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テト  作者: 安田丘矩
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神様の言うことなんて気まぐれにすぎない

一年ももう半年なんですね。この半年間『テト』の連載を開始しましたが

その裏で、私生活での変化があった半年でした。

まぁポジティブには進めてきたけれども、やはり不安が残ることもあります。

自分の選択が正しいのか、良かったのかとうじうじ考え、何とか嚙み砕きながら今に至ります。

人生の岐路って中々人に込みあって話すのも難しいし、逆に話すと決意が鈍ることもある。

だから、答えはシンプルに選んだはず。そう信じたい。

あとは、自分の選択が間違いじゃなかったと思える日が来るまで頑張ってみる。

それだけかな。

アルヴァンは困惑した。探していた神様が向こうからいきなり現れてくれたが正直、何を聞けばいいのか用意していなかった。

「どうしていきなり?」


「花を活けてくれたんだろ。あの花は私がテスカトリポカの企みをマーキングするために咲かせたんだ。まぁどうやら持っていかれてしまったようだが。その花を献身的に祈り続けてくれた信者に手向けてくれたのでな。」


「祈り続けてくれた信者ってミランダのことか?」


「そうだ。ずっと、自分の息子の安全とそして、君の幸福を願っていたよ。そして、叶うなら君に恩を少しでも返したいと。けど、君は薄情だね。今更、花を活けに来てもう彼女はいない。そういうことは生きているときにしないとダメだぞ。」


『なんか、ダメだしされているんだが。』


「仕方ないだろ。君が自己中なことばかりするから。」


「あれ?もしかして、心の声も聞こえてます?」


「そりゃあ神様だぞ。」

ケツァルコアトルは偉そうなポーズをした。


「それで、信者のためにわざわざ出てきてくださったと。」


「残念ながら、テスカトリポカが目を光らせているから幻想でしか対話することができない。本体はこの世界のどこかに隠れている。」


「あぁそうなんですか・・・。」


「それで、私に会いたかったんだろう。」


「会いたかったんですけど、正直何を聞けばいいのか考えていなかったから単刀直入に聞く。スターフィッシュことテスカトリポカの倒し方を教えてくれ。」


「ない。」


「ありがとうございました。」


「えっ?いいの?」


「神様が太刀打ちできないなら、もう手の施しようもないでしょう。」


「なんで諦めるんだ?戦えよ。」


「じゃあ神様も戦ってくれる?」


「えっと・・・それは・・・。」


「なら、ダメじゃないですか。」

アルヴァンは冷ややかな目でケツァルコアトルを見た。


「君、すごく冷たい。君は知らないと思うけど、テスカトリポカに陥れられてから力が戻りきっていないんだ。そりゃあ、私だってあいつをどうにかしたいよ。けど、いい策が思い浮かばない。」


『祈りを捧げてくれた信者を裏切る神って一体・・・。』


「あぁ!悪口言ってる。」


「もう、一々めんどくさいなぁ。なら、一問一答で応えてくれ。」


「時間がもうないんだけど。」


「一体何しに来たんだよ!力になってくれるんじゃないのかよ。」


「わかった。わかった。知ってる範囲で応えるから。」


「散らばった願いは神様が人間に授けた。その願いをテスカトリポカが悪用した。」


「そうだね。基本的には命が尽きるか悪用した場合その願いは空に還るけど、継受することが可能だ。テスカトリポカが空に還った願いを集めて悪用したのが今回の騒動だな。」


「その目的は。」


「君さぁ。分かってて聞いていない?」


「憶測ばかりで真実を知りたいんだよ。」


「あいつの企みは大体わかっている。もともと、私が授けた願いが原因なんだけど。遠い昔、とある人間にとある能力を授けた。その能力は『思い込み』。授けた青年は自己肯定感が低く、臆病だった。


ただ、戦争が絶えない世の中で出兵することになり自分でも戦える力が欲しいと言ってきた。もちろん、人を殺めるための能力など与えるはずもない。だから、この『思い込み』という能力を授けた。その能力があれば殺さずとも相手を無力化することができたから。」


