、誰かと誰かは成立したのだろうか。というか、上級生に詳しい同級生と言うのは、厄介な気がする。大抵、情報通で、そう言った(やから)は、何か聞けば他人に噂として広げるのが早いのだ。話した時の印象すら、言い触らされる可能性がある。

 推測に過ぎないけれども、自分が思うより、明るく愛想よくノリ良く答えておいた方が、得策かもしれない。

 そう考えて、げんなりする。こいつからの評判が私はほしいのか。

 それはいらない。つるみたくはない。

 しかし、可笑しな奴としてブラックリストに乗れば、何かあった時に、たちまち疑われる。

 大概、やんごとなき事情は私のような情弱にはあずかり知らぬ所で進行するのだ。問題は突然やってくるのだ、知らんけど。

 あえて情弱をやっておいて、どの口が言う、という話だが。友達作りに精を出しているわけではないくせに。


 その時、まごついていると、思わぬところから助け舟がやってきた。

「ほーちゃん、何やってんのー」

 話し掛けてきた人物に親しげに話し掛けるおさげの少女。同クラスではないので、もう一つの方のクラスの誰かだろう。

 女性らしい(まど)かな雰囲気の楽しい事が好きそうな少女で、この少女と知り合いならばと私の方針が決まる。

 クラスの中心にいるリーダータイプかもしれないが、ガツガツした真剣なタイプではなく、遊び人な傾向かもしれない。

 だったら気弱に反応しておけば良いだろう。

 ノリが悪い事が分かれば離れていくだろうし、手伝ってやろうとやたら絡んでくる姉貴分でもなさそうだ。


「そういえば、なんていうの?」

「あん?」

「名前」

「ああ、名前な。俺はホル」

 俺っ()だった。

 ハンサムなあっさり顔にスラッとした少年のような体型で、確かにしっくりは来るけれども、声も肌質も普通に女性なので若干驚く。

 とは言え急に話し掛けられた時点で既に驚いてはいたが。

「そっちはお友達?」

 おさげの、いかにも女の子という感じのふわふわした雰囲気の少女の方にチラッと目をやりながら、()いてみる。

 すぐ返事が返ってくる。

「さっき知り合った! まだ入学式終わって一ヶ月経ってないもんな。いつもなら春の一週間ってあっという間なのに。やっぱ慣れない環境のせいかな。アンタもなんかあったら、頼っていいぜ!」

「ほーちゃんも新入生でしょーが」

 少女の突っ込みが入る。

 はははっとマジで笑って、ホルと名乗った若木のような少女は、優しくおさげの少女の背中を手のひらで叩いた。

「いいってこと。あ、それでさ、こっちはモモ。いいやつ! 優しいし、面白いし、可愛い」

 そういうご関係か……と理解しかけたが、おそらくそうではない。

 フォローが上手い“いいやつ”はお前なのでは? と思ったが、いい雰囲気なので黙っておく。

 おそらくホルなる同級生とモモなる同級生と直接サシで話す機会に、偶然、入学してまもなく遭遇したのは幸運なのだろう。

 人間関係の運、使い果たしてないかなと思わなくもない。

 他人の名前を知ってしまうと、忘れた時に気不味いなと思案するうちに、二人は行ってしまった。

 そういえば本題なんだっけか。

 応えてないな。

 まあいいか。


 やはり、二人はたびたび目立っていた。

 そして、隣り合っている二つのクラスは、片方のホルとモモがいるクラスは明るくテンションが高く、私のいるクラスの方は、ガランとして人がいない時あり、あるいは、人がいても読書して静かにしている者やら、親しい者で固まって話す者やらありと、比較的大人しいようだった。

 こちらのクラスは、他クラスに知り合いがいる者もちらほら見受けられる。その様子は、入学以前からの知人と見た方がしっくりくる。入学式に知り合っただけにしてはグループ単位でのつるみ方が板に付いているように見えるのだ。今のところ問題もなく穏やかなクラスである。

 化学の合同授業の翌日、はたと気付いた。

 姉がいないことを知られていたのか。

 たまたまと言うことも有り得るが。


「そこ好きなのー?」

 二回目の邂逅(かいこう)は、二日後の昼休みだった。少し、考えすぎたかもしれない。

 あり得ないとは分かっていても、思いを馳せたからだと思えてしまう。舌打ちしたい気分だ。

 会うつもりがないなら考えなければ良かった。

 陽キャ確定の相手なのに、つるむと気を遣う。

「ねえ、ごめんねー。こっちは名前教えたのに、聴かずに別の人のところ行っちゃってー。ちゃんと訊けば良かったよねー。それでなんて言うの?」

「名前であってます? モモさんですよね」

「そうだよっ。あなたは?」

「フィンです」

「わー似合う。ぽい〜」

「えっそうですか」

 意外なことを言われてタジタジになってしまった。喜ばすのが上手い人だな。

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