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テト  作者: 安田丘矩
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助け合いを掲げる奴ほど損得勘定で動く

ここ数年でお肉が食べられなくなったと実感した。

正確に言うと焼肉へ行っても食べ放題はかなりきついし、

単品で頼むお店でも、脂がくどい所は避けてハラミや赤身を頼む。

体質の変化なのか、歳せいなのか。

もう、食べすぎると吐きそうになるからね。

おいしい食事=味わって食べたいにシフトしたってことかな。

高級牛のお肉でも食べてみると脂が重かったり口に合わないことがあるから、

自分にあった食スタイルを大切にしていこうと思う。

エンボス山の夜はかなり冷える。こんなところに置き去りにされたら普通は気づくはずなのにレオはよく眠っている。そして、一時間くらいで夜が明ける。


「アルヴァン様。連れてきたのはいいのですが、肝心のドラゴンがいませんね。」


「そうだな。まだ、眠っているかもしれないな。ちょっと会いに行ってくるか?」


「・・・会いに行くって?ドラゴンにですか?」


「そうだ。まだ生きていればいいのだが。」


「ここに来たことがあるんですか?」


「まぁイレイアを旅していたのは大昔だけどな。その時にドラゴンにあった・・・。」



アルヴァンがイレイアを旅しているとき、エンボス山を散策していた。今でこそ鉱山の採掘場があるものの、当時は人が立ち入れないほど木が生い茂り、おまけにドラゴンの縄張りである。


その中でアルヴァンがエンボス山に訪れたのは怪鳥『グルーシア』の卵を手に入れるためだった。

怪鳥『グルーシア』は2メートルくらいの巨体であるが飛べない。足が短く無駄にでかい鳥。


グルーシアがなぜドラゴンが住むこの山で生きていけるのかは、幻惑をかけているからだ。グルーシアの鳴き声は幻惑を起こさせるため、それを聞いたドラゴンはグルーシアをいないものとして認識する。それは他の動物も同じで、ある意味最強の鳥なのだ。


そんな鳥がなぜ知られるようになったというと火山活動による天変地異によりパニックになった鳥たちが幻惑を解いて騒ぎ出した時から認知されるようになった。戦闘力はないので簡単に捕まえられたことからかなりの数が食べられてしまい個体数は減ってしまった。


グルーシアを食べて人たちは揃って言った「このまま死んでも悔いはない」と。

特にグルーシアの卵は甘味、コク、ツヤ、味わい、全てにおいて満点の一品。この卵を是非食べたいと思いアルヴァンは当時、グルーシアを食べた人の家族や資料を持っている人から生き残った鳥たちの情報をかき集めた。そして、ついにエンボス山の峰のあたりに今も生きていると情報を得てここまでやって来たのだった。




アルヴァンは峰にたどり着くと大きな筒と導火線を用意し始めた。でっかい花火を撃ってグルーシアをパニックにしようと考えた。アルヴァンが準備していると、


「おい、ここで何している。」

空から一匹の中が念話で話しかけてきた。


「何って天気がいいから花火でも撃とうと思っただけだ。文句あるか?」


「はぁ!誰の土地だと思っているんだ。」


「誰って、所有者でもいるのか?お前が何か治めているって言うのか?」


「いちいち減らず口を。」

ドラゴンは急降下してアルヴァンに襲ってきた。


「まったく短気な野党だぜ。」


アルヴァンは突っ込んでくるドラゴンに対して手のひらを正面に出した。アルヴァンの掌から小さな火の玉をドラゴンに向けて放った。ドラゴンは怖気ずにそのまま加速した。その火の玉を途中で大きく膨らみドラゴンの顔の前で飛散した。


その一瞬、アルヴァンはドラゴンの前から姿を消しドラゴンは再び浮上して旋回し始めた。

空から探すドラゴンをよそにアルヴァンはドラゴンの背中にいた。アルヴァンは雷の呪文を唱えて発動する手前で飛び降りた。雷は見事にドラゴンに命中し感電した。


そのままドラゴンは落下し地面にたたきつけられた。アルヴァンは華麗に着地して捨て台詞を吐いた。

「ふん、口ほどにもない。」


ドラゴンは瀕死の状態だった。止めを刺そうと近寄っていくと


「とっとぉー!とっとぉー!」


どこからか声がしたので辺りを見渡すと地面をかけてくる一匹の小さいドラゴンがこっちにやってきていた。小さいドラゴンは倒れたドラゴンに寄り添い声をかけ始めた。倒れたドラゴンは何も返事をしない。


小さいドラゴンは泣きながらアルヴァンに訴えかけた。

「とっとぉーに何したの!なんでこんなひどいことするの?」


「はぁ!おいガキ、お前の父ちゃんだか知らねぇけど、俺もお前の父ちゃんに殺されそうになった。そんな奴に情けなんてしない。」


「とっとぉー死んじゃうの・・。とっとぉー・・。」


突然の子供ドラゴンの登場にアルヴァンはなぜか悪者になった。

「じゃあ俺は行くからな。あとは埋葬なり好きにしろ。」


小さいドラゴンは倒れたお父さんの横でうずくまり動かなかった。




アルヴァンは再び花火を設置してそして打ち上げた。一面に大きな音が響き渡り、しばらくすると何かの騒ぎ声が聞こえた。アルヴァンは急いで騒いでいるところへ行くとそこには数十頭のグルーシアがパニックになっていた。


そして、その近くには巣もあった。パニックになっているグルーシアをよそにそっと近づくとお目当ての卵があった。アルヴァンはニンマリとして卵を拝借した。


目的が達成され山を下りて早速食べるかと考えていたら、あのドラゴンのことが気になってしまった。再び倒れたドラゴンのところへ向かうと先ほどと変わらず小さいドラゴンが寄り添っていた。


アルヴァンはため息をついた後で倒れたドラゴンに近づき、回復魔法をかけた。その様子を小さいドラゴンはじっと見つめた。少し良くなったものの内臓まで大やけどを負っているため体力が持たないと班出したアルヴァンは先ほど取ってきた卵を思い出した。


すごく栄養価が高い代物。けど、俺も食べたい。葛藤した挙句にアルヴァンは大きい鍋を取り出しその中に卵を割って溶いた。溶き卵を倒れたドラゴンの口に流し込み、再び回復魔法かけ始めた。その時のアルヴァンの顔は無心だった。驚くことに見る見るうちに回復していくのが分かった。


「これが卵の力なのか・・・。」

アルヴァンは悔しがった。俺は何も悪くないのにと。


ようやく意識を取り戻したドラゴンは再び起き上がった。小さいドラゴンは喜びドラゴンしがみついた。

「とっとぉー!とっとぉー!」


倒れていたドラゴンは小さいドラゴンに頭をこすりつけた。その様子を無表情でアルヴァンは見ていた。アルヴァンに気づきドラゴンは言った。

「すまなかった。お前にしては助ける道理もなかったのに。」


「そうだな。いい迷惑だった。おまえのガキに感謝するんだな。」

小さいドラゴンは怒ってアルヴァンに言った。


「ガキじゃない!フィンクスだ。」


「あっそう。おれはもう行く。じゃあな。」


「待て!」

フィンクスはアルヴァンを呼び止めた。


「なんだ!俺は忙しいんだ。」


「大きくなったら、とっとぉーのリベンジをするからな。覚悟しておけよ。」


アルヴァンはため息を吐いてとっとぉーに言った。

「おい、お前のガキに命は大切にしろって教育できないのか。」


とっとぉーは言い返す言葉もでなかった。


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