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テト  作者: 安田丘矩
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言葉じゃ足りないことばかり

梅雨明けが発表された地域が出てきましたね。

さすがに水不足が懸念されますが、それよりこれからが暑さの本番なんだと・・・

何十年前に比べたら本当に気温が上がったと思う。

まだ、自転車をこいで外で遊びに行っていたころが懐かしい。

今じゃ日差しの下に出れば死んでしまう。冗談じゃなく、死ぬ可能性だってあるから怖い。

けど、外に出ないといけない時は完璧に日焼け止め塗ったり、帽子とサングラスを装備

そして、日傘って重要だと思う。もう、ここまで日差しが殺しにかかってくると

空に一枚シールドが欲しいと思う。ちょっと大人でオシャレな日傘を新調しようかな。


英雄が生まれた街『オリエンティ』。イレイア国を建国した英雄カイノスが生まれ、旅立った地である。アルヴァンが過ごしたころは、内乱に巻き込まれた人々が徐々に集まり、少しづつ増えて小さな村ができた。


カイノスが旅立った時にアルヴァンもこの村から離れてしまったが、ミランダを中心として村人は互いに助け合いながら暮らし、カイノスがイレイア国を統一したときには多くの人が聖地として崇め、現在では大勢の人が暮らす街となっている。

街の中心には役所がドンと構え、広場にはカイノスの銅像が立っている。


「こんなシュっとした面構えかよ。美化されすぎだ。」


「思ったより、落ち着いた街ですね。」


「当時の村と比べたら全くの別物だ。知っている奴のいないし。さっさと教会に行くぞ。」


アルヴァンは教会へ向かった。

教会は昔の面影はなく外観も綺麗にされ人々がいつでも祈りを捧げられるように解放されていた。村人が増えるにつれて少しづつ修繕しながら憩う場所として機能していた教会も今じゃ神聖な場所になっていた。しかしながら、中央には当時のままと変わらずケツァルコアトル神の像が置かれていた。


「なんだか懐かしい気がしないな。空気感も違うな。」


「時代が変わって行けばその用途も変わっていく。けれども、元々ここは廃教会だったんですよね。だとしたら、生まれ変わったと言った方がいいのかもしれませんよ。」


シドがそういうとアルヴァンも少し納得した。アルヴァンはケツァルコアトルと像をじっと見つめた。当時は、ただそこにあるだけの存在だったのにまさか、この神様を探すことになるなんて思いもしなかった。竜を模した仮面をつけて、素顔が分からないが堂々とした佇まいをしている。


「なんか・・・どっかであった気がするんだが。」


「神にあったんですか?」


「だめだ。分からない。」


「おじいちゃん。物忘れは良くないでよ。」


シドの煽りにアルヴァンは拳を構えたその時、

「坊や、そこで何をやっているの?」


アルヴァンは振り向くとそこにはシスターが立っていた。シスターはじっとこちらを見つめて、そして何かを悟ったかのようにそそくさとアルヴァンに近づいてきた。


「あなた、キッテさんね。」


『えっ?誰だこのおばさん。それにキッテって・・・。』

アルヴァンは首を傾げた。


「そうよね。初めて会う人にいきなりそう言われても困るわよね。私はエスリーといいます。キッテさんはシージェーという女の人を憶えていますか?私のご先祖になります。」


アルヴァンは驚いた。

『そうか、その子孫だったのか。』

アルヴァンは頷いた。


その様子を見てエスリーは嬉しくて涙を浮かべた。

「私たち一族はずっとこの教会を守ってきました。カイノス様の母君、ミランダ様と一緒に暮らし家族のような絆で結ばれ共に生きてこられました。そして、キッテさん。あなたをずっと待っていました。」


『俺を待っていた?』


アルヴァンはエスリーの家に案内されそこで話を聞くことになった。エスリーはまず一通の手紙を渡した。だいぶ黄ばんできているがその手紙はカイノスがアルヴァンに宛てた手紙だった。

