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テト  作者: 安田丘矩
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旅は道連れ、世は世知辛い

〇ターバックスで久々にフラペチーノを注文したら、初めて噛まずに流ちょうに注文できた。

年に数回しか行かないし、今まで注文しても嚙まずにゆっくりと、

ちょっと恥ずかしながら一瞬間をおいて注文していたからなんだろう・・・この達成感は。

自分の中では、ス〇ーバックス=フラペチーノ屋さんとしか思っておらず

おこちゃまなのであの独特の苦いコーヒーが苦手。

あの苦さは「ほれほれ、さぁこの苦さとキレをとことん味わうがいい。」と言っている感じがして

すごくせかされている気がしてならない(個人の主観的な味覚)。

なので、フラペチーノしか頼みません。OK!



リンドンでは事後処理が行われ、そして、今回の魔物の襲撃で品格者2名が亡くなり、1名が行方不明という悲惨なことになり街は悲劇に包まれていた。駐在所では2名の葬儀が行われた同時に目撃証言と聞き込みにより、あるもの街の壁や掲示板に張り出されていた。ローブを纏った小さい魔物が指名手配されていたのだった。


「アルヴァン様。有名人ですね。」


手配書をウキウキで見ているシドを横にアルヴァンは落ち込んでいた。


「クロワッサン食べに行きたい・・・。」


「ただ、あんまりこの手配書の絵似てませんね。もっと凛々しく。勇ましく。」


アルヴァンはため息を吐いて、リンドンの西門から出て行った。さすがに関所までの馬車に乗せてもらうには大事になりすぎるため歩いて関所まで向かうことにした。関所があるオリヴィアまでは歩いても一ヶ月はかかるため長い旅路になりそうだ。


「アルヴァン様。こんな暢気に歩いて大丈夫なんですか?エネヴァーが勘づいている今、先越されてしまいませんか。」


「それはわかっている。けど、手段がない。」


移動魔法は行ったことのある場所でないと使えないし、行先不明で唱えるとランダムに行ったことない場所へ飛ばされる。南国に飛ばされたのはラッキーだったと常に思う。そもそも、人間の生存区域なんて知らない。世界の歩き方を教えてもらいたいものだ。


「遠いですね。せめて、脚があればいいのですが。」


「お腹空いたな…。」


「さっき、ハムサンド食べたでしょ!」


クロワッサンを食べ損ねたアルヴァンは、のみ市に出ていたハムサンドを5つ買ってさっきまで食べ歩いていた。


「あれじゃ足りない。」


「はー呆れた。このままじゃ埒があかないので、せめて脚になりそうなものを探して参ります。」


シドはあたりを見渡した後に近くにある森の中へ入っていった。唐突に行ってしまったのでアルヴァンは一先ずシドを待つがてら、圧縮の能力を使ってみることにした。近くにあった花や石など圧縮して球体になったものを手のひらの上で転がして暇をつぶした。いろいろ試してみて分かったことがあった。それは水は圧縮できない。小川で試したところ球体を擦り抜けてしまい、花などの植物も体内の水分が落ちていった。この圧縮の能力の使い方はもっと別にあるのではっとアルヴァンは考えたが結局よくわからなかった。


アルヴァンが暇つぶししているとシドが戻ってきた。


「アルヴァン様。オオタンポポが自生していましたよ。」


「オオタンポポ?それをどうやって移動に使うの?」


「綿毛に掴まって飛べばいいのです。」


オオタンポポの綿毛は高さ2メートル、綿毛の大きさは1メートル幅もある。風が吹けば


確かに飛ぶことはできるが、


「風向きは逆だよ。」


「そうですか。アルヴァン様ならきっとお似合いだと・・・。」


《こいつ遊んでいやがるな。》


「ご安心ください。ちゃんとよい脚を見つけてきました。もうすぐ・・・来ました。」


シドは空を見上げ布で指し示した。空から何かやってきていた。それは2メートルはあるオオワシの魔物だった。


「オーケンだったけ。」


「そうです。世界中を飛び回るオーケンなら大丈夫かと。」


確かにこれなら1ヶ月もかからず関所、いや飛び越えて王都まで行ける。


「たまにはやるじゃん。」


「いつもです。」


「こんな大きい怪鳥なら背中に乗せてもらえば。」


「潔癖症みたいです。」


潔癖症…。確かに白い羽毛に黒と茶のグラデーションが入った胴体だが、獣臭いしお世辞でもしっかり毛づくろわれているとは思えない。そんな鳥いるんだと変に納得しアルヴァンはハーネスを取り出し、オーケンに着けようとした。


