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テト  作者: 安田丘矩
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いくつになっても変わらないものがあると嬉しい

高齢化社会でジジババが増えている現状で労働者も高齢化しています。

そもそも、皆さんは何歳まで働きたいですか?

富があるならいつでもリタイアしたいと考えることもありますが、

現実的に定年まで働くのが普通と思うことも。

けど、今じゃ将来的に不安を感じることもあり延長で働いたり、

バイトする老人の方もいらっしゃいます。

生涯現役って掲げればカッコいいけど、働き続けないといけないのは嫌だな。

健康でい続けられる保証もない分、いつまでも働けるとは考えたくないし、

慎ましく余生を送りたいと思うかな。

アルヴァンは山のごつごつした斜面を登り住処らしいところがないか探した。


「アルヴァン様。ドラゴンってどれくらい生きるんですか?私の認識だと長くて500年くらいかと思うんですが・・・。同時のドラゴンがどう考えても生きていると思えないのですが。」


「あのガキが俺に挑みに行くって言ってたんだから約束は守ってくれないと。」


「あぁ、息子の方なんですね。なら、上空に閃光を放てばいいのでは。他のドラゴンも呼ぶことになりますがその方が手っ取り早いと。」


「うーん。やむを得ないか。話が通じない血の気の多い奴だからやりたくないんだよね。」


「唯我独尊のアルヴァン様も似たような者でしょ。」


「うるせぇ。」


地平線の向こうは少し明るくなって陽が間もなく出そうとしている。アルヴァンは手を上空に向けて、閃光魔法を上空に放った。光の玉が勢いよく上空へ飛び立ち、そして光が当たり一面に広がり包みこんだ。


山の静けさと寒さが残る空気が揺れる。そして、遠くから鈍く空気が唸る音。十何頭のドラゴンの群れがアルヴァンの上空へ集まってきた。


「来ましたね。あとは頑張ってください、アルヴァン様。」


「こういう時に、『アルヴァン様、ここはお任せください!』とか言えないのかよ。」


すると、一頭のドラゴンが降りてきた。アルヴァンの前に近づきじっと見つめた。

「おまえ、もしかして・・・えっと、何て名前だったけ?ふぃ・・フィンクスか?」


ドラゴンはしばらく間を置いた後に応えた。

「いや、違う。」


「かっこ悪いですよ、アルヴァン様。」


「あれから何百年も経っているんだぞ。ガキの頃なんて覚えてられるか!」


ドラゴンはふと思い出したかのようにアルヴァンに言った。

「おまえ、じいちゃんをいじめた小さい悪魔か?」


「はぁ!いじめてなんかいない!じいちゃん?お前はそのじいちゃんの孫なのか?」


「そうだ。お前をいつかボコボコにしたいっていつも言ってた。」


「何がボコボコだ!あいつの父ちゃんが殺そうとしてきて返り討ちしただけだ。そしたら、あのガキがとっとぉー死んじゃうって喚くから仕方なくとっとぉーを助けたんだぞ。普通、こどもがやられている所に飛び出して来たら殺されるぞ。」


「なんか話が違う。まぁいい、じいちゃんのところへ来い。」


「そうか、あいつももうじじいなのか。」


「それにしても、おまえまだ生きているんだな。」


「人を年寄り扱いする気か。」


「いや、普通の悪魔なら死んでいるのに生きているのが不思議。」


アルヴァンはそう言われると自分がなぜこんなに長命でいられる理由が分からなかった。おそらく、自我が芽生え記憶がはっきりしている以前に何かあったのだと思っていたが全く思い出せない。


「俺のことはいい。お前のじいちゃんに会わせてくれ。」


ドラゴンはアルヴァンを背中に乗せて住処へ案内してくれた。




そこは鍾乳洞で天井に穴が開いていて日差しが入ってくる。岩肌に光沢を纏って、色白く光を放つ。少し奥の洞に一頭のドラゴンがうずくまっていた。


「こいつか?」


アルヴァンは連れて来てくれたドラゴンに問いかけた。

「じいちゃん、お客さんだぞ。」


その声にドラゴンは顔を上げた。その顔は古い痣や傷があり、歳のせいだろうか少しくすんでいた。フィンクスはアルヴァンの顔をじっと見つめそして、急に涙が溢れだした。その様子に仲間のドラゴンたちも動揺した。


「なんだよ、泣き出して。また俺を悪者にしたいのか?勘弁してくれ。」


フィンクスはアルヴァンに話しかけた。

「まさか、また逢えるとは思いもしなかった。もう死んでいるかと。」


「勝手に殺すな。俺はお前と違って命を大事にしているからな。」


シドが横から言った。

「ただ、食べているだけでしょ。」


アルヴァンはシドを睨んだ。


「そうかもな。それにしても、姿も変わっていないとは驚いた。あの時からずっとこのままなんだな。」


「お前もあんなガキがよれよれじじいになっているとは驚いたよ。」


フィンクスは笑った。

「まさか、勝負しに来てくれたのか?」


「馬鹿言え。こんなボロボロのじじいと戦えるかよ。それにここにいる仲間のドラゴンもお前を労わっているだろが。」


「そうだな。お前が父様を助けてくれて、あれ以来命を大切にしろってずっと言われてきたけど、絶対お前に挑むと決めてから戦い続けた。本当はその姿を父様に見せたかったけど、父様は一人の人間との戦いに敗れて死んでしまった。」


「えっ?それって・・・カイノスか?」


「あぁそうだ。まさか、今まで弱者と思っていた人間がドラゴンを殺めることができるなんて。我々は驕っていたのだろう。」


『そのカイノスに魔法を教えたのは俺なんだけれど・・・黙っておいた方がいいな。』


「気づけばかなりの月日が流れ老いてしまった。もう、若い頃のようには動けない。お前もこんな姿見て哀れだろう。」


「馬鹿だな。お前はちゃんと周りを見てから、そして確認してからものを言え。だから、変に誤解を生むんだぞ。」


「年寄りに説教か?」


「自分を卑下するな。確かに月日が流れて変わってしまったかもしれないが、ちゃんと建設的に群れを引っ張りながら生きてこれたんだろ。お前はちゃんと未来を繋いで来れた。それで十分だろう。それに俺に挑もうなんて生まれ変わっても成しえないぞ。」


「お前こそ慢心だろ。」


「それは強者の強みってことだ。」


フィンクスは目を閉じて少し考えた後で再び目を開けて話し始めた。

「ありがとう。」


「なんだ?死ぬのか?もう少し生きてやれ。」


「一々うるさい奴だな。」


アルヴァンはフィンクスに近づき頭を撫でた。フィンクスは亡くなった父親のことを思い出していた。あの時アルヴァンに助けられなかったら幼い状態で死別していた。それから100年後に父親はカイノスによって亡くなってしまうが、その時間がとても貴重で一緒にいられたことが嬉しかった。再びフィンクスは涙を流した。



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