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テト  作者: 安田丘矩
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出会いは突然に、再開は必然に

そういえば、まだ蝉が鳴かないですね。

もうそろそろ出てくる時期だと思ったんだけど、

蝉もこんな暑いと土から出たくないのだろうか。

ただ、家の庭木で大合唱を朝っぱらからされるので辛い。

合唱で目が覚めた挙句目覚めが悪いため、網を持って外へ出て追い払う。

そんな時もあったなぁ・・・まぁまぁ変質者だな。

こどもの頃はよく蝉取りをしに公園へ行っていたけど、今虫取りしてる子って中々みませんね。

まぁこんな猛暑だとこども一人遊ばせておくのも危険すぎるし、

さらに危ない大人がいる可能性もぬぐえない世の中になったからね・・・。

安全に遊べなくなってしまうのか。なんか、嫌な世の中になったものだ。

アルヴァンは木の板にロープをかけてそのまま砂の上を滑っていく。実際にはこの木の板の下にグラインダーという砂エビがいて、その原動力で砂の上も楽ちんに進んでいける。


「これはまた、面白い乗り物ですね。」


「グラインダーを昔飼育して砂に返したからなぁ。俺のことを親と思っているエビが近くにいて助かった。」


「飼育していた・・・。養殖の間違いなのでは?」


「間違いではないんだが、このエビはおいしくない。このエビを囮にしてサンドフィッシュをおびき寄せるんだ。」


「あぁ、そっち系なんですね。」


「今日は別件でここに来た。あの幻想で映し出されていた神殿だが、このパタリオスの砂漠を越えた岩山で見たことがある。」


「さすがアルヴァン様。無駄に各地を転々と歩いているわけではないんですね。」


「うるせぇ。大きなお世話だ。ただ、腹減ったからここで何か食べたいんだが・・・。」


しばらく進んでいるとオアシスが見えてきた。


「あそこに何かあるかな。」


「全く・・・相変わらずですね。」




オアシスに到着すると簡易的なテントが池の近くに広げられて人々が異国の服を纏い談笑したり、木陰で休んだりしていた。アルヴァンは何か食べ物がないか歩いていると背の高い白装束の男がアルヴァンの前に立ちはだかった


「おい、そこの小さいの一体何しに来た。」


『なんだ、このデカ物。偉そうに。名前くらい名乗りやがれ。』

アルヴァンは不機嫌になり仁王立ちした。


「貴様何を偉そうにしている。我パタリオスの王家、ジェルマだぞ。図が高い。」


『王家?こんな世俗にまみれているような王族聞いたことないぞ。はったり咬ますのもいい加減にしろ。』

アルヴァンは中指を立てた。


その行動に激高したジェルマは大声で言った。

「おい、我を侮辱した者を捕らえろ!!」


『ほう、一人じゃ何もできないおぼっこい奴か。』

アルヴァンは両手を前に構えて戦闘態勢に入った。


「お待ちなさい。ジェルマよ。」


『あれ?聞き覚えのある声がする。』


その声の主が近づいてくる。赤いヒシャブをきて付き人が大きな傘をさしながらこちらに歩いてきた。顔を隠しているのでよく分からないがアルヴァンは恐る恐る聞いた。


『おまえ・・・ユリスか?』


「アルヴァンちゃん!!心配してたのよぉおお!げんきぃ?わたしぃは・・・ぜっこぉーちょーおおおぉおおお!!」


あまりの凶変ぶりに周りは一瞬で固まった。


『おぉ・・俺も心配していたんだ。エネヴァーにぶっ飛ばされたと聞いていたから。』


「そうなのよ。あのクズ野郎、手を組まないかって誘ってきて振ってやったらぶっ飛ばしやがって・・・ぜっ・・てぇ・・殺す!」


『そうだな。それは同意だ。』


「それで、ここに何しに来たの?」


『それはこっちのセリフだ。』


アルヴァンとユリスのやり取りを見かねてジェルマが割って話した。

「ユリス様。この者は王家である私を侮辱したのですよ。処罰を・・。」


「お黙りなさい。あなたは斯様な小さきものを威圧して恥ずかしくないのですか。王の血族である者は、一人一人の民に寄り添いながら、寛大な心を持たねばなりません。あなたはまだ王家の中でも下っ端です。ただでさえ、自身の権力が未熟ゆえに使える権力を誇示するなどなりません。いいですね。」


ジェルマは黙ってしまった。


『あの・・一体どういう関係で。』


「ジェルマの家庭教師をしているのよ。」


『家庭教師?』




ユリスはパタリオスの砂漠まで飛ばされてしまった。さすがにエネヴァーの攻撃を受けたこともあり身動きが取れずにいた。その時に偶然立派な大きなそりがユリスの近くで止まった。二人の家来が様子を見て主に報告した後、ユリスをそりに乗せて宮殿へ連れていってくれた。その助けた人物こそ、パタリオスの王クゥトゥルフだった。


助けたのは良いものの明らかに人間ではないと気づき、はじめは処分しようかと悩んでいたそうだが少し意識を取り戻したユリスはそこにいた王と家来に言った。

「私はこの砂と共に枯れ逝く花だった。けれども、あなたたちはその花を紡ぎ再び咲かせてくれたのですね。その純真さは空のごとく広大で、その慈しみは雨のごとく優しく降り注ぐであろう。」


その言葉を聞いて皆騒いだ。

「これは神の啓示だ!!」

そこに居た全ての者は頭を深く下げて祈った。


それから、ユリスは手厚い看病を受けて元気になった。ただ、王はユリスが神の申し子だと勘違いしていたので、とりあえず神の言葉が私の頭の中で浮かんだのでそれを申しただけと気の利いた嘘を伝えといた。少し残念そうな王の姿を見て、ユリスは助けられた恩を返したいと王に申した。


すると、王は一つ悩み草をユリスに伝えた。それは息子のジェルマのことだった。簡単に言えば、不良息子を更生させてくれというお願いだった。ユリスは一つ返事でそれを引き受けることになった。


はじめてジェルマとあった時ジェルマはこう言った。

「なんだ、この化け物。親父も焼きが回ったのか?」


ユリスは思いっきりジェルマをぶん殴った。そして、ジェルマに言った。

「いいか、クソガキ!!あんたのお父様どれだけおまえのことを考えているのか分からないだろう。だから、今日から私が教えて・・あ・・げ・・る。覚悟しとけ。」


そんなユリスの姿を見てジェルマは失禁した。



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