「なんだか、フィンクスが推測してた人物とはえらく違うな。」


「ところが、テスカトリポカがその能力上書きしたんだ。そして、テスカトリポカがその青年を唆し思いこませた。死なない体、圧倒する力、畏怖の象徴。青年はすべてを手に入れた。


しかし、能力の上書きによって自我を失い、人間とは掛け離れた姿になった。全てを終えたとき人間界は混沌として人々はその青年の姿に恐怖を抱いた。自我を取り戻した時、青年は元の姿に戻ることができなくなり、彼は人間でなくなったしまった。そして、彼は自ら人間界を去っていった。」


「それがディオクレイシスなのか・・・。」


「テスカトリポカの上書きした能力には代償があった。その代償は、約束の日までに依り代と鏡を用意しろとそうすれば元に戻ると。」


「鏡?」


「テスカトリポカは自分の黒光りする鏡を隠したんだ。その鏡がないと儀式をすることができないから。」


「じゃあ、依り代だけじゃなかったってことか。じゃあ、その鏡ってどこにあるんだ

?」


「残念ながら分からない。ただ、テスカトリポカは自分の大事な鏡を容易に手放したりなどしない。」


「じゃあ、その鏡はテスカトリポカが持っているって?」


「その可能性もなくはない。」


「そういえば、ゲンチアナの土の下に星形の石があったんだけど、これも依り代か?」


「それはテスカトリポカが依り代を飛ばすときに使った流れ星だ。」


「流れ星・・・何か使い道は?」


「特にない。」


「・・・。」


「けど、あいつの力が含まれているから研究材料にはなるかと。」


「あっそう。じゃあ、俺らはこれからどうすればいいんだよ。何にも対抗策がないんだが。」


「約束の日の約束を守ること。それしか方法がない。」


「依り代を用意して、鏡を手に入れる。それで、どうするんだ。」


「今回の騒動の発端となった人間であったものを元に戻すこと。そうすればすべてが終わる。」


「結局、答えはノーマルってことね。残念だけど、まず依り代は分かっている。けど、当事者の魔王の行方は掴めず。さらに鏡の探し物も追加されて、完全に詰んでいるんだが。」


「そんなことはない。だって、必ず約束の日には魔王が現れるしあとは鏡だけだ。」


「じゃあ、せめて約束の日はいつなのか教えてくれ。」


「約束の日は太陽がてっぺんに上った時に夜が・・・。」


ケツァルコアトルの幻想が消えて、そこに現れたのは黄色と黒の斑模様の入った猫の仮面をかぶり、蛇が黒い手足に巻き付いている。


「兄さんは本当に油断も隙も無いね。僕の邪魔をしないでほしいな。」


アルヴァンは後ろに下がった。


「君は・・・初めましてかな?なんか、昔に会ったことがあるような気が・・。」


「お前なんか知らねぇ。何者だ!」


「全く!無礼なちび悪魔くんだな。我が名はテスカトリポカだ。」


「そのテスカトリポカが何用だ。」


「兄さんに何を吹き込まれたのか知らないけど、君もあの魔王君の部下なんでしょ。なら、上司の命令に従っていてほしいんだけど。」


「けぇ!おまえの企みなんてお見通しだ。知ってて言いなりなんてなるかよ。」


「やれやれ、ここで始末したいんだけれども・・。あれ?やっぱり、僕の力に兄さんの力が上書きされてる。それに願いが継受されてる?!どうなってんだい君。」


「おまえこそ、何言っている.分からんわ。」


「ここからじゃ直接手を下せないな・・・。なら、約束の日に君も会いに来てよ。待ってるよ。魔王の次は君が僕の遊び相手になってくれそうだ。」


テスカトリポカは言い残し姿を消した。その瞬間周囲が再び動き出した。エスリーはアルヴァンが急に墓の前から後ろに移動していたので驚いて行った。


「あら?キッテさんいつの間に。いかがされましたか。」


エスリーの問いかけにアルヴァンは一度はエスリーの顔を見るもしばらくその場から動けなかった。


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