人を傷つける人間は基本的に無自覚
来週から晴れの日が続いて暑いそうですね。
あれ?梅雨はどうしたんだ?終わった?中休みにしては早くないか?
先日九州では大雨で避難勧告も出されていたのに一転して猛暑
これは異常気象なのか?正常なのか?
まぁ自然の摂理なので問うこともできませんが、夏がフライングしてやってくるのは堪えるなぁ。
熱中症対策ってどんなことしてます。
暑さが籠りすぎて倒れないにしろ頭が痛くなることがあったので去年から
水にぬらすと涼しい首に巻くやつを買いました。あれ、結構よかった。
ただ、お手洗いと乾燥に時間がかかるのがネックだけど今年も使うかな。
熱中症は本当に怖い。昔家でなった時、2階から這って水をカブ飲みして
クーラーガンガン効かせたのを思い出す。世界が回っているんだよ。あれ、死ぬ奴だね。
皆さんも気をつけてくださいね。
ブランカと別れてアルヴァンは西の森に来た。しばらく彷徨っていると所々に植わっている楢の木の一本の根元にゲンチアナの花が咲いていた。
「こんな冬なのに咲いている・・・というよりここだけ雪がない?」
「明らかに不自然ですね。日記に書かれていたところはここで間違いなさそうですね。」
シドは木を一周してみた。アルヴァンは花の前に座り込みじっと見つめた。そして、ゲンチアナを掘り出してさらに掘ってみた。掘り進めると何か変わった気配が強まってきて、1メートルくらい掘ったところに星形の塊が出てきた。
「明らかに怪しいものが出てきたな。」
「なんでしょうね、その石ころ。」
「どう考えてもスターフィッシュに関係がありそうなものだ。ここにあいつが捨ててあって、この下にこれが埋まっていた。」
「だとしたら、これも王の依り代と考えた方がいいかもしれませんね。」
「うん・・・そうだな。」
アルヴァンは花を麻袋に入れて、その石と一緒に持ち帰ることにした。
「アルヴァン様。何か来ます。」
「戦いは避けたいんだが。」
アルヴァンたちの前に現れたのは、ピッチとパッチだった。ピッチとパッチは双子のガーゴイルだ。ただ、普通のガーゴイルと比べて小さくお互いに力を分け合いながら生きているため二人で一つの魔物だ。
「あっ!捕獲人物がいる。」
ピッチが言った。
「だめだよ。ちゃんとアルヴァン様って言わなくちゃ。」
パッチが言った。
「けど、生け捕りにするって通達があったじゃないか。」
ピッチが不満そうに言った。
「たとえ、エネヴァー様がそうおっしゃっていても、アルヴァン様を無下に扱うのはダメ。」
パッチはピッチをなだめた。
「そんな悠長なこと言ってられるかよ。見ろよ。ここはエネヴァー様の領地だぞ。許可なく入っている時点でアウトなんだよ。」
「だとしても、目上の方を拘束する場合はちゃんと道理を通したうえで一緒に首都まで来てもらうのが大切だよ。」
「おまえは形式にこだわり過ぎなんだよ。」
二人のやり取りを聞いてアルヴァンはシドに言った。
「このままだと後2時間くらいこのままだけどどうする?ほっておく?」
「ピッチとパッチなのが幸いでしたね。魔物自体真面目に仕事する奴なんて限られますし。」
「じゃあ、このまま逃げるか。」
アルヴァンは言い合っている隙に逃げようと忍び足で離れようとしたら何かにぶつかった。顔を上げるとそこにはベリーゴッドンがいた。
「びっくりした。お前生きてたのか。」
「それはこっちのセリフだ。お前を捕まえに来た。」
「捕まえてどうする。お前も分かっているだろう。このままだとエネヴァーが王になって用済みの奴らは奴隷か何かになるだけだぞ。」
「その時は奴から離れる。」
「お前らってそもそも仲がいいのか。」
「いや、別に。」
「ちなみに報酬とかあるのか?」
「黒曜岩石。」
「物でいいんだな。」
「俺は、元からこの余興など興味がない。」
「ならもっと良いものやるよ。」
アルヴァンはカエルから水色の透明な水晶を取り出した。
「魔水晶か。いらん。」
「この魔水晶は不純物ゼロだぞ。」
「そんなものある訳がない。」
「そうだな。普通じゃ作れない。だから、作り方を教えてあげようか。」
アルヴァンはベリーゴッドンに水晶を渡した。受け取った水晶をベリーゴッドンはじっと見つめて観察した後で体に吸収した。すると、動きが止まった。
「大丈夫ですか?高級肉を食べるとお腹を壊すあれですか?」
シドはベリーゴッドンを見上げながら言った。
「魔物にもそれありえるのか?」
アルヴァンもちょっと心配になった。ベリーゴッドンはしばらくして再び動き出してアルヴァンに言った。
「もっと食べたい。」
アルヴァンはニヤリとした。
「じゃあその代わりにエネヴァーから離れてくれ。」
「それだけか?」
「それで、どこか静かなところで隠居してくれ。」
「それグラッツも言ってた。」
「まぁあいつらしいな。」
アルヴァンはベリーゴッドンに作り方を教えるとピッチとパッチが言い争っているところへ行き思いっきり両掌を合わせて音を立てた。びっくりしたピッチとパッチは悲鳴を上げた。
ベリーゴッドンを見るなりピッチが話しかけた。
「すみませんベリーゴッドン様。悪気はないんです。方向性が定まらなくて。」
「決して、仕事を怠ってたわけじゃないんです。兄に教育的指導を。」
パッチはピッチに火に油を注いだ。
「おまえ、まだ言うか!」
ピッチは怒った。
「お前らうるさい。黙れ。」
二人はシュンとして起立した。
「今から、この国を離れてシロモンドの海へ向かう。お前らは素材の調達をする。いいか。」
「あれ?アルヴァン様はよろしいのでしょうか。」
パッチはベリーゴッドンに聞いた。
「もういい。俺は楽しく暮らす。お前らも一緒に来い。」
二人はお互いを見あいながら考えた。そして、ピッチが言った。
「けど、ベリーゴッドン様。海は苦手だったんじゃ?」
「・・・。我慢する。」
「我慢する?」
ベリーゴッドンとの別れ際にアルヴァンは『お家に帰っておいで』を渡した。
「なんだこれ?」
「これを拠点が見つかったらそれを置いてくれ。そうしたら会いに行ける。」
ベリーゴッドンは『お家帰っておいで』をじっと見つめた。パーマをかけた女性?がエプロンをしている。不思議と直立したままだった。
「センスが悪いな。」
「知ってる。」
「アルヴァン様って何をやらかしたんですか?」
パッチが唐突に聞いてきた。
「やらかしたというより喧嘩を売ったっていう方が正しいのかな。」
「やっぱアルヴァンさんは一味違うな。あのエネヴァーさんに臆しないんだから。」
ピッチがなぜかウキウキで言った。
「ほら、ちびども早く行くぞ。」
ベリーゴッドンはそそくさと先を歩きピッチとパッチは後を追って行った。途中振り返り二人仲良く手を振った。
「ほんとう、ピッチとパッチはかわいいですね。」
「あれくらい話が分かれば話が楽なんだが。」
「さて、戻りましょうか。アルヴァン様。」
こうして、レオの故郷で手掛かりを見つけたアルヴァンとシドは研究室へ戻って行った。