どうやら、カイノスが旅立つ日の前日に書いたようで、アルヴァンはカイノスが旅立つことに反対していて旅立つ日まで話す事はなかった。




キッテへ


ちゃんと別れを告げられずごめんなさい。せめて手紙にして君に伝えたいと思う。君はたくさんのものをくれた。この村もそう、安心して暮らせる環境やそして、僕に魔法を教えてくれた。母さんが何度も読み聞かせてくれた本の英雄に憧れ、その名前を引き継ぎ生きていくのもカッコいいと思った。


ただの憧れでもないんだ。村のみんながここに来るまで大切な人や場所や物を失っても、明日を生きて行こうと望んでいる。悲しみは消えないかもしれないけど、前を歩いていけるのは君のおかげなんだ。


だから、僕もみんなが願う平和を手に入れたいんだ。君から見たら僕の魔法なんてちっぽけなものかもしれないけど、誰かがそのために踏み出さないといけない。それは、ずっと君のそばにいた僕の役目なんだと思うから。


君はきっと怒るだろう。せっかく助けてやった命を無駄遣いするんじゃないと。それでも、僕はこれから先の未来に人々が豊かに暮らして恐怖を抱かず安心して暮らせる国を作りたいんだ。君が守ってくれたこの村のように僕は自分もたくさんの人を守っていける人になるよ。


今まで、ありがとう。君に誇れるような人間になって帰ってくるよ。それまで母さんを頼みます。


カイノスより




『旅の始まりの手紙と最期の自書伝での温度差がこんなにもあるとなぁ・・・。まぁ理想とかけ離れるのは仕方ないけど、結局欲に駆られていただけだったってことか。』

アルヴァンは手紙を読み終えて畳んだ。


「この手紙はずっとミランダ様が持っておりました。旅立った翌日にはキッテさんが旅立ってしまい渡し損ねてしまい後悔していたそうです。」


『そうか・・・最後にちゃんと別れを言っていればよかったな。』


アルヴァンはエスリーの家から出て教会に隣接する墓地へ歩き出した。エスリーはアルヴァンの行動を察したのか一緒に横を歩いた。そして、エスリーは指差しミランダとカイノスの墓を教えてくれた。アルヴァンは二人の墓を目の前にしていった。


『ほんと、面影も何もないんだな。まぁ生きている者のために存在しているようなものか。』


アルヴァンはカエルからゲンチアナの花を取り出して二人の間に植えた。エスリーはどこから花を出したのか不思議に思ったがアルヴァンが花を植えている姿に少し笑みを浮かべた。


『この花スゲェんだぞ。季節関係なく咲き続けているんだ。こんなところじゃ殺風景だろ、せめて花ぐらいあった方が居心地がよくなるな。』


「キッテさん!ご飯できたわよ。」

後ろから声がしてアルヴァンが振り向くと誰もいなかった。気のせいかと思ったけれども、どこか懐かしい気持ちになった。


再び墓の方を向くとゲンチアナが枯れてしまった。


『あれ、さっきまで元気に咲いていたのに。』


不思議に思いエスリーの方を向くとエスリーが表情を変えず止まっている。不思議と周りを見渡すとここにあるすべてが止まっている。


『一体何が起きたんだ?おい、シド!』


シドは何も返事しない。アルヴァンは明らかに様子がおかしいと思い臨戦態勢に入った。


するといきなり肩を抱かれた。アルヴァンはゾッとした。全く気配がなく読み取れなかった。すぐに距離を取って肩を抱いた何者かを見た。

そいつは竜のような仮面をかぶり羽毛で覆われたマントを纏った明らかにやばそうな奴だった。


「おい、貴様。何者だ!」


「何言っているんだ。君が僕を探しているんじゃないのかい?」


「えっ?」


「えっ?」


アルヴァンはおそるおそるそいつに聞いてみた。

「もしかして・・ケツァルコアトル?」


「いかにも神様です!」



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