「おいおい、そんなもの僕に着けないでくれ。羽毛がいたむ。」


アルヴァンはシドを見た。


「さっき交渉した時には問題ないと。」


「僕はデリケートなんだ。せめてロープを持って引っ張っていく。」


「ロープ?」


アルヴァンはハーネスをしまいロープを渡した。


「そうそう、君たちならこれで十分だろ。」


ロープでも問題ないが気分しだいで離されてしまう恐れがある。ましてや高速で飛んで綿毛が折れてしまうことも考えられる。アルヴァンはシドと二人で話し始めた。


「あいつ大丈夫なの?」


「大舟に乗ったつもりでとは言ってましたが。」


「ちなみに代価は払ったの?」


「まさか、魔物ごときに。」


アルヴァンはシドがこのオーケンとどんなやり取りをしたのか容易に想像できた。誇り高きオーケンにタダで飛んでくれなんて普通ありえない。たぶん、このオーケン落とすつもりだと察した。


「シドって、単細胞すぎない。」


「誰が単細胞ですか!常にアルヴァン様のことを思い日夜努力を・・・。」


話が長くなりそうなのでシドを無視してアルヴァンはオーケンに話しかけた。


「すまない。王都まで引っ張って行ってくれたらこの空色のアンクレットを上げるよ。」


アルヴァンはアンクレットを取り出しオーケンに見せた。このアンクレットに魔力を込めると周囲の景色と同化することができる優れものだった。


「ほう、なかなかいいものを持っているね。気に入った。」


「けど、もしも・・・もしも、変なことしたら。」


アルヴァンはオーケンに向かって圧縮の能力を発動した。球体の中に閉じ込められたオーケンは、


「おい!いったい何をする!」


「この球体はどんどん小さくなって君、つぶれちゃうよ。どうする、ちゃんと運んでくれるよね。」


そのアルヴァンの姿を見たオーケンはゾッとした。


「そういえばお腹空いたなぁ。ちょうどいい鳥肉があるけど食べれるのかな?」


アルヴァンはシドに目を合わせた。


「どうでしょうね。身が固そうですが、ももは脂がのって美味しいかと。」


だんだん小さくなっていく球体にオーケンは咄嗟に


「わかった。ちゃんと運んでくれるから許してくれ!」


アルヴァンは能力を解除した。


「手荒な真似はしたくなかったけど、これで君を信用できるよ。」


オーケンはとんでもない奴と取引してしまったと後悔した。オーケンはおとなしくハーネスをつけ、アルヴァンはオーケンの背に乗った。両翼を広げ飛び出した。緩やかな向かい風の中を突き進んでいく。小さな農村や獣の魔物の群れを上から見下ろしながら優雅に空中散歩を楽しんでいたが、出発して4日目の夕暮れ時どこかに下りて野営を張ろうとしていた矢先だった。


 ここら10キロの北東の方角が明るく空に煙が上がっていたが、アルヴァンたちは特に見に行く必要がなかったのでそのまま通過しようとした。それは一瞬だった。アルヴァンが気づいた時にはもう遅く、オーケンに光の矢が刺さった。右から胴を貫かれ悲鳴をあげ落ちていく。地面まで50メートルのところでアルヴァンは圧縮の能力を使い事なきを得た。ゆっくり球体を膨張させ地面に降りた際にオーケンの具合を見た。傷口はかなりひどい状況でこのままだと死んでしまう。オーケンは瀕死の状態でうめき声をあげることしかできなかった。


「・・・唐揚げにする?ローストする?」


「アルヴァン様、それ笑えないやつです。」

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