歴史は繰り返されていく
美容院に行ったら結構待たされたんですけど
週刊誌を読みふけれるいい機会だったのでちょうどいい時間だった。
出版社によっては言い方が強かったり、挑戦的な言い回しがあるものもあるから好みが出るね。
トップ記事は各出版社大方、皇族関連記事が前に来る。
あれ結構面白いんだよね。愛子様記事の安定感と悠仁様の大学生活物語。
特に、皇族を支える関係者の特集記事はハッとさせられる。
結局、週刊誌2冊半読了してしまった。ただ、毎回気になるのがあの連載されている漫画の必要性。
あれ、毎週見ている人いるのかすごく気になる。
アルヴァンは詰んでしまった。少しがっかりしていると研究員が気を利かせて言った。
「安心してくれ。日食は別にここだけしか見られる現象ではないんだ。星が自転しているから太陽と月が重なる地点に行けば見られるよ。」
『それはいつでどこなんだ?』
アルヴァンは研究員に近づき服の裾を引っ張った。研究員もアルヴァンがそれを知りたいと思い奥から資料と暦を持ってきて調べ始めた。
しばらくして研究員はアルヴァンに言った。
「おまたせ。おそらく、一番早い所で・・・アムパルト公国で発生して7年後だと思う。」
『7年後か。一番現実的な気もするけどなんか違う気がする。』
アルヴァンは研究員に頭を下げて部屋から出て行った。廊下を歩きながら悩んでいるとシドが影からアルヴァンに言った。
「アルヴァン様。思ったのですが別に昼間なのに夜になる現象は日食に限ったことではないと思うのですが。」
「それはなんだ?」
「黒い霧がその周囲を覆って光を遮る暗霧、空が厚い雲に覆われてその覆われている中心が暗くなる黒帽子、魔法の中にも黒壁というボックス上の結界を張るものがあります。」
「まぁ言われてみればそうなんだが。テスカトリポカのことだからその日に起こることが決まっていることだと思うんだが。だから約束の日を待ち続けていたってことだし。」
「そうですね。だとしたら、日食はそのニュアンスに合いますね。」
「他に何か決まった日に起きることってないのか?」
「何か史実とかが残っていればいいのですが、おそらく大昔のことですしね。」
アルヴァンが悩んでいると大きな声で呼ばれた。
「ちょっと!テトさん!探しましたよ!」
正面から案内していた魔導士が走ってやって来た。
『うわぁ、めんどくせぇ奴来た。』
「勝手にいなくならないでくださいよ。」
『お前の話はつまらん。』
「是非お見せしたいところがあるので付いて来てくれませんか?」
逃げても良かったのだがこの後色々言われそうなので渋々魔導士について行くことにした。案内されたのは古代魔法研究室だった。古文書や魔具などの出土品が棚や机の上にたくさん並べられ、修復や解読をしている研究者が黙々と作業していた。
「こちらは国内において出土した古の魔具や古文書を研究する部屋になっております。今回、テトさんを招いたのはおそらく遥か昔から存在しているテトさんに助力をいただきたくて。」
『助力?』
「簡単なことなんですが、例えば・・・こちらの古文書ですが。こちらにはこの国が建国されるさらに400年前のことが書かれています。そこには大雨により川が氾濫し付近の村が流され多くの人が亡くなったことが書かれています。これはイレイアの西の廃村で発見されました。このような歴史が事実なのかテトさんがわかる範囲で応えていただきたいのです。」
『えぇ・・・普通にめんどくさいんだけれども。』
「それで今のお話はどうですか?」
『どうって。そんな1000年近く前のことなんて一々覚えていられるか。第一、年月を認識したのなんて人間と接触しだした時だからなぁ。』
アルヴァンは首を傾げて両掌を上にあげた。
「そうですか。さすがにそこまで古いと分かりませんよね。なら、こちらはどうですか?イレイアが建国される100年前くらいですが、とある教会から寄贈された古文書になります。そこには経典と一緒に何やら魔術式が書かれていたんです。
解読してみると、『我に光の導きが在らんことを』と。けれども、この魔術式は唱えても発動しませんでした。その経典は2体の神が争い、一端は平穏を取り戻したもののそれを気にくわなかったもう一体の神は世界を治めた神を陥れその神は追放されてしまう。追放された神は星になっていつまでも信者の安寧を願い見守っていると書かれています。そのようなお話って聞いたことありましたか。」
魔導士からその経典を見せられたアルヴァンは中身を見始めた。
『この2体の神はケツァルコアトルとテスカトリポカのことか?ならケツァルコアトルは星になっている?よく分からんなぁ・・・それに。』
アルヴァンは魔術式をじっと眺めた後、あることに気づいた。
『これは魔術式が反対に書かれているな。』
アルヴァンは机にあった神に正しい魔術式を書き始め魔導士もその様子をじっと見つめた。書き終えた後でその魔導士に渡した。
魔導士はその魔術式を見ると驚いた。
「そうか!これは反対になっていたんですね。けれど、なぜなんだ・・・。」
『そんなん、唱えて見ればわかるだろう。』
アルヴァンはその魔術式で魔法を発動した。魔導士は止める間もなく、研究室内は光に包まれた。
皆、目を開けると部屋の中はどこか違う場所にいるような感じだが研究室内で幻想が発動したみたいだった。
「テトさん!いきなり発動するなんて!なんて恐ろしいことを!」
『いやだって、気になるじゃん。』
アルヴァンは頭を掻いた。
「どうやら、幻想のようですが・・・。一体・・・。」
幻想が映し出したのはどこかの神殿で人々が竜の仮面をかぶった者に怒号を上げて責めている所だった。
『おい、あれってケツァルコアトルなのか!?』
仮面をかぶった者は人々をなだめた後で神殿を出てとある場所へ向かった。そこは海に反り立つ一枚岩だった。そこに斑模様の猫の仮面をかぶった者が水平線を眺めていた。
『あれがテスカトリポカなのか・・・。』
二人は言い合いながらも決着がつかず戦いが始まった。海が干上がるぐらいの衝撃があたりに響き渡った。そして、竜の仮面をかぶった者が敗れ、猫の仮面をかぶった者はその仮面の者に魔法をかけその者は赤く光る星となり空に飛ばされてしまった。幻想はそこで終わったが、最後に猫の仮面をかぶった者がアルヴァンの方を見て言った。
「人の過去を覗き見るのは良くない。」
仮面の下から覗く口がにやけていた。